第二章 サファイヤの取引
探偵社を辞めたオレはその後、氷のような目をした男と出会う。雑誌の取り合いになるが、仲裁者が現れ、取引をもちかけられる
オレは天井へ向かって雄おたけびを上げた。
「あんたの言うことは嘘だぁー!」
ブルジョワはびくっとして及び腰になり、
「何だ。こいつは!?」
と動揺どうようを見せ始めた。そして雑誌を持ってレジへ逃走。
ホシは奥へ逃げた――オレは後を追う。
すぐに捕らえた。そしてホシのブツをおさえる。
店内でブルジョワと雑誌「癒しのサファイヤ経済」の取り合いになる――オレとブルジョワはサファイヤを引っ張り合った。
近くで、ハットを被かぶった紳士風のじいさんが振り返って言った。
「ちょっと、ちょっと~、あんたら。もう~何やってるんだよ、あん?仲良く分ければいいじゃーん。な?」
オレは叫んだ。
「これはオレのだ!」
ブルジョワも叫ぶ。
「オレが先だろ!!」
じいさんはやれやれといった感じで「ちょっとその雑誌貸してみなよ」と言う。
オレは思わず手の力を緩ゆるめた。ブルジョワも緩める。
じいさんは雑誌を手に取り「いい考えがあるんだよ。半分こだ」と言った。
ブルジョワが言う。
「どういう意味だ」
じいさんはブルジョワの目を見て、静かに言った。
「民主的な方法でいこうよ。あんたはこの雑誌のどこが読みたいんだ?」
ブルジョワは言った。
「どこって…どこも読むよ」
じいさんは言った。
「ざっくりでいい。どこが読みたい?」
ブルジョワは少し考えた後、じいさんの目を見据えて言った。
「オレは前半のインタビュー記事が一番読みたいかな」
「じゃあ、あんたは?」
オレは少し首を傾げて言った。
「真ん中の漫画と後ろの読者コーナーかな」
じいさんはオレ達の方にウインクして言った。
「じゃあ、裂さくぞ」
店の中で雑誌の「ビリビリビリビリ」という音が鳴り響いた。どう見ても半分こではなく、四対一ぐらいになっていた。
その後、オレとブルジョワは店員に怒られて雑誌を買うことになり、金額を折半して払わせられた。オレは雑誌の厚い方を取った。
じじいは店員が駆けつけたとき、早々に姿を消していた。
店を出ながらオレはブルジョワに言った。
「お前ほんと、ふざけるなよ!」
「それはこっちのセリフだ!」
オレは駅へ行くために右の道へ、ブルジョワは左の道へ進み、そこで別れた。
オレの手には六十二ページから裂かれた雑誌が握られていた。