魔王、出撃を決意する
という事で、前々からやりたかった異世界ものを始めてみました。多少至らぬところはありますが宜しくお願い致します。
レイヴァ魔導王国、そこは人類にとって最大の敵となる『亜人族』の王国である。人類側はこの国を『人間を奴隷として扱う野蛮な国家』と位置付けられている。
ただし、人類は未だレイヴァ魔導王国の国境を跨いだ事がなく、謎が多い国としても知られている……
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レイヴァ魔導王国首都アルスマ レイヴァ城内
「さて国王様、本日の報告は工業省と軍務省からの二件です」
窓から朝日が射し込む巨大な広間に用意された会議用の長机、それに座するのは礼装の燕尾服を着た実に様々な種族の者たちである。
鳥のような嘴と翼を持つ者、昆虫のような外見をしているもの、はては頭にしっかりと角を携えた鬼や獣人までいた。その場にいた誰もが礼装で身なりを整えている。
しかしその1番上座である『国王』の席に鎮座するのは、翼も角も持っていなければなんら体格の優れたわけでもないただの『人間』に見える男であった。国王と呼ばれた彼は頬杖を解き、静かに姿勢を整えた。
「了解した。まずは工業省の報告からだ」
王がそう宣言すると、まるで鎧を着込んだかのような外殻に覆われ、ドラゴンのような顔をした男が「はっ」と返事をして立ち上がった。
「お手元の資料にある通り、新たな石炭の鉱床が見つかりました。既に調査隊を派遣しておりますが、充分な量があると判別でき次第、即座に採掘を開始します」
「ふむ、では余の名の下に人員を集める用意をせよ。問題ないなバルメット? 」
「本日中に調整致します」
バルメットと呼ばれたドラゴン男が席に着く。そして国王は隣の軍服姿の黒鬼に目線を移した。
「してガージァ、お主が私に報告とは珍しい。何があった? 」
黒鬼は席を立ち、国王に一礼してから静かに話し始めた。
「先ほど南部基地から連絡がありまして、兵種不明、数45000のセントガーデン王国軍が現れたと」
「またか…… どこに出た? 」
王が呆れ顔でガージァに聞き返す。黒鬼は気を付けの姿勢を保ったまま淡々と答えた。
「南部のトトル平原の辺りです。現在は既に待機していた我が軍の部隊26000が陣を構えてにらみ合っております」
会議に参加していた全ての者が一斉にため息をつき、王も再び頬杖をついた。王の席に近い席でかしこまっていた丸眼鏡をかけたゴブリンが口を開く。
「ここ数十年間ずっとですよガージァ殿。相手はあの平原で我らが生産する小麦が狙いなのでは? 」
「しかしアーノルド財務大臣、彼らの建前は一応『我が国で奴隷として使われているヒューマンの解放』なのです」
「何ィ!? 今なんと言った!! 」
アーノルドが紛糾する。しかもバルメットが鼻息に火を交えながら荒々しく立ち上がる。
「ガージァ! 貴様、この国の憲法を愚弄されてなんとも思わんのか!! 」
会議に参加する他の者の多くがこれに賛同し、今にも掴み合いが始まりそうな雰囲気を砕いたのは国王であった。
「……皆の衆、落ち着きたまえ」
「「「「「は、はぁ…… 」」」」」
一転して静まり返った会議室を見渡すようにしながら王は言葉を続ける。
「我が国は初代国王、つまりは余の高祖父が『全種族平等』を掲げ建国し、そして今まで千年の間破られることがなかった」
一同が一斉に頷く。異を唱える者はいなかった。
「ゆえに奴隷などあるわけがないのだが、対して人類は違う」
ここでその場にいた誰もが顔を見合わせる。そしてヒューマンの利己的思考の意地汚さを思い出して眉をひそめた。
「人類側はな、ヒューマン、エルフ、ドワーフの3種族こそが神の地上代行者であるという意識が強い。彼らが奴隷を使うのだから我々もしかり、と言いたいのだろう」
バルメットが机の天板を叩いて身を乗り出す。
「失礼ながら国王、そのようなつまらぬ偏見のためにこの国がおとしめられる必要性はないかと思われます」
この言葉に再び一同が揃って首を縦に振る。その様子を一望し、王は静かに口を開いた。
「その通りだバルメットよ。ゆえに今回は余が直接出向き、この偏見を一掃してくれよう」
一同が諸手を挙げて歓喜した。普段は仏頂面のアーノルドもズレた眼鏡を直すのを忘れて飛び上がる。
「ガージァ、第一師団をトトル平原に送り込め。バルメット、私の列車を手配して二時間以内に発車の用意を整えよ」
「「はっ! 」」
二人が会議室を飛び出していく。その他の者たちも玩具を与えられた子供のような目を王に向けていた。
「此度の閣僚会議はこれにて閉会とする。なお、明日からの会議は私とガージァ抜きで行うように」
「「「「かしこまりました。一刻も早い勝利をお待ちしております」」」」
その場にいた総員が、会議室から各々の職場へと戻っていった。
ここは次回からは用語解説のコーナーとなります。




