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豆
「なあ、キザキ」
「なんだよ」
「コーヒー何派?」
「何派? ブラック派とかそういうことか?」
「そういうんじゃなくてさ。豆の種類だよ。豆の種類。キリマンジャロとかブルーマウンテンとかモカとかさ」
「ああ、そういうこと。気にしたことないな」
「はあ。キザキはダメだね。豆の違いも分からないなんてまだまだ子供だ」
「なんかむかつくな」
「これくらいでキレるなよ」
「キレてないっすよ」
「世界一高い豆ってなんだか知ってる?」
「無視すんなよ。虚しくなるだろ」
「猫が食った糞なんだぜ」
「まーたうんこかよ」
「食いてえな」
「豆のことだよな? 豆そのものの味を確かめたいってことだよな?」
「美味しいのかな」
「おい、答えてくれよ」
「ということで、今日は持ってきました」
「何を?」
「豆を」
「よかったよ。危うく友達やめるところだったよ」
「めちゃくちゃ高かった」
「いくら?」
「1万円くらい」
「そんな金あるならちゃんとした服買えよ」
「食べてみよう」
「なんで飲まねえんだよ」
「……美味しくないな」
「そりゃそうだろ。飲むもんなんだから」
「豆食って地固まったな」
「美味くねえよ」