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アイビー  作者: 青木りよこ
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会いに

夏葉に会いに行こうと思ったのは何でだっただろう。

恐らく大した理由なんかなかった。

唯決着をつけるべきだと思った。

瞼に焼き付いて離れそうもないそれから。

身体の片隅に残り続ける幼い影を。

それが罪悪感でないことは自分が一番よく分かっていた。


夏葉のことは調べたらすぐにわかった。

直接自宅に押し掛けるわけにはいかないし、学校帰りに待ち伏せするのも嫌だったので夏葉がバイトを始めてくれていたのは俺にとって都合が良かった。

夏葉は本当に俺の望む通り動いてくれる。

昔も今もずっと。


再会が俺に感動を齎すということは特になかった。

夏葉に綺麗になったねと声を掛けるべきだったのかもしれないが、俺は想像通りになっていると思っただけで驚くべきところなど何もなかった。

夏葉は俺の想像通りの大きさになっていた。

髪型もあの時病室で見た長さとそう変わらなかった。

八年たったはずなのに昨日出逢って別れたばかりのような気さえした。

大きくなったという感慨のようなものがなかった。

ずっとこの顔を見てきた気がした。


俺が憶えているか夏葉に聞くと夏葉は憶えていると言った。

その声は必死で震えを隠していた。

俺はその時夏葉も俺と同じ気持ちでいたのだと簡単に理解した。

夏葉は俺を忘れていなかった。

忘れられているなど思ってなかったがここまでとは思わなかった。

俺は夏葉が昨日も今日もずっと前から俺のものだったのだと気づいた。

あの日病室で俺達は確かに互いを離れられなくしたのだろう。

夏葉は今にも泣きそうな顔をしていた。

認めないだろうが百人に聞いたら百人がそう言うだろうと思う。

あの顔を見せておいて俺を好きじゃないなどどの口が言うのやら。

これだから夏葉は可愛いしどこまでも可笑しい。


夏葉が俺のものだと気づいた俺はずっと彼女と繋がれていたから動きにくかったのだとようやく理解した。

誰とも上手くいくハズなどないのだ。

身体がずっと自由じゃなかったのだから。

じゃあもう簡単だ。

足枷があるのならそれをこちらに引き寄せればいい。

そうして枷ごと歩いたらいい。

夏葉も身動き取れなかったのだろうか。

まあ、そんなことはいい。

俺は不思議なほど夏葉の生活に興味がなかった。

離れていた八年の間何をしていたのか、どんな悲しいことがあったのか、嬉しいことがあったのか、そんな些末な事を知りたいと思わなかった。

夏葉にとってどれほど幸福をもたらす出来事があったとして、それら全てを俺が塗り替えてしまえるのだろうことは最早火を見るより明らかだった。

俺は夏葉にとって起源になったのだと思う。

俺達の契約は病室で一瞬も触れ合うことなしに成立したのだろう。

この効力は死によっても解かれることはない。

そんな脆弱なものじゃない。

俺は夏葉に笑いかけた。

夏葉はもう俺を見ていなかったが、その後の夏葉がバイトを終えるまでの三十分は人生で一番だと思えるくらいに愉快だった。












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