ファンタジーものですか? いいえSF者です。
「魔王太子ベルガン様!」
「なんのことだ!?」
ケガをした自分に駆け寄るキャサリンを無視し、吐血を飛ばして怒鳴る魔王太子ベルガン。
「順番だよ。ゲームではイベントのせいで、王太子が相手でなくとも主人公が最初に宣誓をする。しかし今日のキャサリンは2番目だ。だから、もうすでに一人ノーマルエンドが確定している。確か… "貧しくも2男1女をもうけ、幸せに暮らしました。" だったかな?つまり君らが何も手を打ってない場合、アリシア嬢は子供を3人もうけ、幸せな一生を普通におくる事に成る。仮にこの場合の女性の幸せ一生を考えれば、子供が3生まれて育つとして、最短で三つ子だとしても訳1年は必要、子供が結婚するまでさらに16年と言ったところか。まあ、孫が結婚までと言うのは少し贅沢かな?そう考えても、あと20年は平和が続かなければならない。さらに言えば、この世界の貴族女性の平均寿命は60代後半だそうだ、こちらを考慮するならあと40年以上は平和が続くことに成るかな?」
「だとしても、私は断罪され!魔人族を呼び出し!主人公を倒したわ!これで魔人族が勝この国は亡ぶはず!」
キャサリンは納得いかない様子で叫ぶ。
「ああ、だからさっき、クリスターナ王国は無くなっただろう?それにバットエンドのモノローグはこの壊れた会場と倒れた兵士たちで終わり、最後に"呼び出された魔族の力により多くの人々は殺され、ついにはクリスターナ王国1000年の長き歴史に終止符を打たれる"となる。このために、王国中の不穏分子の派閥に属する兵士たち300人近くかき集め、この会場の護衛に着かせたんだからね。100人も死ねば多くの人が死んだといえるだろう?まあ、この辺は、宰相が頑張って対応してくれたんだけど。」
魔王太子ベルガンもキャサリンも絶句する中、一人キュクレスが動き出す。闇属性の視界を奪う魔法放ちジュリアにとびかかる。
「魔王太子ベルガン様、ここはお逃げください!宝珠の力で魔界の穴の封印を解くのです。再び宝珠の力がたまるには500年はかかります。期を見て侵攻すればよいです!お急ぎを!」
その言葉に魔王太子ベルガンは素早く行動に移す、魔界の穴を開きキャサリンと共に魔界へ逃げて行ってしまう。
「ジュリア・デラックス、この魔族を取り押さえろ。」
ジュリアがそう叫ぶと、ジュリア・デラックスは取り付いて居たキュクレスを取り押さえる。
「残念だったな、宝珠の力は衰えた。再び封印をかけるには時間がかかるぞ?それとも魔界へ侵攻するか?いかにお前が強かろうと100億の魔人族をすべてを相手にできまい?私お前に勝てぬであろうが、200年もすれば貴様は寿命で死ぬ。その時が人族の最後だ。」
「ふむ、死ぬ覚悟は良いが、僕の質問に答えてくれたら、逃がすわけにはいかないが、命を助けるどころかVIP待遇に成る様手配しよう。」
「はっ!何を聞き出そうとしているか知らぬが、魔人族の不利益になる事をしゃべると思うなよ!」
「いや、別にこれは魔人族の今後には一切かかわらない事だ。なに簡単な話、最後の転生者、8人目の転生者はどこにいるか知りたいんだよ?」
キュクレス目をむいて驚く。
