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第五十八幕 ナーシャの思い1

第五十八幕(≧∇≦)


ナーシャの思いとは?

ヒカゲはフィロスの元へと戻る。

「フィロス」

「まだまだいけるぜ」

「なら、もう少しだけ時間を稼ぐことはできるか?」

フィロスはヒカゲに向かってニヤリと笑う。

「誰にいってやがんだ。お前の頼みなら、了解したぜ、契約者」

「頼もしい限りだ」

そういってヒカゲはナーシャと向かい合おうとした。

そのとき、全能神たちも到着し、対峙する知らない精霊族プロセーオの男とナンシェ、そして白と黒のナンシェに似た女性に話しかけているヒカゲを見つけた。しかも、女性の白い羽根が黒くなりかけている。咄嗟に参戦しようとしたが、彼らの前にアモルが降り立った。

「《愛》」

アモルは両手を広げて、フルフルと首を振った。

「何を言っているの。目の前にいる混沌の使者を見逃せと」

「お願いします、全能神様。待ってください」

「何故だ」

「今はダメです。全能神様も見たのでしょう、《希望》がおかしいことに。もしかしたら何かあるのかもしれません。すこしだけ様子を見てください」

いつも眠たそうなアモルが余りにもしっかりと真剣に話すのを見て、全能神は腕を下ろした。

それを見たカーヌ、サロン、シルィも武器を下ろした。

その様子を見て、フィロスはヒカゲに話しかけた。

「なんだかしらねぇが、今なら大丈夫だぜ」

ヒカゲは再び前にいるナーシャに向き合った。

その言葉に今度こそ、ヒカゲはナーシャと向き合った。



「ナーシャ」

ヒカゲはもう一度、優しくナーシャの名前を言うが、ナーシャは反応しない。

「ナーシャ」

今度は力強く、名前を呼ぶとナーシャはのろのろと顔を上げた。しかし、目には光がなかった。

「ナーシャ。俺の声がわかるか」

「・・・ぁ」

ナーシャはヒカゲをとらえたらしい。

そして、俯きながらゆっくりと話し始めた。






ずっと、ずっと私は姉様が大好きだった。

今では考えられないくらい、仲が良かったと思う。

昔から、元々攻撃する魔法が弱く、父様からも母様からも、一族の者は私を出来損ないといった。

しかしそんな私を、姉様だけは、私を見てくれた。

こんな妹を持った姉様は私を見捨てていいはずなのに、手を差し伸べてくれた。

攻撃魔法が弱く、ノルマを達成するまで父様が家に入れてくれなかったときは、姉様も一緒になって私に魔法を教えながらやってくれた。

母様の厳しい教育を受けた後は、必ずこっそり自分のお菓子を分けてくれた。

落ちこぼれだった私をいじめる周りの人達を追い払ってくれた。

弟ができたときは、体が弱いから一緒に守ろうと約束した。

そのときだけは、一族のことも、自分の魔法のことも気にすることなく、時間が過ぎていった。

しかし、姉様に守られてばかりではいけない。少しでも自分で何かしなければと思った。




「私は、そんな守ってくれた姉様の背中を見て、いつか自分も強くなろうとしました。いつか、いつか自分は一人でも大丈夫ですと、言うことができるように」

「・・・」

ヒカゲは黙って聞く。

「しかし私は、姉様の話を聞いた後、断片的ですが、あの時のことを思い出したんです」



『私がこの手で殺したはずなのに』


その言葉を聞いた瞬間、思い出したのは。

体に激痛が走り、前には顔に血がつけた、姉様の姿。


ナーシャは両手を耳元に持って行き、塞いだ。

「しかし私はもう、記憶を取り戻したくありません」


ずっと好きだった。

憧れていた。

いつか自分はもう大丈夫だと言うはずだった相手、ナンシェ。

しかし、薄っすらとした記憶の中にいるその姉様の姿を見たナーシャは、これ以上、思い出すことを、考えることを放棄した。


「思い出さなければ、幸せだったのかもしれません」


全てを塞ぎこんで、忘れようとするナーシャを見て、ヒカゲは


パシンッ


ナーシャの頬を叩いた。

ナーシャは信じられないような顔で、ヒカゲを見る。

ヒカゲは今までにないくらい、真剣な表情で、ナーシャをとらえていた。






「ふざけるな」







その一言により、その場はヒカゲによって支配された。


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