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03 我神技用イテ隊長倒ス

この話からメリッサとはちょっとお別れ

「ねぇ、フウ?フウってば!」

うるせーな………

「……なんだよ」

「あのしんぎ?ってやつ教えてよ!!あれ魔牛鬼機を倒したやつでしょ?」

「「「「!!!」」」」

あ、こいつ爆弾落としやがった

「どういうことだね!?」

「あれを身につければ魔牛鬼機に対抗できるのか!?」

「教えなさい!!いや、ぜひ教えてください!!」

はい、うるさくなりました

当事者のメリッサはおろおろしてるし

こういう時は………


逃げるが勝ち……ってな


「ふっ!」

「「「「あ……」」」」

俺は城の屋根まで飛んだ

風の魔導があれば簡単なことだな

「「「「降りてこーい!!」」」」

「はぁー……」

「「「「溜め息つくなー!!」」」」

心技は多分あいつらと契約してなくちゃ出来ないんだろう

ま、正直に言うつもりはない

「これくらいできなきゃあれはつかえない」

すごい棒読みだった気がするが気にしたら負けだな

ざわざわ……

「フウ!!」

げっ!!こいつ登ってこれたのか

「「「「め、メリッサ様~!!」」」」

そこもハモるのかよ……

「わたし出来たよ。教えてくれるよね?」

「よっ…と」

教えるつもりはないから下に降りて逃げる

「フウ!!待ちなさい!!………わたし高い所ダメなの……下ろして~!!」

「「「「メリッサ様~!!」」」」

あいつ高い所ダメくせに登ったのか!?

アホだろ

ガシッ

腕掴まれた

見るとヤマト皇帝だった

「ヤマト皇帝?」

「すまない。助けてやってくれないか?」

「……登れたのに?」

「まぁ、登れるけど降りれない……ということだってある。すまぬが助けてやってくれ」

「わかりましたよ」

ざわざわ

「きゃぁぁ!!」

「「「「メリッサ様ー!!」」」」

あいつらなんもできねーのかよ

「ふっ!」

ガシッ

「え?」

「よっ…と」

メリッサを抱き抱える。所謂お姫様抱っこだ

「フウ?」

「……ほら降りろ」

「……うん」

「「「「ほぉ~」」」」

「情けないやつらだな、お主等」

「「「「皇帝陛下!!」」」」

「お父様」

「メリッサ、出来ぬならするな。それを行うことで心配する者達がおることを覚えなさい。フウだってお前を心配して助けてくれたのだから」

「そうなの?フウ?」

「……。……まぁ、恩人だしな。恩はこれで返したさ」

「恩人?」

「……気にするな」

「でも、心配してくれたんだよね?」

「……」

「違うの?」

「メリッサ、恥ずかしがってるのだ、言わせてはいけないないよ?」

「お父様……。そっか、ありがとう」

「気にするな」

ウルウル

はぁ?

バッ!

「フ~ウ~っ!!」

「うぉ!!きったね!!鼻水つけるな!!」

「フ~ヴゥゥ~」

「離れろ!!」

「フウ。そう言ってやるな」

「なら変わりますか?」

「いや…遠慮しておこう」

「実の親がいやがるなよ!!」


それから約10分間

俺はメリッサに抱きしめられ鼻水塗れになった


◇◇◇

それからことある毎に

「フウ、しんぎ教えて」

「フ~ウ~、しんぎ~」

「しんぎ!!しんぎ!!しんぎ!!」

と、言ってくる始末



「うるさいわ!!教えれるなら教えてるわ!!」

「!!」

ビクッ!

