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初登校

 クローゼットからやけに綺麗な制服を取り出し身にまとった私は、ほぼ使われていない学生カバンを持ち、一階へと降りた。


 家族のいる元へ顔を出すと、

 父さんはもちろん、母さんも驚いたように目を見開いていた。

 母さんの顔を見るのは二度目だけれど、やっぱりてんちゃんの母さんなんだなって思った。めっちゃ似てる。

 父さんは目をゴシゴシしては、こっちを見、そしてまた目をゴシゴシして、私の方を確認する。それを繰り替えしている。

 ……そんな意外かな。


「その。瑞樹。学校に行くのか?」


 父さんが、少し低い声でそう問うた。

 そういえば、こんな声だったっけ。


「うん」


 てんちゃん以外の人と直接話すのは久しぶりかもしれない。

 正直あまり話したくないけど。

 私は、前を見ずに俯いている。


「そうか。そうか。……良かったなぁ」


 父さんは、本当に嬉しそうな顔で笑っている。視界の端でそれが分かる。

 何が良かったのだろうか。


 最近ずっと私に構わないくせに、こんな時だけそんな顔をするなんて。

 この人は、本当に何を考えているのか分からない。


「じゃあ、瑞樹ちゃん!」


 今度は母さんが、手をぽんと叩いてそう言う。


「は、はい」

「今日は、楓と車で一緒に行きましょうか! ……かえで〜! それでいいわよね?」


 リビングで、朝ごはんをむしゃむしゃ食べているてんちゃんに呼びかける。


「はいはーい」


 てんちゃんはそんな感じで適当に返答した。



※※※※※※



 朝ごはんを食べ終え、車の中。

 学校へ向かっている道中。

 後部座席に私とてんちゃんは座っていた。

 家から学校までは、多分十分もかからない距離にあると思う。

 入学式の時がそれくらいだった。


「ねね。お姉ちゃん」


 いきなり、とんとんと、てんちゃんに肩を叩かれる。


「どしたの、てん──」


 言いかけてハッとした。

 そういえばてんちゃん、少し前に親の前でその名前で呼ばないでって言ってた気がする。


 ……なんて呼ぶべきか。

 妹ちゃん? 違うな。

 ……やっぱり、楓なのかな。


「……楓」


 なんか名前で呼ぶなんて、彼女っぽくて少し恥ずかしい。


「……ふふ。楓……ね!」


 てんちゃんは、ちょっとおかしそうに笑う。


「もう。やめて。恥ずかしいんだから」

「ごめんごめん。聞こうと思ってた事だけど……その、宿題とかってやった?」


 ちょっと心配そうに問われる。


「……そもそも貰ってないから大丈夫」


 宿題があったとしても、中一の内容すらまともにやってない私が解けるはずも無い。

 ……そう考えると、学校に行くのもやっぱり不安になってしまう。

 まぁ、勉強に関してはてんちゃんに教えてもらうことにしよう。


「な、なるほど」


 てんちゃんは気まずそうに頷く。


 その言葉に「うんうん」と言って、私はなんとなく窓の外を眺めてみる。


 制服姿の人が結構いた。

 自転車に乗っていたり歩いていたり。

 まぁ。その二種類だけだけど。


「もうそろそろ着くわよ〜」


 ぼんやりと眺めていたら、母さんが、前を向きながら言う。

 ……もう着くのか。

 まだあまり、心の準備が。


「はーい」

「それにしても、あなた達仲良いわね。……楓、瑞樹ちゃんに迷惑をかけないように!」

「うん。というか、むしろ逆と言いますか」


 てんちゃんは、小声でボソッと呟いた。

 ……聞こえてるよ。

 だけど、別に嫌じゃない。


 そうこうしている内に、気が付けば、車は校門をくぐっていた。

 保護者専用駐車場とでかでかと書かれた看板の場所へと向かって、車を停めた。


 車を降りて、てんちゃんがそわそわしている様子で話しかけてきた。


「おぉ。いよいよだね、お姉ちゃん!」

「うん。とっても緊張する」


「正直、お姉ちゃんが学校行くって言ってくれて嬉しかったよ! だっていきなり一人は心細いから」

「私も。てん──楓がいるから、学校行ってもいいって思えたんだよ」

「ほほう。嬉しいこと言ってくれるじゃないの」

「ま、まぁね」


「それでは。私は母上と職員室へ行ってきますので!」

「うん。後で会おうね」


 そうやって手を振って別れた。

 ちょっと。周り生徒の視線を浴びちゃっている。

 恥ずかしいけど、私は靴箱の方へと向かった。


 ……あれ? 靴箱?

 ちょい待って。靴箱?

 私、クラスもしらないし、そもそも2年の校舎ってどこ?



突然の隙自語ですが(全然読まなくて大丈夫です)

個人的に不安なのが、視点変更とかのやり方に読者は納得してくださっているのかっていうところ……

最初は楓視点で話が進んで、一章の最後らへんから瑞樹視点にシフトチェンジして、そして二章は最初から瑞樹視点っていう……

三人称の方が読みやすかったりしたかも……


まぁ、ダブル主人公って言うことで!!

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