Dying In Vain
「助けてぇ───ッ!!」
「フーッ、こ、殺して……やるぅ!!」
部屋に響く子供の声
それを聞いて、軍服の男はニヤリと笑う
一人は褐色でどこか無気力な印象を受ける少女
もう一人は顔半分が血か何かで赤く染まった少女
「……良い声だな、実に若々しい
これからこの子たちの若い汁を吸い上げるのが楽しみだよ」
「喜んでいただけて何よりです、将軍
これらは全て将軍のために揃えた特注品です」
「助かる、前に飼ってたのが死にかけてるんでね
そろそろ新品が欲しくなってきたところなんだよ
まあ、欲を言えば二人じゃなく三人は欲しかったがね……」
「……ではまた来ます」
「ああ、ボスによろしく言っておいてくれたまえ」
黒服の男を見送り、ジョンズは早速子供たちの方に向かう
「ふふふ、可愛いねぇ
今、オジサンがもっと可愛くなるように調教してあげるからねぇ」
汚い笑顔で、新しくやって来た二人の子供を見つめるジョンズ
しかし次の瞬間、発砲音と共にジョンズの体は勢いよく吹き飛んだ
「その必要はないわ、Mr.ジョンズ
今から私がお前をグロテスクな死体にしてあげるんだから」
そして子供たちは本性を露にし、ジョンズを追い詰める
ジョンズはゴロゴロ転がりながら悶え、突然の出来事に戸惑う
「うぐッァァァアア、何なんだァ!?」
「ホント、ローグは敵に回すより味方として利用した方が安心出来るわねぇ」
「じ、じゅ……銃……銃、だとォ!?
何で奴隷が銃なんて……!!」
「今のでまだ一発……つまりあと五発撃てるってこと
遺言を書くには充分な時間があるわ」
「ひィィ、助けてくれェ!」
「あー、クソみたいに 笑えるぜ
そのチャチな頭には大好きなガキの小便でも詰まってんのか?
命乞いなんかする暇があったら自害の準備でもしてろよ」
「お前ら!
お、おおお俺様を誰だと思ッデェいるンだァァ!?」
「誰でも良いよ、お前のこととか興味ねーから」
「私はジョンズ・デーリッツ!
愛国革新党の誇りある党員だった男だぞ!!
邸宅の門には国旗を!
リビングルームには大音量の国歌を!
そして可愛い子供たちを引き取ってマフィアに資金を与え
マフィアによる経済の改善も行った!
私は政治家を辞めても尚お国のために戦っているのだ!!
私がいなければこの国───」
とまあ一人で熱弁するジョンズだが、その話は『彼女』の放つ凶弾によって遮られた
「う、がァァァ……!」
「我が組織自慢のエディック-100はどうだ?
サプレッサーにより銃声を70dBまで軽減することに成功した暗殺向きの銃だ
過去の栄光は音もなく崩れ去るものだぞ、ジョンズ
そんなものにしがみついたところで、お前の下に広がるのは地獄だ」
「貴様は……ローレント……!
おのれ、マフィア……社会の屑が正義気取りかッ!?」
「いや、別にガキが売られようが死のうが私には関係のないことさ
何でも良いが、私はお前を撃ちたいから撃つ
死にたくないなら権利ばかり主張してないで生きてみろ、ゴミ」
「……人類に愛を……慈悲を……」
「愛なんてモノはありもしない錯覚だ
あるとすればそれは自分に対する愛だけさ」
ローレントはほんの少しだけ悲しげな目をして、ジョンズを何度も何度も撃った