04 ルーツを知る為に
あけましておめでとうございます!
ひさびさに仕事が落ち着いたんで書きます
極東国家ヤマトの首都、ミズホ市を出て4日目のこと
なんとなく見覚えのある気配がしたので近くの洞窟へと入った
「暗いな……」
ガルルルっ!!
そこに現れたのは二匹の狼
だが全長は3メートルと大きく見るからに魔造鬼機だ
『ここから立ち去れ!!』
『ここは不可侵の場。立ち去らぬのであれば殺す!!』
え?誰の声?
「誰だ?」
『目の前にいるであろう』
「お前らか?」
『そうだ!!立ち去れ!!』
「話し合おうって気はない--」
ガルルルっ!!
っち!!
ちょっと脅すか………
カチッ
俺は首の魔導具--奴隷首輪のリミットを緩める……
ゴォォッッ
抑えていた魔力や妖力が流れる
グルルル………
『なんだその力は』
『まるであの方のような………』
『『まさか!魔牛鬼機!!』』
うわーお、そっちと間違われます?
『あの方に近づけるな!!』
『行くぞ!!』
脅すつもりが逆に襲われるとは……
「待て!!」
ドシンッ
『いけません!!』
『またあなたの力を--』
「よいよい。その者は我が--誰だ?」
「俺が聞きたいんだが………」
現れたのは巨大な人影
腰には虎柄の袴を着ている伝承にある鬼の種族だろう
「何故あいつの妖霊力を流しておる」
「あいつって誰?」
「風鬼だ」
風鬼……風鬼……あ、もしかして
「風鬼って……夜叉童子か?」
「うむ」
「あ~……一応身内だから」
「なぬ?」
「俺も詳しいことは知らないからそれを知る為に旅してるんだが……その風鬼って言うのは俺の祖父に当たるらしい」
「なんと!あいつ人と子をなして孫までおったのか!!」
「一応相手は妖人族--妖怪って呼ばれてた種族らしいけどな」
「ほぉ~!ではおぬしは妖怪の血族か」
「混ざりだけどな」
「ん?どういう事じゃ?」
「つまり神、妖怪、人、異世界からの民の血が入ってる」
「なんと!!たかだか20年余りでそんなにも」
「いや、かなり昔からいい関係だったらしいけどな」
「やはり魔牛鬼機が現れたことにより手を結んだか……これで無駄な争いがなくなる。風鬼は元気かの?」
「かなり昔に亡くなってるよ。俺はその風鬼の先祖還りらしいけど」
「誠かっ!」
「詳しくは知らないからそれを知る為に旅してるんだ」
「ふむ。では風鬼の子はどうした?」
「俺を生んでから死んだらしい。亡骸が俺の側にあったそうだからな……」
「そうかそうか。よく生きておったな、風鬼の孫よ!!」
「まぁ、いい人に拾って貰ったからな」
「しかし20年の月日は早いのう。あやつの孫まで見れるとは」
「20年?おっさん。風鬼とあったのはいつだ?」
『貴様!!この方に向かって』
「よいよい。確か……ワシの力が魔牛鬼機に喰われる前じゃったな」
「喰われる?おっさんは一体……」
「ワシか?ワシは雷鬼。風鬼の友にして雷神の名を冠する者だ」
は?
「雷神自体が喰われたから夜叉童子が現れたって聞いてるけど」
「喰われたのはワシの力だ。20年前にのぅ」
「待て待て。雷神が喰われたのは創設期……いまから20000年近く前だぞ?」
「ん?20000年?」
「そう、20000年」
「誠か!!」
ビリビリ
「大声だすなよ……」
「いやはや。すまぬ。しかしそんなに時が経っておったとは」
「あぁ。しかし俺もびっくりした。なんか懐かしい気配がすると思って来たら雷神に会うとはな」
それから色々と話をした
歴史がどうなっているのか
何故ここにいたのかとか
そして俺はあの狼たちから「風鬼のお孫様」と呼ばれるようになった
◇◇◇◇
「そういえばフウよ」
一応自己紹介はした
「なんだ?雷鬼のおっちゃん」
雷鬼のおっちゃんと呼ばせて貰うようになった
「嵐を操る力はないのか?」
「……ないな。さっきも話したけど夜叉童子も人間の雷を操る力と妖怪の雪を操る力を分けてもらって初めて嵐の力が使えるらしい。俺は一応風と氷の力が使えるが雷は使えなかったし使える奴がこの時代にはいない」
「…そうか……よしフウよ」
「なんだ?」
「おぬしに我が雷を操る力をすべて渡す」
『お待ちください!!』
『そうです!!あなた様は漸く神になりたての頃の力を取り戻したのです。全て風鬼様のお孫様に与えてしまってはあなた様が消えてしまいます』
なんだと?
