第六十三幕 姉の心
お久しぶりです
約二年ほど遅くなってしまい申し訳ございませんm(_ _)m
そして、これから就職のしていくことを考え、余り簡単に更新することができませんが、これからも少しずつ更新していくことができるよう、努力してまいりますので、宜しくお願いします
依頼人の祖父を、祖母に変えました
ザシュッ‼︎
ナンシェの顔に返り血がかかった。しかし、その血は人間族のものではなかった。
ドサリッ
目の前に倒れていたのは
自分の大切な、守ると決めた妹の姿。
ただ、目の前で倒れている妹の姿は、
片方の白い羽根が切られ、
大きな血の海を広げて、背中にぱっくりと傷が出来ていて
うつ伏せに倒れていた。
ガチャンッ
ナンシェの手から弓が滑り落ちた。
身体を見れば、妹の血を浴びている自分。
『あ、ナ、ナーシャ、』
『いやああああぁぁぁぁーーーー!』
しかし、その後の記憶だけがなくなっていた。
そして何故かナンシェは自分の部屋で寝ていた。
どうやって戻ってきたか
何故ここにいるのか
妹はどうなったのか
頭の中が整理できずにいると、コンコンと自分の部屋のドアを叩く音。返事をすると顔をのぞかせるナーシャ。
『失礼します、姉様』
それは紛れもなく、大切な自分の妹・ナーシャの声。
『驚きました。姉様が正面の玄関で倒れていらっしゃったので』
そのことをきいて、あれは夢だったのかと考えた。そんなことを考えていると、ふとナーシャが自分の部屋に入ってこないことに気づく。
『どうしたの、入ってきなさい』
しかし、なかなかナーシャは入ってこない。
『ナーシャ?』
『姉様、私、』
ナーシャが戸惑いながらも、意を決したようにドアを大きく開けた。そして目を見開く。
ナーシャの羽根が片方黒くなっていることに。
黒くなっている羽根の方が、ナンシェが切ってしまった羽根であること。
それはナンシェが夢だと考えていたことが、夢では現実ではないかと思わせるものだった。
ナンシェの話にあたりはシンッとなる。
「それから、ナーシャがあの時の記憶どころか、あの人間族のこと忘れていることに気がついたわ」
ナンシェはその後のことを次の日急いで自分で調べたが、あそこにあの人間族はいなかった。痕跡すら見つけられなかった。
「あの時、何故私はあんな行動に出てしまったか自分でもわからなくなった。何度も考えたけど、それでもわからなかった。ナーシャが普段通りに私に話しかけ、慕っているところを見て、心が苦しくなっていった。いつしか、あの時のことを思い出して自分を恐れてしまうのではないか、それどころか、もしかしたら本当は本物の妹ではないんじゃないかと思うようになってしまった」
ナーシャは記憶を失っても、あの屋敷に行き続けていた。そのこともナーシャの記憶を呼び覚ますきっかけになるのではないかと恐れた。
だからこそ、ナンシェは距離をなるべくおき、冷たくした。
いつ思い出しても、妹が少ない傷で済むように。
握りしめたナンシェの手が震えている。
「わかっていた、わかっていたわよ。そんな永遠が来ないことも。いつかナーシャが記憶を取り戻してしまうも」
それでもと、ナンシェは顔を上げた。目から涙を流しながら。
「それでも、自分勝手だとわかっていても、知ってほしくなかった!こんな心を持っている私を、見てほしくなかった!」
ナンシェの悲痛な心からの叫び。
「私を希望だと言って、家族として見てくれたナーシャには、悲しんでほしくなかったの」
初めて話したナンシェの心。
初めて聞いた、ナンシェの思い。
その思いにナーシャは心が締め付けられた。
それと同時に悲しかった。
しかし、それをどうやって言葉にすればいいのかわからず、沈黙が続く。
「ナーシャ、君はもう思い出せるはずだ。姉のことも、一緒にいた人間族のことも、なぜその人と一緒にいたのかも、思い出せるはずだ」
「ですが、」
まだ、思い出すことができないナーシャ。すると、ヒカゲはポンと肩に手を置き、ナーシャの前に何かを差し出した。
そこにあったのは、ナーシャの一族に伝わる、当主が持つべきペンダント。
「どうして、」
ナーシャが戸惑っていると、ヒカゲはこういった。
「大丈夫。君の思いはきっと通じるはずだ」
『大丈夫さ。お前さんの思いはきっと通じるはずよ』
ヒカゲの後ろに誰かの影が見えた。すると、頭の中の霧が晴れていくような感覚に陥った。
あれはナーシャが、姉が家に帰らなくなり、弟とも会えず、少しでも両親と離れる時間が欲しくて、中央国・ケントルメまでいってギルド登録した後のこと。
ナーシャは初めて天界・サンクギオ以外の国に降り立ったことで興味を持った。そして外に出て、町以外を見て回ろうとしたとき、ナーシャは初めて魔物と遭遇して、どうすればいいかわからずに逃げた。魔物から逃げた後、ナーシャは羽根を枝々に引っ掛けて身動きが取れなくなってしまった。後ろに手が届かず、もがけば更に引っかかってしまい、途方に暮れていた。
すると、ガザガザと茂みが揺れた。ナーシャは動いている茂みのほうに目をやり身構えた。がさりと茂みが分かれ、出てきたのは、
『おや、お嬢さんこんなところでどうしたんだい?』
人間族のおばあさんが立っていた。
ナーシャが思い出す!