第八幕 目覚めと理由
八幕目です。
精霊出しました。
・・・あたたかい。
なぜかわからないけどとても心地が良い。
ゆっくりと目を開けると暖かな日の光が木々の隙間から差し込み、そよ風が頬を撫でる。
体を起こすと青々しい草原に寝かされていて、左には透き通るような大きい湖が広がっていた。
「ここは、一体・・・?」
身体がところどころ痛むが、まずは喉を潤そうと立ち上がり、近くにしゃがみこんで覗くと固まった。
今までくすんでいた黒い髪は、肩まで伸びた綺麗な銀色になっており、目も左目はルビーのように紅く染まり、の右目には空を思わせるようなスカイブルーの不思議な模様が描いてある石が埋め込まれていた。身体のあちこちに包帯がしっかり巻かれ、服も綺麗な物に変えてあった。
自分の余りの変わりように、ヒカゲは混乱し過ぎてなにが何だかわからなくなり、呆然としていると、後ろから声が聞こえてきた。
「だから、分かってるっつってんだろ。しつこいな」
振り返るとそこにいたのはひとりの青年が立っていた。深緑を思わせる短髪、エメラルドの目に紫のネック付きショートコート、白のズボンと黒のブーツを履いていて、周りにはヒカゲが落ちる前に見た丸い光と似たような、色とりどりの光が浮いていた。
男はヒカゲが起きていることに気づくと近寄り、目線わ合わせるようにしゃがみこんだ。
「よう、身体はいいのか?」
ヒカゲは男の問いに首をかしげた。
「おいおい忘れたのか?テメェが一回死んだこと」
ヒカゲは目を見開き、思い出した。自分が罠に嵌められ、緑の丸い光に出して貰って、最期に〈あいつら〉に右目を潰され、殺されたことを。
「俺は精霊族のフィロスだ。ちなみにお前を逃したあの緑の光も俺だ。」
「あ、声が同じだ・・・」
「で、テメエは最期の最期に願った。“旅をして、家族を見つけたい”ってな。」
そうだ、確かに言った。本当はあのとき、自分はもう疲れていて、あの休まる日がない所から逃げ出したかった。だから自分を受け入れて信じてくれる家族を、暖かなぬくもりが欲しかった。
「俺はテメェが“復讐したい”と言うかと思った。逃したときは言わなかっただけで、死ぬとき位は本音を話すと思っていた。言ったなら俺は見捨てるつもりだった。だが実際、お前の目は澄んでいた。しっかりと前を向いて、裏切られて死にそうな時も、前へと進もうとしていて、最期の心からの願いを本気で願った」
「だから俺はお前の右目にその石をはめて助けた」
「これはなんなんだ?どうして俺の姿が変わっている?」
「その話は少し待て。俺がお前を助けた理由はもう一つある」
「もう一つ?」
すると色々な色の丸い球がたくさん日影の周りに集まってきた。
「これは・・・」
「コイツらは妖精。この森にいる植物たちに宿る妖精だ。コイツらが俺に頼んできた」
「どうして、俺なんかを・・・」
すると一つの赤い光の球がヒカゲの前に出てきて、小さい一人の羽が生えた女の子の姿に変わった。
「初めまして、私はオモベルフォと地上を繋ぐ森に住む生命の一人です」
その妖精は少しずつ話していった。
「私たちはあなたがこの世界に来てからずっとあなたを見ていました」
「しかし、あなたには私たちの姿は見えなかった」
「それでも私たちはあなたを見ていました」
「だから悲しかった。あなたが私たちを見えないことよりも、あなたが何もしていないのに傷つけられていくことがとても悲しかったし、怒った」
「けれど私たちの姿は悲しいことにこの世界に馴染めていないあの人たちにはまだ見えなかった。それに人間族に見つかったら小さい私たちは逃げるのが精一杯」
「何の力もない私たちにはなにもできなかったし、悔しかった」
「だから彼に頼んだ」
「彼の封印は時間が経っていて、弱くなっていた。あと、その封印を解くには強く、自分勝手な願いをしない綺麗な心を持つものの願いだけ。そのことを持ちかけて、彼の力の一部を飛ばして、呼んでもらった」
「だけどあなたはここに来る前に死んでしまった」
「だから石の力と私たちの力と彼の力を分けてあげた」
「そしたら姿が変わっちゃった」
「ごめんなさい」
妖精は泣きそうな顔で頭を下げた。ヒカゲは女の子に手を伸ばし、人差し指で頭を撫でた。
「顔を上げてくれ。それと助けてくれてありがとう。別に姿が変わっても俺は気にしない。だから泣かないでくれ」
ヒカゲがちょっと困ったように笑うと妖精は少し顔を赤くしながらヒカゲに抱きついた。それを見ていた他の妖精達もズルイとばかりヒカゲ飛び込んでいった。
結果、小さい妖精でも数を増やせば当然重くなり、まだ完全に傷が癒えていないヒカゲは倒れ、それを見ていたフィロスはため息をつきながら止めに入った。
夜に更新できなくて、すみません。
次回はフィロスのことをかきたいです。