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第五十七幕 到着

第五十七幕( ^ω^ )


ヒカゲたちがナーシャのところにたどり着きます

宮殿に近づいていくにつれ、夕日が沈んでいく。宮殿は、なにやらよからぬ雰囲気というわけではなく、先ほどよりも静か過ぎるほど静かに時が流れていた。

「嫌な予感がするな。フィロス」

ヒカゲはある一点を指差した。

「あ?」

「あそこにむかって、何か打ってくれ。出来れば壁を吹き飛ばすくらいの」

「いいのか」

その問いにヒカゲはコクリと首を縦に振った。その答えにフィロスをニヤリと悪そうな顔をする。

「いいぜ、《弾けろ爆火群》」

こうして、巨大な火の玉の群れが宮殿の一角を襲った。

「わぁ、すごいすごい!」

大きな魔法を見たことにより、ティナは大はしゃぎ。ヒスイはチラリと横目で見ただけで、肩に乗り、また目を閉じた。

「行くぞ」

ヒカゲたちは宮殿の方へと足を進めた。











「ナーシャ‼︎‼︎」



大きな音と共に、ヒカゲがナーシャを呼ぶ声が響いた。しかし、その呼ぶ声にナーシャは俯いたまま、振り向かない。

ヒカゲは直ぐに、《銀月鎖ルアリユ》を飛ばし、ナンシェを弾き飛ばした後、ナーシャに巻きつけ、引っ張った。ナーシャは何の抵抗もなく、ヒカゲの所に引っ張られる。ヒカゲは直ぐに《銀月鎖ルアリユ》をしまい、ナーシャに呼びかけたが、ナーシャはうつむいたまま、ヒカゲを見ない。

「か、えせ」

もう一度名前を呼ぼうとしたが、そんなつぶやきと共に、ガラガラッという音と方を見ると、ナンシェが立ち上がっていた。

「かえせ」


「その子を、返せ‼︎《百の光り輝く矢》!」

こちらも顔が俯いていたナンシェが、ガバリと顔を上げてヒカゲを睨みつけている。そして数多くの光の矢が、ヒカゲにむかって襲いかかってきた。

「いくぞ」

ヒカゲはナーシャを横抱きにして、走り出す。

やれやれと溜息をついたフィロスは、ヒカゲを追いかける前に、手をかざす。

「《巻き上げる防風》」

上へと巻き上がる風が、光の矢を弾きいていく。風の余波を受けて、広間に風が吹き荒れ、ナンシェは腕で顔をガードしている間にフィロスはヒカゲの後を追った。




一人取り残されたナンシェは風が治まると、ダラリと腕の力を抜いて、ヒカゲたちを追いかけようとした。

「《希望》」

その時、後ろから呼び止める声。振り向くと、遅れてやってきた全能神たちが穴の空いたところから入ってきた。全能神は荒れた広間と少し服が汚れているナンシェを見て問いかけた。

「これを行ったのはあの者ですか?」

ナンシェは全能神に跪き、頷く。

「そうですか。ならば先ほどの報告であった、白と黒の羽根を持つ者もいるはず。その者のことも、」

神がいっている者とはナーシャのことだとわかる。ナンシェもそのことに気づき、ふらりと立ち上がる。

「させない」

ボソリとつぶやいたことは、全員の耳に届いたが、言葉までは聞こえなかったが、ナンシェを見る。

「《希望》、何をしているのですか。全能神様の前だというのに」

立ち上がったナンシェにカーヌが近づき、肩に手をおこうとした。

「《氷の刃》」


「危ない!」

「え、」

下から先が尖った大小様々の大きな氷が、ナンシェのカーヌの間に生えた。サロンが何かを感じ、咄嗟にカーヌを引っ張ったことで、カーヌの腕を貫くことはなかった。

しかし、カーヌは信じられないような目で、ナンシェを見ていた。シルィは戸惑いながらも、全能神の前に立ち、ナンシェに話しかけた。

「一体どうしたと、」

「あの子は」

シルィの言葉を遮り、今度は聞こえるような大きさで、言い放った。


「あの子は渡さない」


ナンシェの顔は無表情だったが、ただならぬ雰囲気にゾクリと、背中に何かが走った。

そんな彼らの様子を気にすることなく、ナンシェは今度こそヒカゲを追いかけた。

「どうやら《希望》の様子が可笑しい。とにかく追いかけます」

全能神が腕を振ると、氷が溶けて消える。

そして、全能神たちは、ナンシェを追いかけて行った。そこでカーヌは気づいた。

「《愛》がいない?」

そこにアモルがいないことに。しかし、全能神の命令もあり、カーヌはひとまずはナンシェを追いかけることに集中した。



ヒカゲが後ろを見ると遠くからナンシェが遅れて、追いかけていることがわかった。

「速いな」

「あたりめぇだ。飛ぶことにかけちゃあ、天族カイラトの右に出る者はいない。だが、どうすんだよそいつ」

ヒカゲは腕の中にいるナーシャを見る。

「こいつと話がしたい。それにはまず、姉のナンシェの方を足止めするのに、場所が必要だ。その場所を」

「ヒカゲ!」

横を見ると、柱の間からピンクの羽根を広げて、空を飛ぶアモルが見えた。

「アモル!ここに広い場所はあるか!」

「ある!」

アモルが指差した場所はここからつながっていて、壁が見える。

「その奥の右側に大きな闘技場がある!そこは聖天使エンジオンを決めるための大きな闘技場!」

「わかった!」

「気をつけて!後ろから全能神様たちも追いかけてる!アモルも手伝うから!」

ヒカゲは驚いて、アモルを見る。

「いいのか」

「うん。だってヒカゲにはぬいぐるみを助けてもらったから」

ヒカゲとアモルはお互い見つめあった後、前を向いた。


右側には、扉がない大きな闘技場があった。闘技場は、ドーム型になっていて、天井がなく、夜空が空を覆い、数多くの蝋燭の炎で照らされているため、星がよく見えた。

「《凍える氷の息吹》」

ナンシェがヒカゲを目でとらえて、口元に指で輪っかを作り、フゥと息を吹くと、キラキラと輝く氷の風空気を凍らせながらヒカゲへと向かった。

「させっかよ、《ほむらの防壁》」

間に炎の柱が現れて、溶かしていく。

「フィロス、ナーシャを見ていてくれ」

「どうすんだよ」

「ティナとヒスイを隠すから、一瞬だけ時間を稼いでくれ」

ヒカゲはナーシャを下ろして、周りを見ると、おそらく選手が登場するときの入り口を見つけた。

「ティナ、ヒスイ」

「なに?」

「ガウ?」

同時に首をかしげる。

「危ないからここに隠れていろ」

ティナとヒスイを下ろして、戻ろうとすると、クンとコートが引かれた。下を見ると、ティナがコートを握っていた。

「ちゃんと、かえってくる?」

不安そうなティナを見て、ヒカゲはしゃがみ、小指を出した。ティナは不思議そうに小指を見る。

「俺のところでは約束をするとき、お互いの小指を合わせて約束をするんだ」

「こゆびを?」

「そうだ」

おずおずとティナが小指を出すと、ヒカゲは小指を絡めた。

「ぜったい?」

「ああ、必ずティナのもとに帰ってくる。お前のママにも約束したからな」

そう言ってヒカゲは小指を離して、フィロスとナーシャの元へと向かった。


「ぜったいかえってきて」

ティナはヒカゲの後ろ姿に、そう語りかけた。

ヒスイもヒカゲをしっかりと見つめていた。

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