表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/78

第六十ニ幕 姉の過去

第六十ニ幕ヾ(@⌒ー⌒@)ノ



姉の語りが続きます

それからナンシェは毎日のように、妹に会いに行った。一族のだれもが、両親さえ近づくなと制止の言葉を振り切って、会いに行った。


そして、もう1つわかったことは、妹には攻撃魔法ではなく、防御魔法が高いということ。

ナンシェが気まぐれで教えた、防御魔法は攻撃魔法とは違い、とても素晴らしい魔法力だった。

それから、ナンシェは攻撃魔法を教えながら、それと同時に防御魔法を教えた。


ナンシェは妹のその素質に気がついた。気がついたからこそ、認めたくないと思いながらも、そのことに対しては認めていた。


それから間もなくして、弟が生まれた。

ナーシャは弟を見て、一緒に守ろうと言ってくれた。その姿が、かつてナーシャを見つけた私のようだったことに、喜びを感じた。


しかしそのあとすぐに、自分のことが認められ、全能神様が開催する聖天使エンジオンを決める大会に出場し、ナンシェは勝ち上がり、そしてその次の聖天使エンジオンとして選ばれた。

それを知ったナーシャは、少し寂しそうにしながらも、喜んでくれた。

それから、まだ聖天使エンジオンになるには時間がかかるため、アストゥーク家で、残り少ない時間をナーシャとルガに当てていた。


そうして、ナンシェは家に帰らなくなったため、ナーシャといる時間がなくなったが、それでも帰った時は、必ずナーシャとルガといる時間を優先した。


そんなある日、ナーシャに攻撃魔法を教え宮殿に帰ろうとした時、母と父が話しているのが聞こえた。

『それにしても、あの出来損ないは攻撃魔法が弱いくせに、防御魔法だけは特化しているとは何と悲しいことか』

『ええ、防御魔法だけなんて臆病者の特権です。これでは盾ぐらいにしかならないですよ』

『だから、弟・ルガの盾として、姉のナンシェの影武者として育てていたが、よかったよ。それなら、たまたま死んだとしても、だれも気に留めない』

『そうですね。ナンシェも聖天使エンジオンに選ばれたことですし、ルガもあの子よりずっと素晴らしい存在。次期当主としては申し分ありません』

『それに最近あの子、何処かによく出かけるので、その時にいなくなれば、面倒ごとはなくなるのですが、』

その二人の話を聞いて、ナンシェは目の前が暗くなった。




初めは、可哀相にと思った。

憐れに思って、話しかけようとした。

けれど、初めてあって、私にはないあの子の綺麗な心を見て、そんな考えが吹き飛んでしまった。そして、あの子を守りたい。私とは違い、幸せになって欲しいと思った。

だから私が家を出たら、次の当主はナーシャになるはずだったのに、両親はナーシャを元々必要としていなかった。それどころか、影武者としてしか、考えていなかった。

そのことがナンシェの心に重くのしかかった。





そんな時、ナンシェはとある人物と出会う。



『どうしたの?』

振り向くとその人物がいた。

『あなたは、✖︎✖︎✖︎』

『今日はお家に帰っているはず・・・。もしかして、妹さんのこと?』

その言葉にナンシェは目を見開き、詰め寄った。

『どうしてそれを、』

『実は見たんだ。ちょっと下に用事があって行ったんだけど、その時あなたの妹さんが人間族ヒュームと一緒にいるところを』

人間族ヒュームと、一緒に?』

そこまでなら、ナンシェ自身がナーシャの様子を見に行くだけで済んだ。しかし、その言葉だけではなかった。

『そういえば、人間族ヒュームの間では、天族カイラトは高く売れるんだって』

『何を言っている』

その人物は、両手でナンシェの顔を押さえて、真っ直ぐ目を見た。


『もしかしたら、その人間族ヒュームもあなたの妹さんを捕まえて、売り払おうとしてるのかも、ね』


その瞬間、ナンシェは飛び立った。

いつものナンシェなら、もっと情報を探って、どうなっているのか冷静に調べなければならないのに、その時のナンシェはそういったことを一切せず、何も考えずに、行動をしていた。

それが、自分の意思だったのか、今も考えることがあるが、わからない。


思えば、ここが運命の分かれ道だったと、あとにナンシェは知ることとなる。








ナンシェは家の庭でもある森にナーシャが入っていくのを確認して、後を付けていく。

すると森の奥の方まで進み、ナーシャはある場所で止まって、何やら呟くと光とともに消えた。近づくと、簡易的な転移魔法の陣が書かれている場所があった。

『なるほど、 ここから下界へと向かっていたのか』

ナンシェは転移魔法の陣の上に乗り、先ほどのナーシャが呟いた言葉を口に出すと、同じように、光とともに姿を消した。


目を開くと、薄暗い部屋にたどり着いた。

ナンシェは急いで扉を開けながらも、慎重に音を立てないように進んでいくと、居間のようなところでナーシャの姿が目に入った。ナーシャの前には人間族ヒュームらしき者と一緒にいた。


しかしその時の二人の表情がいけなかった。

そのとき、ナーシャは泣きながら両手を握りしめて、頭を下げていた。そんなナーシャを見て目の前の人間族ヒュームは、穏やかな顔をして、ナーシャを見て、ポンポンと肩を叩いていた。


はたから見れば、慰めているやら、話を聞いているなどのように見えるのだが、ナンシェには違う風に写っていた。



あの人間族ヒュームがナーシャを泣かせた。

脅されているのだろうか?

弱みを握られた?

貴女は泣くほど何をされた?

様々な考えが頭に浮かぶ。しかし、ナンシェが動いた一番の理由は、目の前でナーシャが泣いていることだった。

ナーシャの泣いている姿が、昔いじめられていた頃の幼いナーシャとかぶってしまった。

そして思い浮かんだのは、あの人物が言った言葉。


『そういえば、人間族ヒュームの間では、天族カイラトは高く売れるんだって』


何故かその言葉が頭を支配し、それが引き金となった。


もうナンシェの頭には血が上っていて、冷静ではいられず、何も考えられたかった。

ナンシェは自分の《氷結せし純粋なる弓》を取り出して、人間族ヒュームに切りかかった。

『姉様⁈』

普段ならナーシャの声に耳を傾けるはずなのに、ナンシェはナーシャを視界に入れることなく、襲いかかった。

弓矢を使おうとしたが、一刻も早くナーシャと離さなければと思い、人間族ヒュームにむかって、振り下ろした。



ザシュッ‼︎



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