過去と開合
次の話が続き。何故か先にこれ書いてしまった。
私が彼と出会ったのは本当に些細な事だった。
中学二年の梅雨のある日…。予想以上に強い雨が降りしきる日。
だからといって雨具が無い訳ではなくて、鞄の中には折り畳みの傘がある。
まぁそれでも脚は濡れちゃうなと思いながら帰路に付いた。
強い雨と濡れた脚で不快に思いながら歩いていると排水路の側で泣き噦る少女と排水路の中で何かを探す彼がいた。
当時の私が通っていたのは女子校なので見知らぬ少年程度にしか感じていないし、彼の身長も小さかったから中学生とは思ってもいなかった。
流石に小学生低学年に見える少女と高学年に見える少年が大雨で溢れ返る排水路にいるのは危ないと思った私は彼等を止める為に近寄って行ったが雨が強くて彼等は私に気が付いていない。
注意する為に声を掛けようとして彼等の声が聞こえた。
「も、もゔいいから!にいちゃんもういいがら!」
「知るか。僕がしたいからしてるんだ。奈々はさっさと家に帰れ。」
「でも、ひっく…でもー!」
どうやら少女が何かを排水路に落としたのか少年はそれを探しているようだ。言い方はアレだが中々妹思いの良い兄のようだ。だけどやっぱり危ないから私は声を掛けた。
「君達、危ないわよ?」
声を掛けた事で漸く私に気付いた彼等は同時に私を見る。
「ね?危ないから上がりましょう?」
優しく、諭す様に声を掛けて…だけど彼は私に向けていた視線を排水路に戻すとまた漁り出した。
「ちょ⁉︎聞こえてた?このままじゃ「何で止めないといけないんだ。やると決めたらやり通す。」」
その言葉を聞いて、声の力強さに驚いて、私は頑固だなと思いながら傘を少女に渡す。
「はぁ…じゃあ私も探してあげるわ。何無くしたの?」
溜息を吐きながら私も排水路に入りながら聞いた。流石に見過ごすのは出来ない。
そんな私に彼は驚いた顔をした。
「え?あっと……赤い石。河原に在る様な赤い石。」
何でそんな物を捜しているかは考えない。例え私にとってくだらなくとも彼等には必要なのだろう。だから私は「そ。」と一言言うと探し出す。
そんな私に彼は小さく「…ありがとうございます。」と言った。
探し物の手伝い、本当に些細でありふれた出会いかもしれない。でもそれが私が彼に出会い、気にし出した最初の出会いだ。