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6話 魔王様、出撃!

なんだかんだ戦闘書きたい病が発症してしまった……

 ミリアルドたちが身支度を済ませて門に待機を始めた頃、人類国側の陣もざわつき始めた。いつもは人類側が仕掛けるため、どうしても先手を取りたいのだろう。


「あやつら、目だけは達者らしい」


「そうらしいですな。さて陛下、敵の軍が動きます」


 ナハトがそう言った瞬間、人類側の陣の門が開き兵士たちが遮蔽物のない平野になだれ込んだ。その数はどう見積もっても魔導王国軍の4倍はいる。騎士隊長が敵をにらみながらミリアルドに告げた。


「陛下、やはり偵察通りのようです」


 オズワルドが告げると、ミリアルドは静かに首を縦に振った。


「今日は雲ひとつない快晴でかつ微風、決戦としては最高の日和だからな。さて、騎士隊総員に告ぐ。進軍用意! 」


 ミリアルドの号令とともに騎士隊が手綱を握ったその瞬間、人類側の行進が停止した。門の上の櫓に駐在していた監視兵が声を上げる。


「敵将らしき人物が出てきました。 ……何か羊皮紙のロールらしきものを携えています」


「宣戦布告というわけか。まぁ聞いてやろうではないか」


 ミリアルドが呟くと、門にいた面々は一様に背筋を伸ばし、敵の宣言を待った。敵将は丸腰のままミリアルドたちが目視できるところまで近づき、手に持っていたロールを開く。


「セントガーデン王国の地に蹂躙する賊敵に告ぐ。貴様らは本来我らが領土である、ここコルド平原を勝手に占拠し、奴隷をもって農場を営み私腹を肥やしている」


 敵将とはまだ1グランド(1グランド=1

 km)以上は離れているが、魔法で声を拡大しているらしく声は一切の雑音なくミリアルドたちの所まで届いていた。


「それはそちら側の兵力を見れば明らかである! よって我々はその非道を正さんとして今ここに宣戦を布告する!! 」


 敵将が宣戦文章を読みきってロールを閉じた瞬間、ナハトが大声で怒鳴り付けた。


「誰が私腹を肥やしているだとぉ? 鏡で自分の腹を見てから出直せ豚野郎!! 」


 ナハトの指摘は的確で、敵将は鎧の上からでも分かるほどにでっぷりと太っていた。あまりの切り返しのテンポの良さに門で控えていた他の兵士たちがゲラゲラと笑い出した。


 敵将は顔を真っ赤にしながら馬に飛び乗り、味方の陣に向かって駆けていった。完全に敵が動かなくなったことを確認し、ミリアルドは開門の命令を下す。


「騎士隊、進めェ!! 」


 隊長の掛け声とともに騎馬の列がミリアルドたちを乗せた馬車と並走しながらゆっくりと動き出した。


「父上、本当にやる気なの? 」


「もちろんだ。何を心配しているのかな? 」


 リーフィアが怪訝そうにミリアルドの顔を覗き込むので、ミリアルドは思わず破顔しながら答えた。リーフィアは「いえ、父上の厳しい顔を見たのは久方ぶりだったので」と言ったきり、空気を察して喋らなくなった。


 騎馬隊が停止し、騎馬兵が旗を掲げながら花道を作る。ナハトが先に降り馬車の扉を開け、ミリアルドは静かに下車した。


「リーフィア、お前はナハトから離れるな」


「かしこまりました、父上」


 リーフィアがしっかりとナハトの横に行ったのを見て、ミリアルドは敵軍を見据えながら花道を歩く。一歩踏み出すごとに鎧がガチャリ、ガチャリと鳴るため雰囲気自体は出ていると言えよう。


「セントガーデン王国軍の諸君に告ぐ。我が名はレイヴァ魔導王国の五代国王、ミリアルド=レイヴァである」


 敵軍の陣が騒がしくなる。ミリアルドの着けている鎧はその造形の各所に禍々しい彫刻と突起が設けられているため、まさに『魔王の鎧』の様相を呈していた。


「ここ、コルド平原は800年前より我らが領土として統治している土地である。それに我が国は一切の奴隷を我が名の下に禁止しておる。汝らの主張は一切の虚偽であり、受け入れることは不可能である!! 」


 ミリアルドが右手を水平に突き出す。右手を黒い霧のような何かが覆い、ミリアルドは霧の中から赤い刻印が脈動する紫色の大剣を取り出した。


「故に、国王としてこの私が自ら先陣を切る。今この場で私の首が欲しい者は名乗り出よ!! 」


 既に敵との距離は500ランド(1ランド=1m)もない。しかしミリアルドは拡声魔法を使わずにあえて叫んだ。もちろん敵は一瞬戸惑ったが、すぐに『突撃ぃぃぃ!! 』のかけ声とともに地響きを轟かせながら敵軍が突撃を開始した。


「仕方ないか…… 」


 剣を地面に突き刺し、ミリアルドが右手を敵の群れに向かって突き出す。すると敵軍の足元の地面に赤い光を伴った幾何学紋様が現れた。


「戦闘魔法、『裁きの炎獄ジャッジメント・ヘルブレイズ』!! 」


 刹那、赤色の閃光が敵軍を包んだかと思えば、その閃光はどす黒い炎となって敵を呑み込み始めた。敵軍は右往左往しながら炎から逃れようと格闘するも、魔法陣の中にいた者たちは有無を言わさず灰と化した。


 そこからはまさに阿鼻叫喚といえる惨状が展開された。馬が炎に怯えたことにより落馬が乱発し、少しでも炎に触れられたものは叫び声を上げながら灰になっていく。一方のミリアルド側の陣は、ミリアルドの魔法の発動とともに大声で王の勇姿を讃えている。


「さて、とどめといこうか」


 右手で自分の喉に触れるミリアルド。静かに拡声魔法をかけて敵軍に語りかけた。


「これはまだ小手調べに過ぎぬ! 今すぐ兵をまとめて引き下がれば二発目は許してやろう!! 」

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