晩御飯……いや、夕御飯を作る
宿題が終わったのと、ほぼ同じタイミンで、お母さんからメールが届いた。
『今日は、晩御飯作って食べてね〜。材料はあるらしいから。あ、ついでに私達の分も』
『子供に頼るな』
『ほんじゃ。仕事に戻るからよろしく』
『わ。逃げたよ』
そういうやり取りがあって、私はお姉ちゃんの部屋に向かった。
※※※※※※
台所へとやってきた。
調理器具を準備しながら頭を悩ます。
……まさかハグされて、ハグしてしまうだなんて。
まぁ。普通なんだよ。ハグくらい。
……顔が熱かったのは……理由は分かるけど、考えない。
考えたら、きっと危ないから。
お姉ちゃんは、寂しかったんだろうな。
昨日に比べて、あんま関わってないし。私のこと好きらしいし。
でも、私も宿題にあんな集中してしまうなんて、優等生すぎる。
「まぁいっか」
「……? 何がいいの?」
「あ。いや、何でもない!」
おぉ。危ない。
つい、口から零していた。
横にいるお姉ちゃんが反応してしまう。
「ねね。お姉ちゃんも何か作るの? 大体のものは揃っているっぽいけど」
「私は何も作れないから、見守っとく」
「あ。おけです。……無難にカレー作ろっかな。甘口のルーもあるし」
「……甘口」
お姉ちゃんは、怪訝そうな顔で私の顔を見る。
甘口をバカにしているのか、この姉。
「なに! 甘口こそ至高でしょ!」
「甘口と中辛を混ぜたくらいが丁度いい」
「晩御飯を作る権利は私にあるので! 甘口でいきまーす」
てきとーに流す。
お姉ちゃんも、それにてきとーに答える。
「わかったわかった。……まぁ、てんちゃんが料理できるってちょっと意外」
「私は家庭的な女なので。……そういえば気になったんだけど、お姉ちゃんの御飯って今までどうだったの?」
「お父さんの作り置きかカップ麺かコンビニ弁当」
「作り置きは、いいけど、その他二つは結構体に悪そう」
「まぁ、いいじゃん」
「なるほど。では、私の手料理の味を嗜みたまえ!」
よーーし。
作るぞー。