Dear Sonya
───静寂な空気に包まれた教会
そこで、一人祈りを捧げる神父
その髪は不気味なまでに黄色く輝き、その目は曇りひとつなく全てを見通している
かなりの年齢でありながら青年のように若々しい容貌
そして何より特徴的なのが、十字架の形をした古傷
まるで神に呪われて永遠の命を授かった吸血鬼のような男である
そんな彼の『祈り』の時間
その時間に入り込むことが許されているのは、彼の専属メイドただ一人
「御主人様、只今戻りました」
「ご苦労だった
報告の方はどうかな?」
「良い報告と悪い報告がございます」
「良い報告から聞こう
何だね?」
「ルーケ刑事を抹殺し、警察に対する牽制が成功しました」
「ほう……では、悪い報告は?」
「ジョンズ・デーリッツが殺害されました」
「……何ということだ、良い報告がまるで台無しだ……」
「殺害した人物は特定出来ていませんが……
彼は生前ローグに多額の資金を援助していました
恐らく、組織間抗争に巻き込まれたものかと思われます
……いずれにせよ……」
「……ああ、『アレ』が目覚めてしまうかも知れん
赤旗の亡霊……機械人間……悲劇の殺人機が……」
・・・
とある田舎街に生まれた少女ソーニャは、幼少期から両親による虐待を受けていた
ある日、彼女は苦痛から逃げ出すために両親を殺害してしまった
そうして身寄りなき孤児となった彼女は軍に保護され、孤児院に入れられた
しかし、孤児院の正体は『殺戮兵器』に改造する施設だった
幼き彼女もまたその実験台として身体中を改造されるが、結局不良品として『廃棄』が決定した
そんな彼女を高く買い上げたのがジョンズ・デーリッツであった
彼はソーニャの境遇を知るや否や、欲望のままに彼女を穢した
人間に『飽き』というものがあったことは彼女にとって幸か不幸か
ジョンズはやがて何の変わりもなく人形のように無表情なソーニャに愛想を尽かしてしまった
そして数多の「廃品」と共に、彼女は完全に忘れ去られた……