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……おや!?悪役令嬢のようすが……?②


会場は騒然とした雰囲気を超え、静寂に包まれつつあった。シャレーヌとルークとその仲間はすでに誰一人として動かない、会場内と会場近くに居た兵たちもその多くが死んでいる。戦いは魔王太子ベルガンが圧倒した、シャレーヌたちが使う最上位の魔法や武術をものともせず、シャレーヌの奥の手であるレーザーやレールガンも防御結界を数枚打ち破る程度しか効果は見せなかった。隙をみて加勢しようと思う気持ちはすでにない。絶望感を抱きながら、なんとかこの場に踏みとどまり防御魔法を展開している。


「さて、そろそろ終わりかな?」

魔王太子ベルガンはそうつぶやく。本来であれば悪役令嬢とキュクレスと召喚された魔人族が共闘して襲ってくる。しかし、魔王太子ベルガンは一人ですべての相手にして息一つ乱れてない。これは、終わったな。心の底でそう思ったとき一人の女性の声が会場内に響く。


「ジュリア様、頃合いで御座います。」

そう発したのはジュリアのメイドで、王のそばでジュリアの2人の従者とともに佇んでいた。この声に魔王太子ベルガンも訝しみ、会場内のジュリアを探すと、壁際にあおむけで倒れている巨体を見つけることが出来た。突然巨体の左足が空を蹴る、反動で体が若干浮き上がり、さらに右足で地面をけった後空を蹴る、巨体からは及びもつかない俊敏な動きで体を宙に浮かし着地する。その激しい動きで鬘が落ち、丸い頭のジュリアがドレスの埃を叩き落す。


「ようやく、か。」

聴きなれた低いだみ声ではなく、年ごろの女性の声がジュリアから発せられる。

「まったく、茶番に付き合わされる此方の身にもなってほしいものだね。こちらが親切で断罪をしないように警告を与えたというのにかかわらず、知性のかけらもないのかね。こいつらは!」

そうジュリアは叫ぶと近くにあった剣を次々蹴り上げ、跳ね上がった剣を次々蹴り飛ばし、飛んだ剣はシャレーヌとルークとその仲間の頭部に突き刺さった。


「おや~?なんのマネかな?ジュリア嬢だったかな?」

魔王太子ベルガンもさすがに少し困惑した様子でジュリアに問いかけた。

「ああ、僕はジュリアで間違いないよ。そして何のマネと言われれば、確実に死んでいるか確認しただけだ。気にする事でもないだろう?」

その言葉は淡々としてい、アリシアと話していた時のジュリアの話し方とまるで違う。その口調は中性的なむしろ若干男を匂わせる。


「ふーん、なるほど、君も転生者だったのか。でもなぜ死んでるか調べたんだい?」

「自分の負ける要因はつぶしておかないと、まずいだろう?」

「何を言っているんだい?もしかして君は知らないのかな?この世界は、君たちの居た世界に在ったゲームに酷似しているだよ?そしてゲーム内の出来事は、この世界での運命であり、ゲームのイベント通りに世界は動く。だから、断罪イベントを経て主人公を倒した僕達魔人族は、この国を滅ぼす事に成るんだ!これは決定事項なんだ!」


魔王太子ベルガンの言う通り、この世界はゲームの強制力とも呼べる運命の力で支配されている、私自身運命を変えようと努力した事もあったが、どれも失敗に終わった。その最大の失敗は兄を助けられなかった事であり、一度はすべてを諦める心境に陥った事もあるのだ。


「ああ、その事が、十分理解しているよ。しかし、その事実を知っていてその余裕と言うのは、やはり、予想通りあまり知恵が回らないようだね。」

ジュリアは相変わらず淡々と語る。

「なに!」

その言葉に魔王太子ベルガンは初めて声を荒げる。

「地が出ていよ?」

"ガン!"ジュリア嬢が答えると同時に大きな金属音が響き渡る。いつの間にか魔王太子ベルガンがジュリアの前に立ち、あの魔剣を振りぬき、ジュリア嬢はその腕で魔剣を受け止めている。


