表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/86

学校。行こうかな

 目を覚ます。

 伸びをして、時計を確認する。

 ……7時か。


 えっと、確か。

 昨日は、てんちゃんと一緒に寝たんだっけ。


 ……あ。そっか。

 昨日の出来事が頭の中を駆け回る。

 ……振られたのか。

 失恋した人ってこういう気持ちになるのかな。

 隣には、もう誰もいない。

 今頃、てんちゃんは学校の準備かな。


 ……今日はどうしようかな。

 昨日は、学校行こうかなって決意したけど、夜が明けたらやっぱり行くの怖い気もする。


 そういえば今までも何回かこういうのがあった。

 不登校中、明日こそはって夜は思ってるのに、朝になったら結局怖くなって行けなくなる、みたいなの。

 これが不登校あるあるであると信じたい。


 悩んだ挙句。

 結局、私は行かないことに決めた。

 いくらてんちゃんがいるとはいえ、やっぱり素直に怖い。


「よし。二度寝かな」


 そう決意して、ベッドに再び倒れる。

 その時、部屋のドアがばんっと開かれた。

 あれ。なんかデジャヴ。


「あ。起きてる。お姉ちゃん、おはよ!」

「あ、うん。おはよう」


 お姉ちゃん、か。

 昨日はみっちゃんだったのに。


「ほら! これどう!?」


 てんちゃんは、ベッドの横にやってきて、身につけた学校の制服を得意気に見せつけてくる。

 いたって普通のセーラー服だけれど、何気、てんちゃんの制服姿は初めてかもしれない。

 うん。めっちゃかわいい。

 この目にしっかり焼き付けよう。


「ちょ。お姉ちゃん。そんなまじまじ見つめてどしたの」

「とても似合ってるから」

「やったー。……と言っても、お姉ちゃんは、そう言ってくれると思ったけどね」

「うん」

「じゃあ。私、今からご飯だから。家で大人しくしてるんだぞー」

「それが姉にかける言葉ですか」


 てんちゃんは私のその言葉に笑顔で返答すると、踵を返してドアへと歩き出した。


 あぁ。

 今から、学校に行ってしまうのか。

 愛想もいいし可愛いから、すぐに友達もできるんだろうな。

 でも、その愛想の良さが裏目に出て、告白されて、付き合うみたいな展開になりかねない。

 いや、てんちゃんは私のこと好きだから、それは浮気になる。

 てんちゃんは浮気とかするタイプじゃない。

 だから大丈夫──なんだけど、でも心配。

 私は、てんちゃんに友達ができるだけでも嫉妬してしまうかもしれない。


「てんちゃん」


 部屋から出ようとするてんちゃんを考えも無しに引き止めてしまう。


「なーに?」


 てんちゃんは、スカートをヒラリと浮かして、くるりと回ってこっちを見た。

 部屋の窓から差し込んだ朝の光が、てんちゃんをちょうど照らしていた。


 その漫画の一場面のような光景は、ただひたすらに美しい。

 それと同時に、私の中の離れたくないっていう想いを増幅させた。

 その想いに後押しされるように、私は言う。


「私も。学校行こうかな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