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22.クルーガー城御前試合(その1)


 1


 国王への拝謁はいえつが刻一刻と迫ってくる中、俺は控え室で精神集中とウォームアップを兼ねた空手の型をやっていた。『セイエンチン』――相撲で踏む四股しこのように足を広げて腰を落とし、貫手ぬきてを主体とした手技と受け技のみで構成される型だ。


「綺麗……」


 リーリアがこちらをじっと見つめながらつぶやく。俺の型そのものはさして上手くもないが、手の中でクルクルと回るサイが光を反射して綺麗に見えるのだろう。


「…………コォォォォォォォ…………コッ!」


 へその下に力を込め、口を『お』を発音するときの形にして、肺に溜まった空気を全て吐ききる。最後にこの『息吹いぶき』を行う型はいくつかあるが、やはりこれをやると気持ちが落ち着く。

 俺は汗をかいた上着を着替えて武器と防具を身につけると、ナックルガードのついた手袋の感触を確かめるように拳をぎゅっと握り締めた。これであとは迎えが来るのを待つだけだ。


「よし……」


「トウマさん、何かいい方法は思いつきましたか?」


 ティナが不安そうな顔で訊ねてくる。彼女は俺を元の世界に返すためについて来てくれただけに、今回のことがどういう結末になるか心配しているのだろう。


「うん、とりあえずこの場を切り抜けるための作戦は決まったよ。ま、上手くいくように見守っててくれ」


「はい……」


 相手がこちらに相当の敵意を抱いている以上、やはり全力をもって戦うしかないだろう。だが勝ってしまえばまた面倒なことになる。その相反する問題を解決するために俺が考えたのは、『なるべく汚い手を使って見苦しく勝ちにいく』ということだった。

 ド汚い手を使っての勝利ならば、王様も『こんなやつは騎士に相応ふさわしくない』と思ってくれるだろう。シャーロットとの結婚についても、父親に認められなければいいのだから同じことだ。あとは騎士団の実力がどれぐらいなのかが問題だが……。


「トウマさん、今日はなんだか弱気ですね。いつもだったらスパっとやっつけちゃいそうなのに」


「あのなアル、騎士団ってのは有事に国王を守るための存在だぞ。つまり毎日そのための訓練を積んでる、戦闘のプロってことだ。対して俺はあくまでアマチュア、命の取り合いなんてこの世界で魔物と出遭であうまでほぼ経験してこなかった。どっちが強いかなんて考えなくても分かるだろ」


「でも、いつもトウマさんは魔物相手でもなんとかしちゃうじゃないですか。今回だってきっと大丈夫ですよ」


 確かにアルの言うとおり、強さと勝ち負けは必ずしも=《イコール》ではないというのが俺の持論だ。しかし、それはあくまでそのときの体調や運次第で『勝ち得る』ということであって、確率からいえば強いほうが有利なのは当然だろう。

 とはいえ、今回はまさにその『勝負のあや』というものに賭けるしかない。ただの運頼みというわけでもないが、どんな手を使ってでも勝ちにいくという覚悟はすでに決めた。


 ―― コンコン ――


 部屋のドアがノックされ、返事をする間もなくがちゃりと開く。仮にも客人である俺たちに対してそんな無礼な真似をしたのは、確認するまでもなくエドワードだ。


「時間だ。ついて来い」


「分かりましたよ。仲間たちも一緒でいいんですよね?」


「ああ、陛下の前に出られるのはお前1人だが、連れの連中も他の観衆とともに見守るだけなら許される。もちろん武器の類はここに置いていってもらうがな」


「そりゃ良かった」


 エドワードの後に続き、上の階へと続く階段を登っていく。そして通された謁見えっけんの間では、すでに大勢の観衆が俺たちを待ち構えていた。


 2


 謁見えっけんの間に足を踏み入れてすぐ、俺は王様のいる正面よりも左右のほうに注意深く目を向けた。ピカピカに磨かれた石の床をゆっくりと歩きながら、部屋の広さや構造を頭に叩き込む。

