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ライ麦畑につかまって
「なあ、キザキ」
「なんだよ」
「最近小説読んでるんだけどさ」
「良いじゃんか」
「芸術やら音楽やら聖書やら歴史やら名著やらそういうのが大体入ってるんだよ」
「入ってる?」
「そういう裏付けされたものを必ず取り入れてるんだ」
「思い返してみると、そうだな。確かにそういうのが入ってる気がする」
「俺はそういうのが嫌いなんだな」
「なんでだよ」
「知識をひけらかしている気がしてならないんだな。こういうのを知った上で書いてますよ、調べた上で書いてますよってアピールしてるんだ。それがどうも気に食わなくてね。わかるだろ?」
「それはいいことじゃないか? むしろそういうものが入ってる方が安心して読める。自分が知らないことを知るのも、小説の醍醐味の一つだ」
「僕はインチキだと思うんだな」
「お前、もしかして、今、やってる?」
「やってないよ。本当さ、本当にやってないんだ」