拒絶 ⑤
───16世紀、ヨーロッパ
テオドールは地元の神父たちの声を受けてとある城へ向かった
若い娘が何者かに誘拐され、帰ってこない
そんな事態を危惧してのことであった
城の当主である夫人には変態的な性癖があった……ということである
さて、その城に辿り着くと……彼はすぐに理解出来てしまった
その場で行われている、世にも恐ろしい残虐行為の数々を、すぐに理解出来てしまった
血腥さ、阿鼻叫喚の幻聴、何より恐るべきは『死』が見えたこと
凄まじい頭痛に襲われた彼はすぐに立ち去り、そのことを役人らに告げた
しかしテオドールのその告発は握り潰された
テオドールは怒り、訴えた
「多くの若い命がッ!
あの場で失われているかも知れんのですよ!
あの感覚が事実かどうか……確かめる必要がある!」
結局、城から無数の死体が見つかるまで、役人は誰一人として動かなかった
下層階級の娘から貴族の娘まで、様々な階級の娘を誘拐して拷問・惨殺していたことが判明し、夫人は処刑された
役人たちは自己利益のためにテオドールに罪を擦りつけ、自分達の怠慢を隠蔽しようとした
テオドールは決して、自分の娘を殺されたわけではない
しかし、彼は神に仕える男である
そうでありながら誰も救えず、あまつさえ濡れ衣を着せられるというのは屈辱の極みであった
彼は神に絶望し、呪った
同時に、神父でありながら神を呪う自分の愚かしさをも呪った
精神は完全に崩壊し、信仰心は歪み、人間の醜さに対する嫌悪ばかりが膨張した
そしてある時、城を訪れた彼は夫人が記した書物を読みあさり……夫人の残虐な行為を模倣した
その『末路』が、今も吸血鬼としてこの世界に残っているのである




