東の砦攻略戦①
先のユウヤとの戦いから1週間が過ぎたが、セントガーデン王国の軍勢は未だに兵を退く様子は見せていなかった。むしろ本国から増援を呼び、トトル平原の東の端、アンデに築かれた砦にて防備を強化する態度を見せている。
「うーーん、あの時前線が崩壊したはずなんだけどなぁ…… 」
砦の前に構築した野戦陣の中心、『国王本営』の天幕にてミリアルドが頭をかく。というのも____
「あれが砦、と言われてもねぇ」
オズワルドも思わず苦笑いする。現在、魔導国における砦、要塞とは『最新鋭の魔導砲撃に耐えうる』事を前提とした作りになっており、その建造物のほとんどは50年前に竜人たちが開発したコンクリートで建てられるのが一般的になっている。
「土嚢を積み上げた壁が前線遮蔽物、ねぇ」
陸軍東方軍司令、鬼族のクサナギが戦場地図を眺めながら呟く。それもそのはず、土嚢程度であれば魔導砲を曲射すれば1、2発で吹き飛んでしまうからだ。
「陛下、おそらくここにいる全戦力ではただの袋叩きになるかと」
クサナギが進言する。それもそのはず、元々の常駐戦力である陸軍3万8千と空軍7千、そこに魔導王が指揮する陸軍第1師団が2万2千、そして空軍が3千。合計で7万の兵力がこのアンデに駐留している。
しかしその兵力の全てが最新式のボルトアクション小銃を携え、さらにはミスリム鋼で作り上げられた24センチ魔導砲をずらりと並べている。敵の兵力がいかに17万の大軍であるといえど、その装備が皆して全時代のフルプレート鎧にマスケット銃や弓矢程度であればどちらが勝つかなど明確な話である。
「だよなぁ、我々としてはとっとと講和して収穫期に突入したいし、袋叩きはまずいよなぁ」
この場における最高級指揮官3名、国王ミリアルドとオズワルド、そしてクサナギが完全に「面倒だなぁ、この局面」と思って3人揃って口に出そうとしたまさにその時、国王執事のナハトが会議室に姿を現した。
「只今、三軍統括本部情報局長アモン中将が手勢を引き連れて本陣に到着なさいました」
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「よく来てくれました、アモン卿」
「なんのなんの、王命とあらばこの身は直ちに」
ミリアルドより頭1つ背の高い悪魔族が頭を下げる。その肌には無数の戦傷を受けているが、どれもこれも全くと言っていいほどに命に関わるような大怪我では無かったことをその傷跡が物語っている。
「……直接戦に出向くのは500年ぶりと成りましたな」
「あぁ、今回ばかりは卿を頼らねばならんことになりましてな」
ミリアルドの高祖、初代魔導国王の治世より国の重鎮として仕えるアモン卿は誰もが認める最強の武人である。今は一線から離れ、高度な諜報や工作を実施する要員を育成、管理運用している。
「では、我が手勢を? 」
「あぁ、今回来た200名には全員事に当たってもらおうと思っている」
ミリアルドに促され、軍議の席に着くアモン。席次はクサナギの隣である。
「さてミリアルド、そしてクサナギ。ちょいと物騒な火遊びをしてみようじゃないか」