 60~70メートル四方はある広い部屋には、左右の壁から少し離れた場所に等間隔で6本の柱が立っていた。1本の太さは直径2メートルほど。身を隠すにはちょうどいいようにも思えるが、太すぎて相手の姿も見えなくなってしまうので、盾にするにはむしろ不向きだろう。

 正面の奥は階段になっていて、こちらを見下ろせる高い場所に玉座がある。その前には甲冑姿の騎士たちがずらりと並んでいて、王に近づけないよう守りを固めていた。


(柱の傍には高そうな壺、壁際に花の生けられた花瓶、あとは国王の肖像画か……。さて、どういう状況なら有効に使えるかな?)


 調度品の位置や兵士たちの配置もしっかりと把握しておく。周囲の環境を利用することは、弱い者が強い者に挑むときに大きな力になるからだ。

 200人はいると思われる観衆たちは、まるで珍しい動物でも見るかのような目をしながらヒソヒソと何かをささやきあっていた。俺はすでに戦いの準備を始めているのだが、傍目はためには田舎者が場違いなところに連れて来られてキョロキョロしているようにしか見えないのだろう。ギャラリーの中にはちゃっかりシャーロットもいて、他のご婦人方と一緒にこちらを見ながら薄ら笑いを浮かべていた。あのアマ……後で覚えてろよ。


「君たちはここまでだ」


 前を歩いていたエドワードが部屋の半ばあたりで振り返り、アルたちにここで待つよう告げた。そこから先には貴族とおぼしきギャラリー連中もおらず、騎士団と王に拝謁はいえつするものだけが進むことを許されているようだ。


「さあ、王の前へ」


 エドワードに促され、奥にある階段のすぐ下まで歩いていく。この手の儀式における正式な作法など知らないので、俺はとりあえず騎士っぽく振舞っておけばいいかと思い、床に片膝をついて王の前に拝跪はいきした。


「陛下、かの者が例の異世界人にございます」


 王様の隣に控えたチャールズさんが俺のことを紹介してくれた。この人はシャーロットと違って信用してもよさそうなのだが、少々天然っぽいので自然と俺の望まないほうに話を持っていきはしないか、そちらのほうに注意が必要だ。


「ふむ、そなたが噂のカミシロ・トウマか。顔を上げてよいぞ」


 顔を上げてみると、そこにいたのは絵に描いたような王様だった。エルグランドの骸骨王ほど派手ではないが、赤いマントにロイヤルクラウンという格好と、アルプスで少女と一緒に暮らしている老人のような白髭は基本を押さえているといっていい。

 穏やかな声と優しげな顔を見る限り、中身のほうも聡明な王であるかのような印象を受けるが……見た目で軽々しく判断することはできないな。少なくとも人を呼びつけてこんな見世物じみた真似をさせようという時点で、その本性は剣闘士を戦わせて喜んでいたローマの暗君と変わらない可能性もある。


「チャールズから聞いておるよ。アルファード将軍の娘であるシャーロットと結婚するため、騎士の称号を望んでいるという話だが……」


おそれながら、それについては少々話に行き違いがあったようです。自分はシャーロット嬢とはそのような関係ではありませんし、騎士になることを望んでいるわけでもありません」


「ほう、騎士の称号が欲しくないとは変わり者よのう。だが、それではそなたが使うという異世界の技とやらは見せてもらえんのかね?」


「いえ、自分が今日ここにまかり越したのは、こうして陛下がお招きくださった以上、技の1つも見せずに去るのは無礼にあたると思ったからです。騎士団の方々にも何か誤解があるようですが、それを晴らしておくためにも戦いを避けるつもりはございません」


 俺はここに来るまでの間、頭の中でさんざんシミュレーションしていた台詞を淡々と口にした。こうして先にはっきりと自分の意思を伝え、誤解を解いておいたほうが後々面倒なことにならないと思ったのだ。


「そうか、そなたの厚意は嬉しく思うぞ。では騎士団長、さっそく彼と戦う騎士を選ぶとしようじゃないか」


「はっ」


 王の言葉を受け、そのすぐ傍にひざまずいていた男が立ち上がった。デカい。身長2メートル近くはあるだろうか? ゴツいフルプレートアーマーを着ていても、その中にある肉体の力強さがオーラとなってこちらに伝わってくるようだ。このおっさんが騎士団の団長さんか……。