「はぁ~はぁ~。……心技は俺以外使えないし教える事もない」

「そんなぁ~」

「大体お前は剣術使えないだろ」

「そうだけど……ねぇ?フウはなんで剣術使えるの?」

「……傭兵時代に習った」


俺は元傭兵。奴隷として売られるまでの3年間傭兵として生きてきた

物心つく頃には傭兵団【朱十字傭兵団】という今は壊滅した傭兵団に在籍していた

俺の剣術の師匠とも言える団長が死んで副団長が後任となったがそいつが本当にクソ野郎だった

俺を拾ったのもそいつとその女房だった女だ

まぁ、その女もクソだったけどな

団長は俺に剣術を指南してくれたし魔法兵団という部隊の隊長だった爺さんも俺に魔導を教えてくれた

団長は俺を次期団長にするつもりだったらしい

だがそれをよしとしなかったのがそのクソ野郎だった

よく「副団長であるこの俺が朱十字傭兵団の団長になるのだ。なのに何故クソガキが後任なのだ!!」って当たり散らしてたが力量で俺に負けていた

今思えば俺は夜叉童子のクォーター

そりゃあ幼子(おさなご)だった俺でも勝てるよな

しかも団長や爺さんともほぼ互角だった

そんな俺に勝てないやつが率いる傭兵団なんざ生き残っていけないだろう


そんなある日あいつはやりやがった

団長や爺さんなど俺に比較的良心的な人間を敵地へと送り込みフレンドリーファイアを起こして殺害した

いや、あれはフレンドリーファイアじゃない

一方的な虐殺だ

偶然俺もいたが良心的なみんなが俺を生かしてくれた

その後命からがら逃げた先で良心的になりかけていた奴らに「こいつは忌み子だ!!だから団長が死んだのだ!!よってこいつを奴隷として売り、そして売れた金で団長達の弔いだ!!」

そう触れまわった

その発言は次第に大きくなり遂に俺の傭兵団での居場所がなくなった


そして奴隷として売られた…………

それから二年。奴隷として。剣闘士として見世物となり今に至る


「そうなんだ。フウに剣術を教えてくれた人は?」

「………死んだよ、俺の目の前で」

「……え?」

「だから死んだんだよ。いや殺されたんだ。信じていた奴に」

「……フウは…」

「あ?」

「…フウは…恨んでる?その…剣術の師匠を殺した人を」

「……恨んでないって言ったら嘘になるし、正直に言うとぶち殺してやりたい。裏切ったことを後悔させて団長の墓の前で懺悔させてから原型がなくなるほど切り刻んで殺してやりたい!!……でもそんなこと……あの人達が望んでいる筈ない……」

「……かっかっかっ!!よくわかったな少年(・・)!!いや、今はフウと呼ばれておるのだったな?」

!! 

俺を少年と呼ぶのはあの人しかいない

でもあの人は…

「久しいな少年!!二年ぶりくらいか?」

見ると40代を超えた短い金髪に無精髭を蓄えた筋骨隆々の男がいた

「……団…長…?」

「よせよせ。今は団長ではない。ヤマト皇帝直属の剣士部隊の隊長だ。呼ぶなら隊長とよべ?」

嘘……だろ?…なんで?

「セルワ隊長!!」

「おう!メリッサ様!!お気に入りの奴隷くんを見に来てみればまさかの俺の弟子とそっくりだったのでな!!つい声をかけさせてもらったぜ?」

「な……んで……あの時……死んで…」

「かっかっかっ!!不屈の剣士セルワ様があのバカ(・・・・)供の企みに気付かない筈ないだろう」

「…………だろ」

「ん?どうした少年?」

「心配しただろ!!このクソ親父(じじぃ)!!」

気づけば俺は泣いていた

そして飛びかかってた

……傭兵団の流儀付きで

「っおわ!!ばっ!!バカっ!!辞めろ!!素手と木刀じゃ割に合わないだろ!!」

「……くっ!…うぅっ!」

「……心配かけたな」

「……オヤジ~っ!」

だきっ!

「かっかっかっ!!相変わらず泣き虫小僧だな、少年。もう父さんとは呼んでくれんのか?」

「……」

ドスッ!ドスッ!!ドスッ!!!

