派遣捨員
石のように佇んでいる。
大食堂が私の心をより狭くする。
これだけ人数がいても誰も私を見ていない。
派遣社員は孤独である。
ある朝、新しい勤務地を派遣元から通告された。
自宅から電車を乗り継ぎ、バスに乗って、そこから徒歩10分。
元気とはいえない老体に鞭を打ちながら、
雨の中をゆっくりと歩く。
新しい地に馴染むには時間がかかる。
一度仕事に慣れた自分を捨てる必要があるからだ。
私はいつもそこで自分を捨てる。誰からもそうしろと言われなくても。
勤務先が分からず、佇んでいるとある会社員が声をかけてくれた。
「どちらにお行きですか?」
そっと傘を差し伸べ、笑顔で声をかけてくる。
新天地は慣れず不安であるが、こういった出会いがあることも嬉しい。