「さてジェラルドよ。彼の相手は誰がよいかな? あまり一方的な試合になってもつまらぬし、できれば実力の近しい者との戦いが見たいのだが」


「…………」


 ジェラルドと呼ばれた厳つい顔のおっさんは、鉄仮面のような無表情を一切崩すことなくこちらを睨みつけてきた。一国の騎士団長ともなると、一目見ただけで相手の実力など分かってしまうのだろうか。


「彼の相手ならエドワードで十分かと思われます。やつはまだヒヨッコですが、こういう機会に実戦の経験を積ませておくのもいいでしょう」


「ふむ、ならばエドワード・ラクティスよ、お主に彼の相手を命ずる」


「ははっ、光栄に存じます!」


 俺の隣にいたエドワードは胸に拳を当てて王に向かって一礼すると、不敵な笑みを浮かべてこちらを向いた。自分の手で俺を倒せるのが嬉しくて仕方がないといった表情だ。


「団長さん、やる前に1つお訊ねしますが、この試合のルールは? 使っちゃ駄目な武器とか、やっちゃ駄目なことがあれば先に言っておいてもらいたいんですが」


「そうだな、武器は好きなものを使っていい。勝敗はどちらかが降参するか、気絶などで勝負ありと判断したら私が止める。あとは相手を殺しさえしなければ何をやっても構わん」


「……えらく物騒なルールですね。それで本当にいいんですか?」


「二言はない」


 さすがに誇り高き騎士団様というべきか、それとも俺の実力など恐るるに足らないとみたのだろうか、いずれにせよ望むところだ。ある意味俺にとっても危険なルールではあるが、これなら遠慮なく全ての力と技をふるえる。


「じゃ、やりますか」


 俺はエドワードに向かって軽く一礼すると、腰のホルスターからトンファーとサイを片方ずつ抜き、それぞれを左手と右手に持って構えた。対するやつの武器は、アルが使っている剣よりも少し太くて長い一般的なロングソードだ。


「では、始めいっ!」


 そして騎士団長の合図とともに、戦いの火蓋が切って落とされた。


 3


 エドワードと対峙した俺は、まず最初にやつを挑発してみることにした。こいつは騎士団の中でも若手らしいので、頭に血が上って攻撃が単調になってくれたら儲けものだ。


「やあエド、調子はどうだい?」


 太っちょの男が買ってきたボロい車をノッポの男がレストアし、高値で売るというイギリスの番組を真似て軽い調子で話しかけてみる。


「貴様……誇り高き我が名を気安く呼ぶな!」


 エドワードが激昂《激昂》し、まるで猛犬のように歯を剥き出してみせた。おいおい、そこは「やあマイク、今日はどんな車を手に入れてきたんだい?」と返すとこだろうが。


「くっくっく、さっきの台詞を聞いたかよ。お前、団長さんにヒヨッコ呼ばわりされてたぞ。お前も王様に光栄だとか言ってたけど、団長が大したことないと判断したやつの相手をさせられるって、逆に恥ずべきことなんじゃねえのか?」


 ニヤニヤと笑いながらさらにエドワードを煽る。ボクシングのフットワークを使いながら常に動くことで狙いを定められないようにしているが、いつ仕掛けてこられてもいいようにトンファーで防御体勢はとったままだ。


「おのれ、騎士を愚弄するかっ!」


 俺の狙いどおり、エドワードは我を忘れて斬りかかってきた。こうして先に攻撃させることで、まずは相手の剣の速さや威力、そして間合いを掴むことが肝心だ。


 ―― ギィン! ――


 俺が円の動きのままサイドステップの速度を上げると、空を切ったエドワードの剣先が床を打った。フリージアさんの剣撃に比べたら大したことはないが、やはりそれなりに速い。