「ぐっ!がっ!!いてっ!!!無言で殴るな!!」

「ふふふっ。親子みたい」

「メリッサ様?わ、笑ってないで--いたっ!辞めろ少年!!」

「ふぉふぉふぉ、相変わらず仲がいいのぅ。義理の親子は。のぅ、小童」

「…まさか」

「久しぶりじゃのぅ、小童」

俺を小童って呼ぶのは一人しかいない

「……た」

「ん?なんじゃ小童。最近耳が遠くてのぅ」

「出たーっ!幽霊!!悪霊!!」

「誰が魑魅魍魎の類じゃ!!百鬼夜行に落とすぞ!小童め!!」

「……本当に生きてるのか?」

「当然じゃ、小童。この通りピンピン--」

ゴキッ

「あ、イテテ。最近腰が痛くて適わん」

「爺ちゃーん!!」

「これ、小童!!飛び交ってくるでない!腰が」

だきっ!

「イダダダッ!」

「爺ちゃん……爺ちゃん」

「ふぉふぉふぉ。泣き虫な小童じゃ」

そういいながらも俺を不器用ながら撫でるその手つきは懐かしくも恥ずかしい

そんな…

祖父のような感じがした

「この扱いの差はなんだ?」


団長もとい隊長の虚しい呟きが響いた


◇◇◇

「なんで生きてんの?爺ちゃんは兎も角」

「酷い言いぐさだな少年。なぜこんな老いぼれゲンドーが心配されるんだ」

「やかましいわ鼻たれ小僧!!」

「なんだと老いぼれ爺!!」

「やめろよ二人とも。理由ならちゃんとある」

「なんだ?」

「あのとき隊長(笑)は胸を刺されてた。なのに生きてるのが不思議だ」

「なぜか隊長と呼ばれたのに蔑まれた気がする」

「それもそうじゃろう。小童がまだ6つの時に魔造鬼機の蔓延る巣に放り込んだからじゃろう」

魔造鬼機とは魔牛鬼機がアース人の負の象徴たる産物--魔物をコピーし作りあげた魔導生命体(マギ・ホムンクルス)のことである

「ありゃあ必要な事だしな」

「俺は忘れてないぞ。三日三晩放置して助けに来たと思ったら「すまん。忘れてた」だぞ?恨むなって方が無理」

「それを言うならゲンドーだって」

「爺ちゃんは付きっきりで面倒みてくれたぞ?」

「……」

「お主の負けじゃな小僧」

「う、うるせー!!」

「でもなんで?」

「ありゃあゲンドーの幻視魔導だ。油断させておいて全て一掃するつもりだった。お前は子供だったからな。仮にも家族同然の奴らを殺させるのは気が引けてな」

「あいつらは家族なんかじゃない!!」

「わかっておるわ小童。じゃがあのときは確信が持てんかった。じゃからあの作戦を使ったのじゃ。しかし小童を早々に奴隷として売るとは思わなくてのぅ。探すのに手間取ったわい」

「……そうか……」

「あ、少年。ちょっとついてこい」


◇◇◇

隊長の連れて来られたのは騎士修練所

「隊長?ここになんの」

用がある?と聞こうとしたとき

「「「「隊長ー!!」」」」

「おぉ、みんな。少年連れて来たぜ?」

「おぉ、坊主!!」

「元気だったか?坊主」

「坊主!!坊主じゃねーか!!」

「久しぶりだな!!」

ざわざわ

そこにいたのはあの時死んだと思ってた傭兵団の面子だった

「……」

「どうした?」

「なんだ?嬉しくて言葉がでないか?」

にやにや

「それもそうか」

ゲラゲラ

ざわざわ

ブチッ……

「お前ら全員叩き潰す!!」

俺は木刀を抜き飛びかかる

「「ぎゃぁぁあ!坊主がキレた!!」」

「に、逃げろ!!」

「止めてくれ!!」

ドタドタ!!