「なに、簡単な推測だ、1000年前突如として現れた8人、宝珠にかかわる人物としてね。転生者はその子孫の血筋のいずれかで、1000前と同様に8人いるんじゃないか?そう思っただけだよ。探したけど7人までしか見つからなかった、ちなみに僕のメイドさんも転生者でゲームのヘビーユーザーだったらしくいろいろ教えてくれたよ。僕はそのゲームやったことが無かったからだいぶ叩き込まれたよ。そんな事よりもう利用価値がないだろ?だったら話してくれてもいいんじゃないかな?」
キュクレスはしばらく俯いていたが、顔を上げてにやりと笑った。
「べスター家の別荘だ。最も、もう人間らしい感情謎の事っていないだろうがな!?それでどうする?俺を拷問にかけてみるか?」
「なんでそんな事をしなければ成らないのかな?、僕は嘘はつかない様にしている。転生者が戻ったところで君たち魔人族に不利になる事はおそらくないし、君も約束通りVIP待遇で迎えられるよ。何しろこれからは数少ない魔人族の生きた標本に成ると思うからね。陛下直ぐに動いていただけますか?」
「!?」
驚くキュクレスをよそに国王は近衛のに人に命令を下す。
「さて、彼の言う通り、魔界へ攻め込むなんて面倒なことはしたくないから、魔人族の王様へ献上品を送ってご機嫌伺い出もするかな。」
「ふんっ何を言い出すかと思わば!陛下が人族に関心なぞ寄せるものか!」
近衛に取り押さえられ、特殊な拘束具を付け終わったキュクレスが去り際に叫ぶ
「それはどうかな?前世の知識を生かし、とんでもなく貴重なものを大量にかつ迅速におくればきっと天にも昇る気持ちに成るさ。」
ジュリアは言い終わると頭部の部分だけ甲冑を開け、魔法力をためていく。やはり何かの魔法を使うようだ。しかし、先ほどのジュリアのしゃべり方は、今までにないくらい不審に満ちた雰囲気で、とても言葉そのままに受け止めることはできそうにない。
「ん?何かな?グレンダ嬢にパートナーのフェリック君だったかな?」
不審な目で捉えていたのが伝わったのか、ジュリアが水を向けてくる。
「いえ、言い方が不審な感じがしたので…」
「まあ、そうだね。そうだ、折角転生者同士なんだ、少し友好温めようじゃないか。」
「は、はあ。」
「うんうん、そうだ、僕が何どうやって送ろうとして当ててみてくれないか?。この手の話をしても、この世界の人にはピンと来ないのか全然理解してくれなくてね。」
「えっと、何か貴重なブランドの何かですか?」
「いや、さすがにそれ答えとしてどうかと思うよ。フェリック君はどう思うかな?」
「え、?自分ですか?。うーん金とかプラチナとかですか?」
「先ほどよりは悪くない、が違うね」
「じゃあレアメタル!」
私は勢いで答える。
「方向性はだんだん近くなってる。」
「まさか、プルトニウム積んだ原子核兵器をさっきのレールガンの要領で飛ばすなんて事はないですよね?」
「考えは悪くないが違うね。プルトニウムよりはるかに貴重な物だよ、最大のヒントを出すなら数ミリグラムで数兆円はするはずだ。」
「は!?」
私とフェリクスは声を合わせて驚いたが、フェリクスは何かに思い当たったようだ。
「おや?何か気が付いたようだね?本当に魔法と言うのは便利だ、生後十歳くらいまでに理論を理解し触れたものは簡単に模倣できる。それがどんなに手に入れる事が難しくても、例え1ナノグラム以下しか作れなかったものだとしても、だ。概念魔法は扱いは難しいが発動に必要なエネルギーさえあれば強大な力を引き出すことが出来る。」
「反物質…」
「反物質?なんだっけ?聞いたとこあるけど。」
聞いたことあるけど、どんな物質だったけかな?
