Open My Heart
───十二年前 バラーバードール孤児院
キャシィはテオドール神父に連れられてこの孤児院へとやって来た
傷だらけで倒れているところを、神父に保護されたのだ
孤児たちは同じ境遇であるキャシィを仲間として歓迎した
特にルナという少女は、キャシィのことをとても気に入ったらしく、常にキャシィの傍にいた
そんなある日のこと
神父はキャシィを呼び出し、次のことを告げた
「ルナは君のことを殺そうとしているようだ
そして他の孤児たちもそれに同調している
……念のため……注意して過ごすことだな……」
そして別の日のこと
神父はルナを呼び出し、次のことを告げた
「キャシィは君たちを殺そうとしている
気をつけたまえ、私の気のせいならば良いのだが……
もし本当ならば、君たちは一人残らず殺されてしまう……」
むろん、それらは嘘である
神父はルナたちとキャシィを戦わせるつもりで嘘を吐いたのである
結果としてルナとキャシィを除く孤児は全員死亡
ルナは重傷を負い、キャシィは失踪した
全てテオドールの計算通り
その後のキャシィは殺人に次ぐ殺人を繰り返し、やがて都市伝説となったのである
・・・
「アイツの言うことなんて信じていなかった
人殺しのアタシを利用して何かをしようと企んでるんだってこと……
それに気づくのは難しいことじゃなかったんだ
何が目的かは知らねーが……人様を利用しやがったツケは払ってもらう……
ヤツ自身の命でな……」
「……テオドール、か……
この私でさえ聞いたことのない名前だ……
バラーバードールという名も初めて聞いた……
神父というからには教会はあるのだろう?
何という名前の教会だった?
そしてそれはどこにある?」
ローレントは街一番の規模を誇るマフィアのボス
その彼女が聞いたこともない、ということは
裏社会の人間である、という可能性が高い
実際、ソーニャの件でも孤児院と軍が繋がっていたのだ
表向き慈善活動を行う者は……往々にしてドス黒い本性を隠しているものではないか
「……地下にあった……
名前も何も教えちゃもらわなかったが……
とにかく……アタシはアタシの意志で殺人鬼をやるんだ……
あんなヤツに人生を握られるってのは胸糞が悪くて仕方ねーよ」
「なるほどな、で……フレイラ……お前は協力するのか?」
「……それがキャシィの願いなら、ね
恩を返すのはマフィアの鉄則でしょう?」
「ま、それは此方に利益があれば……の話だな」