「待てぇぇやぁぁゴラァァァ!」

あの時と変わらないやり取り

一つ違うのはマジ(もん)の武器ではなく木刀って所か



「かっかっかっ!!元気がいいな」

「全くじゃ。ふぉふぉふぉ」

「あの~」

「あ、おっといけねー、すまねぇメリッサ様。おいテメーら!!メリッサ様の登場だ!!集合!!」

「「「「「応!!」」」」」

隊長の号令で全員整列する

「……って少年。なぜお前も並ぶ?」

「あ、つい」

ゲラゲラ!!

「相変わらずだな~」

「それでこそ我らが坊主だぜ!!」

「テメーらのものになったつもりはねーよ!!」

「そうだ、少年の持ち主はメリッサ様だ」

「隊長、さすがにもの扱いは--」

「お、おい。あれ……」

「まさか……」

「いやいや、違うだろ……」

「間違いねーよ」

ざわざわ

「そう……少年はあの後奴隷として売られた……らしい」

「らしいってどういうことだよ隊長」

「それは少年に説明してもらう。つー訳だ。よろしく少年」

「よろしくじゃねーよクソ親父(じじぃ)。まぁいいや、どっから聞きたい?」


◇◇◇◇

それから1時間程、俺の過去話に花が咲いた

まぁ……花は咲いたんだが…………

「グスッ。あんまりじゃねーかよ……!!」

「酷い……酷すぎるぜ………」

「……酷いのはお前らの顔だ……」

「「「「うるせ~!!」」」」

「はぁ~」

メリッサも泣いてる………

あーぁ、鼻水……

ちゃんとふけよな……

「ほれ、メリッサ。ちゃんと鼻拭け」

「ありがどう……ズズッ」



「少年……そんな話になってたとはな……知らなかった……すまん」

「別に気にしてない」

「そういえばお前剣闘士もしてたんだよな?」

「そうだ」

「で、ここの騎士にも勝ったんだよな?」

「そうだが?」

「そうか………よし、少年」

「なんだ?」

「やらないか?」

は?


◇◇◇◇

「やらないか?」

ざわっ……

「隊長……」

「引くわ~」

「子供相手に………」

「見損なったわ~」

「強い相手をみたらやりたくなるだろ?」

「いくらモテないからって」

「は?」

「「「「は?」」」」

「ふぉふぉふぉ、なにか壮大な勘違いが起きてるようじゃな。小僧、お主はどういう意味で言ったのだ?」

「ん?試合しようって意味で」

「「「「え?」」」」

「え?」

「ならお主らはどういう意味でとらえた?」

「俺は隊長が男色に目覚めたと」

「俺も」

「俺もだな」

「俺は男色に目覚めて小さい男に発情するようになったかと」

「付き合い改めた方がいいかなって」

「んな訳あるか!!」

「俺は信じてたぜ?」

「なら少年、せめて目を合わせろ」

だから俺は目を見て

「オレハシンジテタゼ?」

言った。棒読みだったけど

「思ってないだろ!!」

ゲラゲラ!!

「ま、いいや。どうする?やるか?」

「尻は貸さんぞ?」

「いらんわ!!」

「え?嫌だぜ?おっさんの尻とか」

「だぁ~かぁ~らぁ、違うって言ってんだろ!!」

「まぁ、いいぜ?試合ならやる。だが男色行為は--」

「しねーよ!!」

「試合を?」

「男色行為だ!!」

「じゃあ早速するか………試合……だよな?」

「しつこいぞ!!」

「じゃあ爺ちゃん、審判よろしく」

「任せるがよい」

「あの」

「メリッサ、話は後だ」



◇◇◇◇

「ルールは傭兵時代のでいいな?」

「あぁ」

「では準備を」

俺は木刀を抜く

「おい、木刀って……ふざけてるのか?」

「まぁ見てろって」

そういい俺は呼び出す

「【我は呼ぶ そなたの名を 来たれ我が手に 拠り所を用いて 来たれ そなたの名は】紅姫」

木刀に風が纏い花びらが舞う

「ほぅ、それがお前の」

「あぁ、そうだ」

「なら俺も使うか」

何?

