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お姉ちゃんは私に食べさせたい

「お待たせしました〜。ペペロンチーノとミートソーススパゲティでーす。注文は以上でしょうか?」

「はい」

「それではごゆっくり〜」


 なんだかひょうきんなテンションの店員が料理を届けてきてくれた。

 いい匂い。……美味しそう。


「お姉ちゃんはどっちから食べたい?」


 お姉ちゃんの距離はさっきよりかは少し離れているけど、やはり近い。

 ちょっと食べにくそうだ。


「こっちから食べる」

「じゃあ、私はミートスパから食べようかな」

「うん。……ねぇ」

「なにー?」


 お姉ちゃんは無言で、くるくるとフォークに巻いた麺を私の目の前に差し出してくる。


「んっ。これ、あーん」

「ちょっとまてい」

「なに?」

「半分こするんだから分けて貰わなくてもいいよ。まぁけど、」


 きっと、お姉ちゃんは私にあーんしたいだけなのだろう。

 まぁだから。食べてあげてもいいかな。

 ってこれだと、どっちが姉でどっちが妹なのか分からないけど、

 私は差し出されたフォークをパクリした。

 フォークが一瞬、口の上の方に刺さる。

 チクッとして、ペペロンチーノの辛さでピリッとした。

 だけど、


「おいひい」

「そう。良かった」


 お姉ちゃんは軽く微笑む。

 良かったと言われても、美味しいはこのスパゲティなんだけどな。と無粋なツッコミはしないでおこう。

 そう思案しながら、私はミートスパをフォークに巻いた。


「ほら、お姉ちゃん。お返し」


 フォークをお姉ちゃんの前に差し出す。

 このままだと、私が一口余分に食べることになるから。だから、これはお返しだ。


「ありがと。んっ。美味しいね」

「うん。良かった。あ、お姉ちゃん、ミートソース口の周りについてる。拭き取ってあげるね」


 ナプキンを一枚、机の端のナプキンケースから取り出し、それをお姉ちゃんの口元へと運んだ。

 お姉ちゃんは目をつぶった。

 私は、一切も汚れていない彼女の口元を拭う。

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