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第2話:傲慢

「私とパートナー契約を結ばない?」


そこに立っていたのはやや明るい茶髪でロングヘアーの女子生徒だった。

はっきりとは覚えていないが、同じクラスにいた気がする。


「パートナー契約?俺とか?」


「そうよ。」


パートナー契約。それは相棒契約、一蓮托生契約などとも呼ばれる有名な契約の一形態だ。

その内容は


”パートナー契約を結んだ二者は契約上同一人格とみなし、パートナー契約が結ばれた以後に結んだすべての契約及びその結果を共有する”


というもの。

つまり借金にしろ家の所有権にしろ、ありとあらゆる契約による結果を二人で背負うということだ。


契約学校でも一年目で習うような基礎中の基礎で、何なら契約人でない一般人にも高い認知度を誇る。

歴史的には婚姻契約よりもパートナー契約のほうが古く、パートナー契約の色恋版として婚姻契約が生まれたとも言われている。

なんにせよパートナー契約は単純ではあるものの古来より続く由緒正しき契約なのだ。


しかし、本来パートナー契約とは既に深い信頼関係がある者同士が結ぶものであって初対面で申し込むようなものではないのだ。

つまり答えは決まっている。


「無理だな」


「どうして?」


「どうして?という意味が分からない。パートナー契約がどういうものか分かっているのか?」


「もちろんよ。全ての契約を共有する契約。常識でしょう?」


そんな当たり前のことも知らないの?と言われているようで少しイラッとしたが、契約の話をしている時に感情を大きくするのは得策ではない。

ここは落ち着いてこの頭のおかしな輩を追い払おう。


「分かっているなら話が早くて助かる!俺はお前を知らない、お前は俺を知らない、だから結べない、

じゃ。」


やや芝居がかった早口で颯爽と立ち去ろうとした時、


「...傲慢ね。」


「...どういう意味だ?」


「どうもこうもないわ。仮にも大契約人を目指しているのなら契約内容を確認するぐらいしたらどう?」


一理ある。一理はある。だが必要性がないのだ。

契約とは制約であり、結べば結ぶほどがんじがらめになる。

だから必要がなければ契約など結ぶべきではない。

”大契約人の手は汚れていない”というのは「不正な契約を結んでいない」というだけでなく「不要な契約を結んでいない」という意味でもあるのだ。


...だが見るだけなら手が汚れることはない。


「...いいだろう。書面を見せてくれ」


無言で差し出された契約書を読む。



契約形態:パートナー契約

原契約者:白雪冷愛 

被契約者:

契約内容:上記二名を同一契約人格とし、当契約締結後に結ばれたすべての契約及びその結果を共有する。

契約期間:当契約の有効期間は締結日より3年とする



白雪冷愛しらゆきれいあ”そういう名だったのか。まあ名は何でもいい。

...ふむ。なるほど。契約期間が3年だから軽く申し込んできたわけか。それなら合点がいく。


「ね?だから言ったでしょう?」


「まあ確かに3年だけなら入学したての今結べば、ちょうど学校卒業時に解約されるということになる。

だが、だとしても俺に特別なメリットがない。」


「そう言うと思ってもう一枚別の契約書を用意してあるわ。」


そういって渡された2枚目の契約書に目をやる。



契約形態:通常契約

原契約者:白雪冷愛

被契約者:

契約内容:原契約者は契約を結ぶ際に被契約者の承認を得なければならない。



「なるほどな。つまりパートナー契約を結ぶ代わりにどんな契約を結ぶかは俺が決めていいということだな?」


「その通りよ。」


白雪が契約を結ぶ際には俺の承認が必要だが、俺が契約を結ぶ際には白雪の承認を得る必要はない。

相当俺に有利な条件だ。

そこまで俺にこだわる理由は分からないがはっきり言ってこの契約を結ぶデメリットが俺にはない。

パートナー契約前に結ばれた契約までは共有されないから、現在こいつが借金持ちだろうが関係ない。

3年間の契約にだけ気を付ければ問題ない。


大契約人になるにはこういった経験もあって良いだろう。


「よし。いいだろう。結ぶ契約を選ぶのは俺という条件でパートナーになろう。」


「話が早くて助かるわ!じゃあ書面にサインしてくれる?」


「ああ。」


俺は言われた通り、被契約者の欄に自分の名「倫道約約」と書いた。


「ありがとう!じゃあこれからよろしくね!奴隷くん!」


「ああ、よろしくたのm...ん?」



これが俺の悪夢の契約人生の始まりだった。



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