第六十幕 ナーシャの魔法
第六十幕( ´ ▽ ` )ノ
ナーシャが自分の魔法を使います
「させない、《氷柱の標的》」
ナーシャが再び思い出そうとした時、ナーシャに向かって、氷の破片が飛んで行った。
それをヒカゲが《銀月鎖》で弾く。
「そろそろいいかぁ?」
「あぁ、ありがとう。時間を稼いでくれて」
そう言ってフィロスはナーシャの後ろ側に降り立った。
飛んできた方を見ると、ナンシェが片手で、頭を押さえながら、手を向けていた。
「姉様、」
ナーシャは不安そうにナンシェを見た。しかし、ナンシェの目にはもはやヒカゲしか、写っていなかった。
それを見て、ヒカゲはナーシャの隣に立つ。
「今度はこちらを相手しなければな」
「貴方が、」
「ん?」
「貴方が余計なことをするならば、容赦はしない!」
「余計?」
ヒカゲはナンシェを睨みつけた。ナンシェはたじろぐが、それでもナンシェもまた、ヒカゲを睨みつけた。
「君は、今のナーシャの叫びを聞いて、余計だと感じるのか?」
「っ、」
ナンシェは悔しそうな、泣きそうな顔をする。
「そうよ、貴方さえいなければ、」
「そんなに、ナーシャに記憶を取り戻して欲しくないのか」
ナンシェの言葉を遮り、ヒカゲは話す。
「ナーシャが俺を助けた時からおかしかった。君は俺に目を向けることなく、ナーシャだけを連れて行った」
そう、あの時からナンシェはおかしかった。ヒカゲをあの場で攻撃することも出来たというのに、しなかった。
しかも返せや渡さないといいながら、ナーシャを大切にしている。かと思えば、ナーシャを攻撃して、怪我を負わせたり、もう一つの白い羽根を黒に染めようとしたりしていた。
さらに矛盾としては、思い出さないようにしているはずなのに、記憶を少し思い出すことをしゃべったはず。
ヒカゲは行動と言語があっていないことがわかっていた。
だからこそ、疑問に思っていた。
「君は、何をそんなに恐れている?」
ナンシェの動きが、ピタリと止まった。
「もう一度聞こう。君は何に対してそんなに怖がっている?」
「黙れ!」
ナンシェの手に、氷が集まって形をなし、氷のイメージがされている透き通るような透明の弓が現れた。
「《氷結せし純粋なる弓》!」
透明の弦をナンシェが引くと、氷の矢が現れ、ヒカゲに焦点を合わせ、弦を離した。
氷の矢が通った場所が凍っていく。
「ナーシャ」
「はい」
ヒカゲとナーシャは真っ直ぐ前を見た。
「ナーシャ、姉の気持ちを知りたいか」
「はい」
「なら、ぶつかるしかない。何度もぶつかるからこそ、見えてくることがある。お前には立派な魔法がある。自分で気づいているかわからないが、攻撃魔法だけが武器ではない」
その言葉に、ナーシャは目を閉じて、片手を前に突き出した。
「《全てを回避させる障壁》」
その途端ナーシャとヒカゲの周りを透明の球体が多い、ナンシェの攻撃を受け流し、周りに攻撃が流れていく。
フィロスはそれを見て、ティナとヒスイを守るようにして、攻撃を違う光魔法で防いでいく。
「な、」
ナンシェは驚きながらも、攻撃の手を緩めない。ナーシャは先ほど、怪我をした場所がツキリと痛んだ。すると、そっとナーシャの腕に何かが触れた。見てみるとヒカゲがナーシャの腕を支えていた。
ナーシャは目を見開いて、後ろで支えているヒカゲを見た。
「言っただろう、必要ならば、助けると」
「ヒカゲ様・・・」
「大丈夫。ダメなら、俺が一緒に支えてやる」
ナーシャはその言葉を、その強い自分を支えているヒカゲの存在にナーシャは心を奮いたたせた。
しかし、姉はそんなナーシャのことを見て、悲しそうな、そして嬉しそうな顔をしていることに気づく。
「ナーシャ、あのどれくらい持つ?」
「まだ大丈夫ですが、このままでは・・・」
「わかっている。いいか、姉は必ず攻撃を緩めることがある。しかし、それはお前を危険に晒してしまうことになる。それでも構わないか?」
「はい、私はヒカゲ様のことを信じます」
その信じる目には、光が輝いていた。
「いいか、俺の合図とともに、この魔法を解け。その瞬間、姉に向かって走り、突っ込め。その間、俺も一緒に走って攻撃を防ぐ」
「それだけですか?」
「ああ、それだけで構わない。ただし、反撃も防御もしないでくれ。君に怪我を負わせないようにするが、なるべく目の前、ナンシェの武器が手の届くところまで近づいてほしい。頼めるか」
「はい、畏まりました。ヒカゲ様」
ナーシャがわかったことを確認して、ヒカゲはナンシェを見た。矢と矢を飛ばす間隔、ナンシェが弓の弦を引く瞬間。
「今だ」
そう言うと、ナーシャは自分の防御魔法を解いて、飛んだ。ヒカゲもそれに続く。
「何をするかと思えば・・・。これでは格好の的だわ」
ナンシェはこのチャンスを逃しはしないと間隔を空けずに次々と氷の矢を放つ。
しかし、ナンシェの矢はナーシャどころか、ヒカゲにすら当たらない。
そのことにナンシェは取り乱す。
「どうして!まだ、あの防御魔法を、」
「違う」
ハッとして、前を見るとナーシャはすぐ目の前。
これは当てるしかないと、ナンシェは弓の持ち手を大きく振り上げ、目の前まで迫るナーシャに、切り掛かった。