「へ~、大きな口を開くだけがと思ったけどそれなりに戦えるんだ?この魔剣は切れる物無し、と呼ばれていて魔力次第ではなんでも切れるはずなんだけどな~?魔力が足りなかったかな?」

魔王太子ベルガンは剣を引きその刃を確かめる様にした。

「それは事実であり、間違えでもある。その魔剣の"刃"は切れぬ物無しと呼ばれるにふさわしい切れ味だろうね。しかし、あくまで切れる"物"無しであり、それ以上でもそれ以下でもない、だから腕に剣が食い込んだ段階で、刃の部分以外に側面から圧力が加われば、その剣の動くきが止まるのは"どうり"だろう?」

魔王太子ベルガンは目を細めジュリアを睨む。


「君は本当に人間かな?」

「ああ、一応人間の部類だよ。どうやらハイエルフ因子を覚醒させた先祖返りらしいけど。」

「その姿でエルフの先祖返りとはね。オークの先祖返りの間違えじゃないのかな?」

「ああ、この姿かね?」


ジュリアはそうつぶやくと、両方の耳たぶをいじるような動作をする。そこから起こったことは劇的で、頭頂部から眉間の間を通る縦の切れ目がのどまで走り、ついて、頭頂部の方から横に次々切れ目が走り、切れ目が走った個所が左右にスライドしていく。

巨大な顔が割れて出てきた顔は耳こそ短いが、エルフと言われれ信じてしまいそうなくらい美しい少女の顔だった。髪は短く切り揃えられたプラチナブロンド、肌は淡く光っているような白い肌で、特徴的な瞳は左右で色が違う。その色もあり得ないぐらいカラフルで、右目は緑、左目は青、そして両目とも中心に向かい青の色彩が薄なって行き、瞳近く虹彩の淵はそれそれ白と金に変わっている。左右に分かれた丸顔を持ち上げ、顔から完全に引き抜くと元の形に戻し片手で持つ


「私はジュリア・デラックス3号よろしくお願いします。旦那様。」

首だけに成った丸顔のジュリア・デラックス3号はだみ声で魔王太子ベルガンに挨拶をする。流石に意表を突かれたのか数歩後ずさる魔王太子ベルガン。

「どうかね?これで少し事態を把握したのではないかな?」

今度は体の側面に切れ目が走り前後に少し割れ、そのジュリアの巨体からスレンダーな女性が飛び出した。


「なんで…?」

私はついそんな事をつぶやくとジュリアはこちらを見た。

「ん?ああ、グレンダ嬢とパートナーも転生者だったね。見ての通りさジュリアという人物は、断罪の段階までは醜く太った女である必要があるからね。断罪後の幽閉パターンではさせたシルエットが見えるだろう?つまり断罪後は太っている必要はないからね。それにさすがに実際にここまで太るのは苦痛だったから、この魔道スーツを作ったってわけさ。最初は幻術や意識投影なんかしてたんだけど、面倒くさくなって防護機能のついたスーツを開発する位に至ったんだよ。」


「えっ?でも、運命は絶対で変えることのできない現実じゃ…」

「君も頭が固いね、運命は変えることはできないっていうのはその通りさ、でもそれは現実ではなく事実さ。」

「なにをいっているの…?」


「現実っていうのは見た人の感覚が入り混じった情景さ、事実っていうのは其れそのままという事だね。君に解りやすく説明をすると、"Aと言う人物が明日死ぬ"とゲームで設定してあれば、Aと言う人物は明日死ぬことに成る。しかし、もし仮に、Aと言う人物がCと名前を変え、Bと言う人物がAと言う人物に成り代わっていたら?…答えはBがAとして死ぬってなる。まあ実際にやったのは、Aと言う人物を国王の許可のもと養子に出し、名前と身分を変える。更に、ネズミを捕まえそのネズミを養子に迎える様に正式な書類を作り、対外的には死んだように見せるため、ベットの上で病気だったAに停滞魔法をかけて死んだふりをさせ、頃合いを見て魔法を解除して病気の治療を行ったんだけどね。ね?」