「【さぁ、来たれ 我は欲する お前の力】妖刀・式舞」

ゴゴゴッ

隊長が手にしてるのは紫色に禍々しく光る妖刀

「さぁ、死合おうか」

隊長が獰猛に嗤う

「初め!!」

爺ちゃんの開始の合図

「絶技!!【夜刀】」

ザンッ

「くっ!」

カンッ!カンッ!ガンっ!!

マジで殺しに掛かってきた

……あの頃と変わらない……

なら俺も………

死合うだけ……

「心技解放!!【咲き散れ】仇桜紅姫」

刀身の光が一層輝く

「っち!!やるな?」

「ふっ!」

ガンッ!ザンッ!!

ゾワッ!!

なんかヤバい……

「絶技【焦天・火層】」

ドドドガガーンッ!

赤黒い炎が俺を飲む

「少年!!そんなものなのかっ!」

ボァァァッ!

「まだまだ。絶技【焦天・火層】」

ボァァァッ!

強い……



だがっ!!

「心技解放!!【咲き誇れ】百花繚乱!!」

刀身の光が舞い花びらに、花びらが刀身になる

ズバババッ!!

炎をかき消す!!

バッ!

俺は隊長に距離を詰める

「もう一度!!心技解放!!【咲き誇れ】百花繚乱」

ズバババッ!!

「がっ!!」

「オラッ!」

ガンッ!

「食らえ……これが俺の大技だ……。絶技・奥義【秘伝・焦火裂漕】!!」

炎が舞い巨大な大太刀となる

ゴゴゴッ!!

「受けてみろぉぉぉ!!」

炎が周りを包む

逃げ場はない

だが!!

俺はその大太刀に切りかかる

百花繚乱がいくら消せるとしてもこれだけの規模の技には多分受けきれない

たが少しでも削る!!

「うおぉぉ!」

ガンッ!ガンッ!ザンッ!!

熱い!!

でも負けない!!

「うおぉぉ!」

早く!!もっと早く!!

守りなんざ必要ない

そんなの捨てる!!

早く!!早く!!今までのスピードを………

超える!!

己を刀にして!!

《解放条件を満たしました》

『我が主よ。この力を……』

「っ!!」

紅姫から今まで以上の力が溢れる!!

「神技・火之迦具土【刹那は即ち悠久 悠久は即ち刹那 この時をもって全てを薙祓わん】刹那 十束剣(とつかのつるぎ) 『イツノオハバリ』」

紅姫の光が漆黒になる

ふっ…と刀を一振り

そう一振りした

ズバァァァン!!

漆黒の光が全てを飲み消し去る

「ぐわっ!」

地面が抉れ隊長が倒れる

「隊長……」

「そこまで!!大丈夫か小僧!!」

「………かっかっかっ……負けたか……」

「……呆気なくな」

「…言ってくれるな……」

隊長は無事らしい

あれは加減できるかわから--

っ!!

ガクッ!!

ヤバい………体に力が………

バダッ


「小童!!」

「フウ!!」

「「「「坊主!!」」」」

「……少年…!!」



意識が遠のいた

これはあの時以来だ………


◇◇◇◇◇

「……我が主よ。あの時何故己を取り戻した」

「……どういう意味だ?」

「あの神技は自身の持つスピードを超え防御を捨てる。そして己を捨てさる事で発動条件を満たす。我が主は己を刀と化すと言うイメージで己を捨て去った……筈だった。なのに殺すまいと加減しようとした。そうすることで己を取り戻し事実上加減は出来たがその分我が主自身にダメージが入った。肉体にも精神にもな」

「……それでまたここへ?」

「うむ。ここは主自身の精神にダメージが入った時に修復するための空間。一時の間精神を肉体から切り離し修復する。今回は浅かったから良かったものの酷ければ修復不可能だったかも知れぬ」

