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断罪と華麗な回避


改めてジュリアを見てみると、悪訳令嬢化している様子もなく、相変わらずニコニコとしている。対してアリシアの方はどこか不満げで、ジュリアを睨みつけている。

「アリシア様、どうかしまして?」

そんな様子のアリシアにジュリア嬢が気が付かないはずも無く、質問を投げかけた。

「どうかした…ですか…、ご自分の胸にお聞きに成ったら如何かしら?」

アリシアは傍らにいるヘルセスの腕にしがみ付きながらそう言い放つ。

「その様におっしゃられても、私には心当たり御座いませんわ。」

困惑した顔のジュリアは首をかしげた。


「半年前の魔法実習での事ですわ。」

「アリシアやめるんだ、あれは事故という事で話が付いたじゃないか。」

アリシアの発言をヘルセスが止める。どうやら半年前のイベントの、魔法の屋外での実習で何かあった様だ。


「解りました。ですが、今月初めに行われた、卒業パーティの予行演習でのドレスを破られた件。それに、先月の殿下主催のパーティで、使用人を使いドレスにワインをかけた件は言い逃れはできません事よ。どちらもシャイナグス家の寄子である一族の令嬢が関わっている証拠がございます!。」

「まあ!そんな事に成って居るなんて…、私存じませんでしたわ。」

「白々しい事を、殿下お願いします。」


アリシアの言葉にヘルセスがうなづく。片手で合図を送ると会場の外から兵士に伴われ、二人のドレス姿の令嬢が姿を現した。二人は憔悴している様子だが、意を決したように口を開いた。


「…申し訳ございません。ジュリア様の言いつけを破りこの様な事態を招く事に成るとは。私の一存で行った事に御座います。何卒家族に責が及ばぬように心添えを…。」

「私も使用人を使いドレスを汚した事は認めます。しかしそれは私の意思で指示したまで!、ジュリア様からは手出しは厳禁との言葉を破っただけの事。」

二人の令嬢は自分の非を認めた上で、ジュリアに非が無い事を訴える。


「その様な言い訳が通用すると思っていらっしゃるの?お二人がジュリア様に近しい関係だという事は、調べずとも周知の事実なのですよ?」

アリシアが言う通り、二人の令嬢はジュリアの取り巻きで、ジュリアに重用されているのは学園内では周知の事実であった。


「何を言われても、ジュリア様からは何の指示も受けておりません。それどころか、ジュリア様の悪評を広めようとしたり、周りに迷惑をかける貴方に対し、手出しをしない様に貴方を庇護しようとしたのですよ!」

令嬢の言葉にアリシアはニコリとした。


「ジュリア様の悪評ですか…?、私は、"王太子の婚約者たる令嬢が、食に関心があり過ぎるのはいかがなものか?"と言っただけですよ?。それに周りに迷惑と言いましたが、そう言う貴方は誰にも迷惑をかけずに生きてきたのですか?ここは学園ですよ?未熟な者が失敗を重ね、成長する場所なんですよ?ですがこれでハッキリ致しましたわね、ジュリア様の悪評を流していると勝手に勘違いして、主家のジュリア様の意向を忖度し、私に様々な嫌がらせをしたのでしょう?証拠をつかめたのはこの二件だけですが、月に4~5回は嫌がらせを受けておりましたから余罪もあるのでは?」

「ジュリア様の意向を忖度するなど恐れおおい、私達はただ義憤にかられ行動しただけの事。それにそのほかの事など私が知る由もございませんわ。大方貴方の行動に迷惑をこうむった方のささやかな復讐では?」

その後もアリシアと二人の令嬢は言い合いを続け、泥沼の様相を見せ始めた。


"パン!"


音のする方向を見ると扇子を打ち鳴らしたジュリア嬢が微笑を浮かべていた。

「陛下の御前で、それ以上の醜態は御やめに成る方がよろしゅうございますよ。とは言え、私の側近がした事は事実ですし、私の裁定を聞いたうえで、最終的な裁定は陛下に願いのが妥当かと思われますわ。」


派閥内の事は基本的に派閥内で収まるのが常識であり、シャイナグス家の寄子の令嬢が起こした事件であれば、ジュリア自身が皆が納得する裁定を出すのが当然の流れで有る。今回はアリシアがかかわっているが、最終判断は国王陛下が行うと言われれば否とは答えられない。


「よろしい様ですわね。まず事実として二人ともアリシア様のドレスを破損させていることから考え、同等以上のドレス二着分のの購入費用を補填すること、また目的がパーティの参加を不可能にすることだと思われます。二人は今回のパーティ、始まる前から拘束されていた様ですが、このままパーティ終了まで身柄を拘束します。今回の件はの二人については以上の罰とします。そして私自身ですが、派閥の者を止められなかった咎は罰せられて当然と考え、私・ジュリア・シャイナグスはシャイナグス家を出て、この国からも速やかに出国することを宣言します。」

その声を聴き、会場にどよめきが走る。


「そ、そんな…」

「お考え直しを!」

二人の令嬢は憔悴しきった様子で声を絞り出す。

「少なくとも私に関して、陛下より温情を頂いたとしても決定事項です。」

ジュリアはそう宣言し、国王に目を向ける。

「致し方あるまい、ジュリア嬢の決に異論はない。」

国王は目を閉じ静かにうなずいた後、通る声で呟くように言った。

「しかし、このパーティが終わるまではジュリア・シャイナグスのままであれ。」

「陛下の御心のままに。」

国王の命にジュリアが膝をつき答えると、誰も口を挟めない。二人の令嬢はすすり泣きながら兵士に連れられて会場を後にし、ジュリアとヘルセスとアリシアも壇上を降りた。


アリシアに不満の感情が残るのが見て取れる。

おそらくアリシアは私と同じ転生者だろう。ジュリアが悪役令嬢化しなかったのに不満を感じているに違いない。何しろジュリアが悪役令嬢化して、裏技を使い倒してしまえば、ヘルセスは王太子のままで将来は国王に成る。一方、悪役令嬢しなければ、子爵家出身のアリシアでは王太子の後ろ盾にはなれず、王太子を辞することに成り、ベイスタル家の婿養子に成ってしまう。ヘルセスがベイスタルを継ぐ際には、一代限りの侯爵になるが多少の年金がもらえるだけで領地が増えるわけでもない。エンディングの最後には"貧しくも2男1女をもうけ、幸せに暮らしました。"と言うモノローグが流れる。


おそらくそれでは物足りなくてどうにかして、ジュリアを悪役に仕立て上げたかったのだろう。しかし、残念。私も転生者でジュリア好き、そして何よりジュリアは"容姿以外は完璧な王太子の婚約者"役者が違う。実の所、警戒するようにジュリア嬢に訴えたことがあったが、すでにジュリアはアリシアの事を警戒していた。最初のうちはアリシアを不快に感じていたが、だんだん不審に思ったそうで、それはまるで"見取り図だけを見ながら部屋を歩いている様"と評していた。どうやら無理やり悪役令嬢化させる選択や発言を繰り返していたため、行動があべこべで一貫性が無い事に気が付いたようだ。最終目的が殿下であり、殿下を好いている様子に偽りはないようなので捨て置いたとの事だ。流石はジュリア様ぶれない。



ブレないのは体重のせいではありません。

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