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荷物持ち

「さてと、次はどうしよっか」


 型抜き屋のおじさんから文句なしの100点を言い渡された私は、しめしめと報酬を受け取り、どうするべきかと思案していた。


「てんちゃんはどうしたいの?」

「なんでもー」

「えっと。じゃあ、ご飯食べよ。結局綿あめしか食べたないよ」


 その言葉にハッとする。

 そういやまだ、会場をぐるぐるするくらいで、ほとんど何もしてないなーと。


「じゃあ、それで!」


 私は、悩むことなく頷いてみせた。



※※※※※※



「よし。沢山買ったね」


 焼きそば。たこ焼き。かき氷。

 とりあえず、それらを二人分購入して回った。

 ……回ったのだが。


「重い。……というか、すっごい持ちにくい。落としそう」


 右手に二段積みの焼きそば。

 左手に同じく二段積みのたこ焼き。

 そして、腕と脇腹の間に挟んだかき氷。


 めちゃくちゃに持ちにくい。

 よちよち歩きになってしまう。

 何も持っていないお姉ちゃんにキッと目を向ける。

 その視線に気づいたお姉ちゃんは、どこか大袈裟に手を振ってきた。


「ふれーふれー、てーんーちゃーん」


 全く心のこもっていないエールを送られる。

 お姉ちゃんも手伝えーって言いたいところだったけど、お姉ちゃんのその楽しそうな顔を見れば、そんなことを言う気力も失せてしまう。


「くっ……。と、とりあえずあそこ行こ」


 この地獄の所業に耐えかねた私は、人が沢山溜まっている場所を顎でさす。

 かなり広い距離にブルーシートが敷き詰められたその場所は、長机が何個も適当に配置されている。

 そのブルーシートの前には舞台があり、そこでなんか踊ったりしてる人たちを、みんな楽しそうに眺めていた。


 あの場所でゆっくり食事をしたい。

 し、休憩をしたい。


「あーうん。いこっか」

「よし。善は急げ! 行くぞー」


 よちよち歩きのまま、早歩きでその場に向かう。

 客観的に私のことを見たら、まず奇異の目で見られていることに間違いない。

 いやだって、浴衣の女子中学生がこんなに手荷物を持って、羽を失った鳥みたいに走っているんだよ。


 そんな恥ずかしさをおぼえつつ、ブルーシートの手前まで辿り着いた私は草履を脱ぐ。めっちゃ、テキトーに。

 人が少ない場所に向かい、「どわぁー」と今までの苦労から解放されるように、どさっと持っていたものを長机の上に置く。


 肩の重荷が外れた気分だ。

 正確には、腕とかそこらへんの重みだけど。


 振り返って、お姉ちゃんを確認する。

 私の雑に脱いだ、草履をしっかりと並べてくれているようだった。

 ……こうやって私には持たせるくせに、こういうところは優しい。

 やっぱり、こういうとこがお姉ちゃんのいいとこだよねー。

 意外にも優しい心を持ってるところ。

 さすが私の姉だ。私にとてもよく似ている。


「てんちゃん? 今日、私の顔、じろじろ見すぎじゃない?」

「い、いや! なんでも! ……と、とりあえず! ご飯食べよ!」


 ブルーシートに正座をし、割り箸を取り出す。

 お姉ちゃんも私に密着して右隣に座った。


 ちょっと恥ずかしい。

 周りに何人か座っている。

 というか、これからもっと人が増えるし。

 こんなカップルみたいなのは、周りの目を気にしてしまう。


 うーん。でも、デートだし。

 ……まぁ。いい?

 うん。まぁいっか。


「よし! 食べよう……って。かき氷溶けてきてる!」

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