「だから白雨はいないんだな」

「そうじゃ。あの時は初めて心技を使った為に精神的ダメージが入ったが今回は己を捨て去った後に無理やり取り戻した。それが原因」

「……そうだったのか……」

「我が主よ。我々の力(心技)は己の心を使うもの。だが神技は違う。字が関する通り神の御技だ。人の身で行うには幾分に過剰な力だ。あれを使うのであれば己を捨て去れ!!………でなければ死ぬぞ?」

「死ぬのはゴメンだ」

「ならば己のルーツを知るのも手だ」

「……己を捨て去る事とルーツを知る事とどういう関係が?」

「己自身のルーツを知る事が出来れば己の捨て去る部分も見えてくるだろう。我が主は捨てるものが無さ過ぎる。何せ己自身のルーツを知らぬからな」

「……ルーツを知ると?」

「捨てるものも出てくる。何せ今は拾った者達への憎悪がないであろう?」

「そんなものあるに--」

あれ?あいつらがしたことに霧が架かってる………

思い出せないってことはない

でも今まで感じてた憎悪とかそういうのがなくなってる

「己自身を捨てるとはそういう事だ。憎悪も歓喜も……記憶も感情も全てを捨てる事なのだ」

「だからルーツを知れ……と」

「うむ。そしてそんな我が主にヒントだ」

「なんだ?」

「我が主の祖母…雪音様の所在だ」

「つまり創設期からずっと生きてると?」

俺はとてもよぼよぼなおばちゃんを想像してしまった

「そうだ。だがずっと生きてる訳ではない。巫女音様がお生まれになって弱くなってしまったお力を回復なさる為冷凍睡眠に入ったのだ。今はヤマト富士見山(フジミヤマ)と言う所におる。合いに行くと良いのではないか?」

「そうだな」

「さて、そろそろ時間だ」

「あぁ」

「あ、我が主の力が強まった影響で白雨を我を顕現してる間にも顕現させる事ができるようになったぞ。そして木々、もしくは魔力が宿りし武器なら我も顕現できるようになった」

「そうなのか?」

「うむ。だがまだまだ足らぬな。白雨は拠り所を用いる事はないが我の場合は強すぎるので拠り所でワンクッションおく必要がある」

「なるほどね」

「ではな。我が主よ」

「あぁ」


◇◇◇


「…ウ!!フウ!!」

「メリッサ様、落ち着いてくだされ」

「で、でもフウが!!」

「小童、起きておるであろう?」

「え?」

「あぁ、ちょうど今な」

「フウ!!」

「ちょっと待て!!」

「え?」

「………泣くなよ?泣くならよるなよ?」

「なんで?」

「鼻水つけられたくないからだ!!」

ウルウル

「……鼻水さえ付けなければいい………」

だきっ!