「……あんたが消えるリスクがあるならいらない。あんたが望まぬ内に盗まれた力を取り戻したんだ。そんなことされても困る」
「よいよい。この力をまたあの頃のように風鬼と共に使えると思うと誇らしい。まぁ、おぬしは孫だがな」
『ですが……』
「よいのじゃ金牙、銀牙。ワシは長く生きた。友にも迷惑を掛けた。だが慕ってくれるおぬしらとも出会い無二の友の孫にも会えた。こんなに嬉しいことはない。それになけなしの力が友の孫の役に立つ。ならば与えるべきであろう」
『『……』』
「それにおぬしらも長くはないであろう?」
え?
「どういう事だ?」
「こやつらはワシに力を取り戻す為に無茶してのぅ。余り力が残っておらぬのじゃ。それにおぬしらの子はどうするのだ?ワシには子育てなどできぬぞ?」
「俺もしたことねーよ」
「大丈夫じゃろう?おぬしになら任せられる」
『…わかりました』
『我らに名を与えくださり……ありがとう……ございました……』
その声は凄く悲しそうで泣いてるようにも聞こえた
◇◇◇◇
「では行くぞ?」
バキッ
突然自分の額にある一本角を根元から折った
「何してんだ?」
「まぁ、見ておれ」
グサッ
「……何…しやがる…」
その折った角を俺に胸に突き刺した
「すぐにわかる」
ズズズッ
角が俺の中へと消えてゆく
「ぐっ……グガガガガガッ!!」
身体の中で力が暴れまわっている………
意識が飛びそうになる
「グガガガァァァァ!!」
自分の叫び声を聞きながら意識がなくなった
◇◇◇◇
ん?この力
まさか雷鬼か?
「雷鬼、貴様そこにいるのか?」
「フウよ。貴様とは随分な呼び方だのぅ」
「フウ?俺は風鬼--ん?なんだこの身体」
「その身体はおぬしのものであろう」
「あー、これ俺の子孫の身体か」
まさか自分の子孫の身体に取り付くとはな
「さっきから何を?」
「大きな力に呼び起こされてな。魂として還元されておったがこうして子孫の身体を借りさせてもらった」
「つまり?」
「相変わらず認識の遅い奴だ。夜叉童子と呼ばれし神、風鬼だ」
「ふ、風鬼だと?」
「あぁ、まさか子孫に魂が還元されるとは思ってなかったがな。そうだ。詳しいことを聞くためにあいつを呼ぼう」
「誰だ?」
「【来い。我、風鬼の名の元に】紅姫」
ビュゥゥゥー
お、来た来た
懐かしい紅姫の登場の仕方だ
「我が主。その力……まさか風鬼様!!」
「うむ、久しいな紅姫。やはり俺の子孫に受け継がれていたか」
「はい。風鬼様の孫、フウを主としております」
「何?この身体は孫の身体か」
「はい。そして風鬼様の先祖還りに御座います」
「なるほど、だから簡単に取り付く事ができたのか」
「そうだと思います」
「しかしどうした雷鬼よ。力が残っておらず今にも消えそうではないか」
「おぬしの孫に残りの力を全て渡したからのぅ。そろそろ消えそうじゃ」
「ふむ。俺の孫が世話になったな」
「おぬしには散々迷惑をかけたからの。罪滅ぼしではないが活かして欲しかったからのぅ」
「気にしてない。ん?この身体に宿る力。雪音か?」
「左様です。巫女音様が最後のお力を使い主に力を譲渡しました」
「つまり死んだか」
「はい」
「雪音は?」
「ご存命です。出産時に消耗した力を取り戻すべく自らを封印なさり風鬼様の血族の者のみにしか解けないようにしておられます」
「ふむ、ではこの身体の持ち主……フウだったかな?フウなら解けると?」
「はい。三代目の血族ですから」
「しかしまだまだ子供だな。もう少し成長しておると思っていたのだが」
「巫女音様は長らくご結婚なさらなかったのです。そして11年前に………」
「そうか。巫女音の最後は?」
「まだ主が赤子だった為リンクしておらずお亡くなりになったことしかわかりませんでした」
「そうか。魔牛鬼機は?」
「まだ生きてます。封印は解けておりませんが」
「そうか。巫女音でもダメだったか」
「はい、ですが主でしたらもしかすると」
「こいつはそこまで?」