ジュリアが私ではなく別の人物に同意を求める、その人物はジュリアの従者でよく見れば見覚えのある人物で、自然と涙があふれてくる。

「ローファン兄さま…?」

「私はジェークだよ、グレンダ。」

そう微笑む笑顔は、ベットの上で力なく微笑み、かつて死んだと思っていた兄のローファンで疑いようがなかった。


「そんな感じで協力者を集めて今日に挑んだわけだ。」

その言葉を合図にジェークの隣に居たもう一人の仮面をつけた従者が仮面を外した。

「前剣聖…?」

「それは正しくない、前々剣聖だよお嬢さん。」


顔に特徴的な傷のある初老の男性はにやっと笑った。現騎士団長の父親にして剣鬼とも呼ばれる世界最強の剣の使い手、ゲームの中では主人公たちが幼い事、蛮族との戦いで毒と呪いを受け死んだはずで、騎士団長の息子の回想シーンでのみ見ることが出来る。


「王国の上層部はこの事態をすでに把握しているのさ。という事で陛下さっさと宣言してほしいんだけど。」

国王はため息をつき背筋を伸ばす。

「ここに長きにわたり繁栄したクリスターナ王国を解体し、新たにグレートクリスターナ王国の建国を宣言する!各国大使館にはすでに連絡済みであり、この宣言を持って正式にグレートクリスターナ王国の始まりとする!」


「チェックメイトだね?」

"ドゴン"大きな音共に壁を突き破り黒い甲冑が入ってくる。魔王太子ベルガンとジュリアの間に割って入る様に立ち、魔王太子ベルガンに相対する。

「さてさて、どうするかね?」

ジュリアは黒い甲冑に構わず魔王太子ベルガンに向かう、そのまま歩けば甲冑とぶつかる、という事で甲冑が自動で分解し、歩いているジュリアに勝手に取りつて装備されていく。


「あっはっはっは、いい気になるなよ人間!それがご自慢の切り札か?いいだろうやってみろ!」

魔王太子ベルガンは笑い終わると魔力を解放させる。

「ああ、お言葉に甘えてさっそく。っと、せっかくだ、これを使おう。」

ジュリアがおもむろに拾い上げたのは、シャレーヌがレールガンの弾に使ってた金貨だ。投げられた金貨の周りに電撃が走る!


「あっはっはっは、大口をたたいた割に芸がないね、レールガンかい?確かにさっきの女が使っていたよりも強い魔力を感じるがそんなものが僕に効くとでも思っているのかな?」

「さて、どうだろうね!」

その言葉を合図に5枚の金貨が光の線になり魔王太子ベルガンに向う、それと同時に"ドガガ!"と言う爆音と爆風が立ち込める。煙が立ちもめているが国王を中心に結界が貼ってあるため、こちらには煙は来ない。急に煙か吹き飛ぶと魔王太子ベルガンが立っていた周辺より後ろは綺麗に吹き飛ばされていた。魔王太子ベルガンは両腕を肩の所から吹き飛ばされ、下半身はへそのあたりから無くなっていた。


「ぶっぐっ、馬鹿な!電撃の威力からして倍程度の威力のはずだ!なんでこんな!」

血を吐きながらも少しづつ回復する魔王太子ベルガンは叫ぶ。

「物事を正確にとらえないからだ、電撃については君の予想でおおむね正しい、正確には彼女の撃ったレールガンは秒速5万㎞だけど、僕の撃ったレールガンの方は秒速10万㎞と言ったところだ。これでも光の速度の半分も出ていないのだけれどね。」

「だったら、なんで僕はこんなにダメージをおっているんだ!」

「スピードは倍程度だ。ただし、追加で質量増大魔法をかけたんだよ。具体的にいえば50グラムのこの金貨を着弾時1トンに成るようにね。単純計算で質量増大で2万倍、速度を合わせれば4万倍だね。そろそろ自分の失態を認めたらどうかね?それともまだ気が付いてないのかね?お前はすでに敗北している、と言う事にね。」



おめでとう!悪役令嬢はチート魔法令嬢に しんかした!

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