「フ~ウ~……」

「はいはい」


◇◇◇

それから色々な話を聞いた

最初にぶっ倒れた時は1日程度だったにも関わらず今回は3日だった為全員心配したとのこと

1日目は「まぁすぐ目を覚ますだろう」と思ってた

2日目は「長いな。もしかして?」と思ってた

3日目は「そろそろヤバいだろ?」と焦って来たところに目が覚めたらしい


そんなこんながあったが無事を祝ってもらったりメリッサの妹に懐かれたりもした

その話はまだいつか

それから数日

◇◇◇

「フウよ。なんのようだね?」

「……近々俺はここを出て行く」

「何故だ?」

俺はヤマト皇帝の執務室に来ていた

「自分の出世が気になるからだ」

「そうか……しかしメリッサはどうするのだ?」

「連れては行かない。これは俺自身の事だ」

「ふむ……」

「まぁ、今は行かないけどな」

「どれくらいいる予定だ?」

「今日から早くて1ヶ月。長くても一年くらいの間を予定している」

「何故?」

「そりゃあ元傭兵団(うちの)連中の仕事ぶりが見たいから」

「そうか。そういえばそなた達は傭兵団出身であったな」

「つー訳で出て行く時は一声かける」

「あい、わかった」




その会話が行われてからちょうど1年になるころ

俺はヤマトの首都--ミズホ市を出てヤマト富士見山があるイズモ市へ行くことになった


◇◇◇

12月10日

今日俺は旅に出る


「少年。準備は良いか?」

「気をつけるのじゃぞ小童?」

「あぁ、二人とも元気でな」

「おうとも」

「心配するでない」


意気揚々

そう、旅だとうとした時

「フウ!!」

「メリッサ?」

メリッサとヤマト皇帝が姿を見せた

今は早朝5時過ぎ

起きるには早いだろう

俺は傭兵団時代の名残で大体この時間に目が覚めるのだが………

「フウ!!旅に出るって本当?」

「あぁ」

俺の服装は普通の服に七分丈のズボン

軽装備の胸当てと手甲

そして足には脛当てをしてそれを黒茶色の外飽を着ている

「ならわたしも」

「ダメだ」

「なんで!?」

連れて行く訳ないだろ?

「お前は皇族だぞ?ダメだ」

「うぅ……ううぅっ」

「それに泣き虫だしな」

「っ!!」

ゴシゴシ

「もう泣かない。泣かないから」

「ダメだ」

「……」

「……それにいつか戻ってくるつもりだ。なのに知り合いがおじさんばっかりなのは辛い」

「「「おい!!」」」

うん、無視無視

「って訳でな。待っててくれると嬉しい」

「………本当?」

「あぁ」

少ししてから

「……わかった」

「そうか。わかって--っ!!」

バッ!

いきなり抱きつかれそして

「……んっ」

「っ!!」

唇を奪われた

「ほほぅ」

「なんと」

「!!!!!!」

上から順に

隊長

爺ちゃん

ヤマト皇帝

「……わたしの初めてをあげたんだよ?絶対戻ってきてね?」

「……」

「戻ってきてね!?」

「……おぉう」

フリーズしてた

「あ、お礼ではないがこれをやる」

それは木刀

今や俺の愛用品だ

「それって……」

「あぁ、お前に渡す。俺が帰って来るって証だ」

「……うん。わかった。待ってるね」

「あぁ」

「少年!!これをやる」

渡されたのは全長50センチの小刀

抜いてみると片刃で反り返ってる

刀身に沿って空洞がありこれで負荷を減らし切れ味を促進するようだ

しかも風の魔導との相性もいい

「それをくれてやる。頑張ってこい!!」

「……ありがとう」

「儂からはこれじゃ、ほれ」

外飽に魔法が付与され黒い焦げ茶色のコートになる

「これは?」

「防御力と隠蔽する力を付与した。これで旅も楽になるだろう」

「……ありがとう」

「フウ。わたしからは何もあげれないけど応援するよ」

「あぁ、ありがとう」

「フウ……」

「ヤマト皇帝……っ!!」

いきなり剣で切りかかるヤマト皇帝

「あぶねっ!!」

「戻ってきたら切る。戻ってこなければ叩き斬る!!」

「ちょ!!あぶない!!しかも結局斬られるのかよ!!」

俺は風の魔導を発動し浮かびあがる

「フウ!!わたし12月29日が誕生日なの!!連絡してね!」

「あぁ、できたらな。あ、俺は誕生日プレゼントとかいらねーぞ?」

「なんで?」

「なんせ今日がその日だし、さっきもらったからな!!」

「~~~~!」

うわーお。顔真っ赤だな

うしっ逃げよう

ヤマト皇帝の顔が怖いしな

「またな!!みんな!!」

補足説明

ヤマト富士見山はようするに富士山です

ただエルダーワールドと混ざってしまった為標高はエベレストと同じくらいです

あと団長もといセルワ隊長の墓はありません

主人公も「多分あるだろう」って思って墓の前発言をしてます


次回は新キャラを出します

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