「先ほど雷鬼様からのお力が馴染んだのを確認しました。雪音様から力の使い方を学べば妖霊力が解放され風鬼様の全盛期までの力を身につけられます。なにせ齢10の頃に神技【火之迦具土】を解放しましたので」
「何?火之迦具土をか?」
「はい。手加減しようとして精神へのダメージを受けましたが軽いものでした。次も同じことができるかわからないので手加減を封じましたが」
「そうか、ならば霊宝・四鬼の羽衣の解放を許可する。使用に関してはお前に一任する」
「誠ですかっ!!ではそのように」
「さて、俺も時間だ。最後に孫と話しよう」
「うむ、ワシもそろそろ消えそうじゃ」
「少し待ってろ。紅姫、孫を頼むぞ」
「御意に」
◇◇◇◇
なんだここ
真っ暗だ
雷鬼のおっちゃんに角を刺された所までは覚えてる
でもそこから先が思い出せない……
どこだよまったく
「ここは魂のみが入れる空間だ。還元されたとは言え同じ魂だからなぁ」
「誰だあんた」
「俺は風鬼」
「どっかで聞いた名だな」
「一応貴様の祖父だ」
「祖父?マジかい!!」
「マジ?あーうんマジマジ」
「その言い方は嘘くせーよ」
「フン。気にするな。それと紅姫から聞いたが貴様は火之迦具土を解放したらしいな」
「あぁ。紅姫からは手加減は危険だからするなって禁止されてる。それにルーツをしれって」
「だから雪音を解放するのか?」
「あんたがいた時代から20000年たってるからな。ルーツを知るにはそれしかなさそうだしな」
「ふむ。紅姫に霊宝・四鬼の羽衣の解放を許可した。いつ使うかは紅姫が決めるが使いこなせることを祈っておくぞ」
「それって一体なんなんだ?」
「かつて魔牛鬼機を封じた力だ」
「それってかなりすごいよな」
「あぁ。俺が使いこなせたんだ。俺が見初めた女との間にできた娘の子の貴様ならできるであろう」
「まぁやるだけやるさ」
「フン。やってみろ。俺はまた戻る」
「どこに?」
「貴様の魂にだ。対話の為にここに来ただけだからな」
「そうか、じゃあな」
「うむ」
◇◇◇
目を開くと雷鬼のおっちゃんと紅姫がいた
ん?紅姫?
「なんでここに紅姫が?」
「風鬼様のみが使える特殊な詠唱で呼び出して頂いた」
「そうか」
「……フウよ。雷の力は……己を雷と化すことを目的として使うとよいぞ………」
「雷鬼のおっちゃん……消えそうじゃないか」
「………気にするな……さて……金牙と銀牙の子をおぬしに託す」
『風鬼のお孫様…我らが子を頼みます』
『ぜひ、その子に名を』
託された子狼は目は金色で体は黒っぽい銀色
「クロカミ……黒に牙で黒牙だ」
『良き名をありがとうございます』
『その子を頼みます』
「自信を持って任せろとは言えないが誇りあるお前らの子として育てるよ」
『『ありがとうございます』』
「……おぬしにちゃんと……雷の力の……扱い方を教えたかったが……それも叶わぬようだ……頑張れよ……フウ……風鬼の……孫よ……」
『『「雷鬼(様)のおっちゃん!!」』』
雷鬼のおっちゃんはそういい消えていった
それから数分
金牙と銀牙も消えていこうとした
「よく見てろよクロカミ……お前の両親の最後だ。その目に焼き付けておけよ……」
クゥゥゥン
両親にすり寄るクロカミ
それを愛おしそうに……離れたくなさそうに見つめ消えていった二匹……
クゥゥゥ~ン…………クォォォン!!
消えた両親に宣言するように……逞しく遠吠えをする姿に少しだけ……あの二匹の姿が見えた気がした
◇◇◇
「行くぞクロカミ」
クゥゥゥン
「我が主、風鬼様からお話は?」
「聞いた。しばらくは霊宝・四鬼の羽衣は使わない」
「何故?」
「ルーツを知ってからにするさ」
「そうなさるのであればいいでしょう。では我はここで」
「あぁ」
さて、雷鬼のおっちゃんの分も魔牛鬼機をぶっ飛ばす
その前にあの山を登らねーとな
補足説明
クロカミの名前の考え方は牙は噛む為に使うからカミ
体の色が黒の強い黒銀だからクロ
だから黒牙のクロカミです
親の名前にも色と牙がついているからそれに習った感じだと思ってください