「半分正解、ちなみに反物質は、通常の物質とこ成る性質を持った物質で、通常の物質と合わせると対消滅起こしエネルギーに変換される。その威力は1グラムで広島長崎の数倍と来るから中々だよね?」
「へ?」
「それより、どうやって送ろうとしてるかの方は?もうすぐ魔法発動するから時間無いよ?」
「どうせろくでもない方法で送るつもりだろ?瞬間移動でもするか?」
フェリクスが投げやりに答える。
「惜しいね、時間だ。答えはタキオン魔法で送る。正確にいえば大量に作った反物質と物質の一部を対消滅させ、巨大なエネルギーを取り出し、ベクトル操作魔法で亜空間フィールドと運動エネルギーへ変換して、光を凌駕するスピードで打ち出す。ついでに言えば着弾時は対消滅のエネルギをそのまま放射するのではななく、取り出したエネルギーで赤色巨星並みの亜空間フィールドを展開させて、その範囲内にあるすべての物をズタズタにする。どうだい?素晴らしい威力の魔法だろう?。」
その言葉を聞いてフェリクスは頭を抱えてた。
「何処にファンタシーな剣と魔法の世界に、星間戦争兵器を持ち出すやつがいるんだ。」
「えっと、なんかやばい魔法なの?」
「簡単にいえば太陽系を消し飛ばせる魔法を使ってると言っているんだ。」
「へ?」
間抜けな私の言葉をよそにジュリアは魔法を発動し、魔界へ続く穴へ魔法を打ち込み穴を塞いだようだった。
「ま、封印はできないけど、王様たちがどの程度強いかにもよるけど、暫くはこちらにちょっかい掛けられないだろう。」
「常識的に考えて、魔王太子があの程度の強さなのだから全滅だと思うのが妥当だろ?」
「さ~その辺はどうかな?まあ、次があった場合は、次の世代に任すさ。」
「ジュリア嬢の話は相変わらず意味が分からないな。」
それまで静観していた国王が声をかける。
「まあ、世界観が若干違うという事で、それより陛下そろそろお暇しますね。」
「やはり行くか?」
「ええ、追放に成った令嬢は国境で盗賊に襲われることに成っておりますので、彼らを待たせるのは忍びない。」
「まったく、どこの世界に、自分を襲わせるために貧民街から選りすぐりの少年少女を集め、英才教育を施し、更にその中から、高い倫理観を持つ者を恩義で縛り上げ、この国でも最高クラスの戦闘集団を作り上げる、と言うのか。」
「流石に汚いおじさんたちに襲われるのはちょっと…、彼らが他の盗賊団にやられてしまっては意味ないですし。それになかなか楽しみなんですよ。彼らは盗賊を嫌っています、何しろ彼ら自身のほとんどが盗賊に襲われた経験者で、この2年間は国境に出没る盗賊を討伐する事を命じてあります。それが一転、主人からの最後の命令として、盗賊を装い令嬢を襲えと言う命が下る。彼らは今までの恩義を感じ苦悩しながら襲ってくるでしょう、そして馬車を開けた瞬間彼らがあきれ果てる顔が見れると思うと今から楽しみです。あ、殺す護衛用の犯罪を犯した騎士たちの準備はできてますか?」
「う、む、出来ておるよ、其方と話して居ると時より頭が重たくなるな。」
理解不能な生物を見るような目でジュリアを見る国王は、何とか威厳を保つ様に声をかける。
「ともあれ此度の事、大儀であった。本来であれば行いに報いる報酬を渡すのが筋であるが事が事だけにすまぬな。」
「いえ、すでに先払いで金品など十分なもの頂いております。私はこれにてこの国を辞します。陛下、ご自愛ください。」
国王はジュリアの言葉に軽くうなずき、近衛の一人にジュリアの案内を任せる。
その後この世界は二度と魔界へとは繋がる事はなく、グレートクリスターナ王国は長く栄えました。
グレンダはフェリクスを婿に迎え、6人の子宝に恵まれ幸せに暮らしました。
ジュリアは国境で盗賊に襲われた事を最後に消息を断ち、その後その巨体を見た者はいません。
しかし、数年後、西方の王国に魔法学院が発足され、その学園は中立地帯として多くの者にその門を開きました。中立をよく思わぬ国々の中には、武力を持って支配を目論むもの居ましたが、創立者にしてハイエルフの先祖返り、月と太陽の女神と呼ばれる初代学園長が、学園に剣を向ける全ての者に等しく滅びを与えました。初代学園長が500年の長きに渡り統制した学園は、完全中立地帯として長く栄えました。
オーバーキルとはこのことか。