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第六十七幕 もう一つの依頼

「ヒカゲ、その子は?」

下町まで行く途中アモルはヒカゲに肩車されているティナをちらりと見た。

「ああ、この子はティナ。俺の娘だ」

「ティナ?」

ティナはアモルの方を見て、にこり。アモルは無表情でジッと見つめる。

「はじめまして、ティナだよ!よろしくね」

「《愛》の聖天使エンジオン、アモル・クシア。よろしく」

ティナ瞬時にヒカゲを取られるかもしれないと感じとり、アモルをキッと見つめるが、アモルはそんな幼いティナを見て大人気ないと思いながらもフッと笑みを浮かべ、アモルはヒカゲに甘えるように手に抱きついている。ティナも負けじとヒカゲの頭にぴったりとくっつくと行った無言の戦いをヒカゲに悟られないように、行っていた。

当の本人はティナとアモル互いに身長などは似ているが、おそらくアモルのほうが何倍も年上なのだろうが、仲良しになったなと的外れなことを考えながら、まったくもって二人の無言の戦いに気がついていなかった。

二人の戦いをヒスイはつまらなそうにあくびをしてヒカゲの服の中でうつらうつらと見ていた。















「ヒカゲ!」

ヒカゲたちは中央国・ケントルメまでワープできる駅までたどり着くと、フィロスが依頼主のローハを見つけた。

ティナはフィロスを見つけて駆け寄る。

ヒカゲはくるりと振り返り、アモルの方を見る。

「アモル、ありがとう」

「もう行っちゃうの?」

アモルは悲しそうにヒカゲをみる。ヒカゲはしゃがんで、アモルの頭を撫でた。

「まだ用事があるが、一旦ここでお別れだ。しかし、まだまだこの国を全部見て回っていないからな。またここに来る」

「ほんと?」

「ああ」

「絶対だよ?」

アモルは涙を我慢しながらも最後にしっかりと抱きついたかと思うと、


ちゅっ


ヒカゲの鼻にキスをした。

突然のことに、ヒカゲは固まる。

「まだ、私も全能神様に言われてることがあるから、行っちゃうけど、絶対にまた会おうね。約束だよ」

ヒカゲは固まりながらも、フッと笑みを浮かべて、小指を絡めた。

「ああ、約束だ」

アモルはその言葉に安心したが、名残惜しそうに振り返りながらも、神殿の方へと帰って行った。

ヒカゲはアモルが見えなくなるまでそこを動かなかった。




さてととヒカゲは彼らの元へ近づく。

「ローハさん、依頼は完了した。無事に貴方のおばあさんの願いを届けることができた」

その言葉を聞いてローハはホッとしたように息を吐いた。

「よかった、あなたにこれをお渡しして本当に良かった」

ヒカゲはカバンに入っていたローハから預かった日記を手渡す。ローハはその日記を見て愛おしそうに撫でた。

「儂の父は祖母が突然消えたことにとても取り乱しておりました。そんな時この日記を見つけ

、何としても祖母の願いを叶えようと祖母の行方を探しながら天族カイラトの子を探していましたが、結局父も母もその数年後になくなりましたがね。それでも、儂は最後の父の願いを何としても叶えたかった。そして漸く叶えることができました。これでも心置きなく、あの家を手放すことができます」

「手放すのか」

「はい、あの家はもう限界なのです。儂の力で少しだけもたせていることができていますが、儂ももう歳。これ以上は難しかったのです。だから、依頼を出しました。これで祖母も父も母も喜んでくれていると思います」

ローハはとても、本当にとても嬉しそうに、お礼をいって、頭を下げた。

そうしてローハは一足先に中央国・ケントルメへと帰って行った。





「これで依頼完了だな。ケントルメに帰るか?」

しかしヒカゲは首を振る。

「もう一つだけ依頼を貰っている」

「なに?」

フィロスは目を見開いてヒカゲを見た。

ヒカゲは怪しく、可笑しそうに笑う。

「確かに依頼なのだが、俺はあの子と一緒に・・・」


ヒカゲの願いを聞いてその考えを曲げないとわかると、フィロスは頭をガジガジかきながら、仕方なさそうにため息をつき、ニヤリと笑った。

「しかたねぇな、契約者。迎えに行こうぜ、その子とやらを」

頷くヒカゲは腕の中にいるティナに話しかけた。

「ティナ」

「なあに?」

「もう一人家族が増えるぞ」

「え、ほんと!」

ティナは嬉しそうに叫ぶ。





「ああ、本当さ。その家族を迎えに今から行く」




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