 だが抱いた感想とは裏腹に、俺はそれと真逆のことを言うことにした。もしもこいつに落ち着いた状態――それこそ明鏡止水の境地で待ちに入られたら、俺のほうから攻撃するのは火の中に手を入れるようなものだと思ったからだ。


「遅い遅い。ハエが止まるぜ!」


「ぬぅぅっ!」


 ―― ゴン! ガン! ギィン! ――


 上からの斬撃はトンファーとサイさばきつつサイドステップ、横薙ぎの斬撃は部屋の広さを生かして大きくバックステップすることでかわす。

 仮にも一国の騎士を相手に俺がこうして剣撃をさばけるのも、全てはフリージアさんが稽古をつけてくれたおかげだ。俺はこの世界に来るまでこんな長剣と戦ったことはなかったが、やはり経験というものは100の理論にも勝る。


「くらえっ!」


 なかなか攻撃が当たらないことに業を煮やしたのか、エドワードは剣を大きく振りかぶって袈裟けさ掛けに斬りつけてきた。それは騎士の剣技というにはあまりにも雑な、素人が鉄パイプを振り下ろそうとするかのような一撃――待っていたのはそれだ。


「いかん!」


 騎士団長さんのデカい声が聞こえたが、もう遅い。俺は右足を大きく踏み込んで一気に間合いを詰めると、両手から武器を放りだしてエドワードの腰に抱きついた。


「なっ!?」


 頭を下げ、相手の下半身に足まで絡めるつもりでぴったりと密着する。こうすれば剣は俺の背中越しになってどこにも当たらないし、一度逆手に持ち替えないとこちらを攻撃することもできない。さらに俺は剣を振り下ろしたことで開いたエドワードの右脇をするりとくぐり抜け、彼の体に抱きついたままその背後をとった。


「は、放せ! このっ……!」


 俺とそう変わらない若さで騎士になったというあたり、こいつもきっと並々ならぬ努力を重ねてきたのだろう。それを馬鹿にするような真似をするのはやはり心苦しいが、こっちもこんなところで斬り殺されたり再起不能になるのはまっぴらゴメンだ。ちょっと恥ずかしいやられ方をしてもらうけど、許せよ。


「そぁりゃぁぁっっ!」


「うわっ!?」


 俺は両腕でエドワードの胴を抱え、その体を一気に持ち上げた。このまま後ろに投げればプロレスのジャーマンスープレックスだ。しかし――


(くっ、やっぱりめぇぇっ……!)


 やはりというべきか、フルプレートアーマーを着込んだ人間の重さは半端じゃなかった。俺より少し細身のエドワードが仮に体重65キロとしても、20キロの鎧を身に纏えば合計85キロだ。プロレスラーでもない俺がぶっこ抜きで投げるには重すぎる。

 だが、最初から俺の狙いはこいつを投げ飛ばすことではなかった。こいつの着ている鎧を最初に見たとき、俺が狙えるとあたりをつけたのは兜をかぶっていない頭部ともう1つ――おそらく馬に乗るときのことを想定した造形なのだろう、全身を覆うプレートで唯一守られていなかった場所――尻だ。


「そぇいっ!」


 ―― ごづんっ! ――


「はおぅっっ!?」


 骨が骨を打つ音とともに、エドワードの体が椅子に座ったような格好のまま横倒しにぶっ倒れた。俺がやつの体を振り下ろすと同時に自分の右足を前に出し、立てた膝の上に尻を落としたのだ。てい骨砕き――プロレスでいうアトミック・ドロップだった。


「はっ…………か……ぁぁ……」


 このアトミック・ドロップは一見冗談のような技だが、実はやられるほうにとってはかなり危険なものである。人間の尻にあるてい骨や仙骨と呼ばれる骨の周辺には神経が集中していて、下手に衝撃を加えると半身不随にもなりかねないのだ。エドワードは両手で尻を押さえたまま、金魚のように口をパクパクさせながら床の上で悶えていた。


「おい、大丈夫か?」


「き、きさ……ま…………」


 俺が声をかけると、エドワードはうつ伏せに這いつくばってモゾモゾともがき始めた。まるで泳ぐカエルのような動きだが、両手両足ともに動いているので神経に損傷はないようだ。


