鉄の女
「フレイラ、てめーは……たったの一撃も喰らうなよ!
ソーニャの近くにいりゃ大丈夫だ!」
「……だそうよ、守ってくれる?」
フレイラはソーニャと背中を合わせる
すると何も知らないソーニャはフレイラに抱きついた
「ちょっと待って、嬉しいけど離して!」
「はは、もういっそ抱き合いながら戦っちまえ」
「バカ言わないでよ!
ちょっとソーニャ、そのパワーで抱きつかないで!」
しかしソーニャは近寄る敵を全て始末していっている
彼女の近くにいれば安全なのは間違いない
キャシィはキャシィで、身軽に攻撃をかわしながら死者を倒していく
「伝承……あのクソ神父が昔言ってたことだ……!
吸血鬼の伝説……死んだ人間を操ったり念力を使ったりするってな……!
それはアイツ自身のことだったんだ……来るぞ、銃を持ったヤツが……」
瞬間、キャシィは言葉を失った
「どうしたの、キャシィ……、……って……あれは……!?」
彼女らの前に現れたのは、死んだはずのローレントだった
「オイオイ嘘だろ、こういう展開アリかよ!」
「……もう誰だろうと関係ないわ、死んでるんだもの!」
ローレントは自慢のエディック-100をかつての味方たちにお見舞いする
「こッ……の野郎ォォォ!」
キャシィにとって、もはや銃弾を避けるのは容易なことであった
弾のひとつさえ当たることなくローレントの懐に飛び込む
「ケッ、こんなマヌケがローレントだとは信じたくねーな
理性も感情もなくなってんじゃあ、ただのバケモノだ」
しかし───
ローレントはキャシィの頭に重い一撃を与えて吹っ飛ばした
力で言えば、圧倒的に人間を越えているのだ
「……ぐがッ!」
「キャシィ!」
「くっそ……頭狙いやがった……
てめースカスカだから……アタシのが欲しいのかよ……!?」
痛みに悶えながらも嫌味を言うキャシィの腹に蹴りが入り
次第に余裕が消えてゆく
「……駄目だ……近づいたのは良いが……接近戦じゃ……勝てねー……」
ローレントにすら勝てないということは、黒幕であろう神父には尚更勝てないということ
フレイラとソーニャには頼れない
ここはもはや一人でどうにかするしかない
やれるだろうか
やれるはず
迷っている暇も
怖じ気づいている暇も
このキャシィにありはしない
ナイフを握り締め、踏ん張る
「……来い、クソアマ……」