「これ、勝負ありってことでいいんですよね? 今の状況、俺が剣を持ってたら彼の首をね放題ですよ」


「ま、待て……まだ僕は……」


「……勝負ありだ」


 エドワードの抗議も空しく、騎士団長は俺の勝ちを告げた。1から10まで俺の狙いどおり、完全に試合をコントロールしたうえでの勝利だ。


「……押忍おす


 俺はエドワードにだけ聞こえる声でそうつぶやくと、拳で胸の前に×印を描いて正式なフルコンタクト空手の礼をした。

 武術のことなど何も分からない周りの連中にはこいつの負け方が無様ぶざまに見えたかもしれないが、それは俺がそういう技を使ったからこその話だ。もしもこいつが挑発に乗ることなく冷静に戦っていたなら、無様ぶざまに這いつくばっていたのは俺のほうだったかもしれないのは自分が一番よく分かっている。だからこそ俺は、自分だけでもこいつに対して礼を尽くしておこうと思ったのだ。たとえそれが自己満足にすぎないとしても。


 4


 エドワードが一般の兵士たちに担架で運ばれ、謁見えっけんの間から退出していく。俺は王様のほうへ向き直ると、再び床に膝をついて口上を述べた。


「お目を汚すばかりの見苦しい技、申し訳ございません。ですが、これで自分が騎士などに相応しい者ではないということがご理解いただけたかと思います」


 これも前もって考えておいた台詞だ。今の泥臭い勝ち方を見れば、王様もわざわざ俺を引き留めてまで騎士に任じようなどとは思うまい。


「うむ……そうじゃな。ワシとしてはそこまで卑下したものでもないと思うが、そなたがそう言うなら仕方あるまい。今回の褒美はチャールズを通して後で与えるから、今日は下がって休むがよい」


「お待ちください陛下、このまま彼を帰したら我が騎士団の名折れ。どうかもう1度我々にも恥をそそぐ機会をお与えください」


「なっ?」


 ようやく解放されると思って安堵あんどしかけたとき、いきなり騎士団長がとんでもないことを言い出した。


「済まなかったな少年。どうやら私は君を過小評価していたようだ。だが今度は末席の青二才などではなく、それなりの実力者と戦ってもらう。……クラウス!」


「はい、団長」


 俺のいるところから少し離れた場所にいた騎士の1人が前に出て、コツコツと足音を立てながらこちらに近づいてきた。着ている鎧は上半身のみのブレストアーマーだが、2メートル強はあろうかという槍を持った痩身そうしんの男だ。

 おいおい、こっちはやると言ってないのに勝手に話を進めるな。しかも6メートル級の長槍じゃないとはいえ、ほとんど素手と変わらないような相手にそんな長い得物を持ったやつをぶつけるか普通?


「今度はこちらが挑戦する立場だ。少年よ、受けてもらえるな」


「ほっほっほ、面白い。格闘術と槍の戦い、ぜひ見たいものじゃな」


 騎士団長はもの凄い目力でこちらを睨みつけ、有無を言わさぬプレッシャーを与えてくる。しかも王様までが調子に乗って、その提案を容認するようなことを言い始めた。ちくしょう、やっぱりこの王様タチ悪いな。周りに騎士団がいなかったらお前を人質にしてこの場から逃げてやるところだぞ。


「……ハァ、分かりましたよ。やればいいんでしょやれば」


 こうなったらもうヤケクソだ。騎士団の恥をそそぐためだかなんだか知らないが、恥の上塗りになっても後悔するなよ。

 俺は床に落としたままだったトンファーとサイを拾うと、痩せっぽちの槍使いに向かって再び構えた。

 今回登場したのはプロレス技のアトミック・ドロップです。

 これは一見すると食らったやつのリアクションがマヌケなお笑い技のようにも思われますが、作中でも書いたように一歩間違えると非常に危険な技です。

 相手を持ち上げて尻を膝の上に叩きつけるだけなので真似するのも簡単ですが、それだけにマジで真似しないようお願いいたします。

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