第五幕 日記と罠
第五幕目です。
やっとヒカゲが主人公らしくなってきた。
次の日、ヒカゲは城を訪れていた。
昨日はなぜかマサシたちが来ることなく、本を返すことができなかったからである。前に監視役が教えてくれた隠し扉。茂みを一つ手前に引き、外壁のレンガを一つ押すと小さな扉が現れる。そこを潜ると城の図書室に繋がりっている。今までユウカかユメが本を持ってきてくれていたため入ったことがなかったヒカゲは感嘆した。図書室は壁一面上から下までにびっしりと本が並べられ、真ん中に一つ机が置いてあり、机の上には貸し出した本と借りた相手の名前が書いてあった。ヒカゲは何処に本がしまってあったかわからず、その机の上に置いて、書いてあったユメの名前を羽ペンで消した。そしてヒカゲは少しだけと思い、誰か来ても直ぐにはわからないように一番上から見ようと階段を上がっていった。
「・・・はっ、しまった」
外を見ると夕陽が射し込んできた。どうやら本に集中し過ぎて時間を忘れてしまったようだ。端の方にいたヒカゲは本を戻そうとすると、隣の本の順番がバラバラになっているのに気付いた。ヒカゲは不思議に思いながらとりあえず直した。するとバサバサと本が落ちる音が聞こえ、急いで下に駆け下りるとさっき置いた本が机から落ち、見覚えのない一冊の本が開いていた。ヒカゲはゆっくりとその本に近づき、手に取ると何も書いていない表紙に掠れた文字が浮かび上がった。
「汝、は・・・この、国の・・真を、綴る・・・実、にで、あうだ、ろう」
その文字を読んだとき本に魔方陣が浮かび上がり、ヒカゲの足元にも同じ魔法陣が浮かび、次にはもうヒカゲは消えて散らばった本と光が消えた本があるだけだった。
目を開けるとそこは簡易な部屋だった。部屋にはベッドと机など最低限必要なものだけが置いてあった。
「ここは何処だ?」
ふと机を見ると何かが乗っており、近づいて見るとそれは鍵がついた日記だった。横には血が染み込んでいる羽ペンとたくさんの鍵があり、ヒカゲは不思議と羽ペンの方を手にとって先を外し鍵穴に差し込んだ。カチッという音が響きヒカゲは椅子に座り、日記を開いた。
《この日記はいつか、それこそ何千年経とうとも、見つけ、開いてくれる者のために残したい。
例えば見つけたのが偶然出会っても、それはワシの言葉、文字に耳、目を傾けてくれるものなのだから》
「なるほど、そういうことか」
ヒカゲは日記を閉じ、上を見た。まるでそこにいる誰かにはなしかけるように。
「この日記はあんたが例え死んでも伝えてくれると諦めず、それこそ血を吐く思いで書いた心の叫び、心の願いか」
ヒカゲは立ち上がり、それを抱えた。
「急いで戻ってマサシたちにこの真実を教えなければ。」
ヒカゲは魔方陣に乗り、元の図書室に戻った。
「マサシは今頃自分の部屋だろう。」
ヒカゲがドアの方へ歩こうとしたそのとき、
「勝手なことをしては困ります」
直ぐ後ろから声が聞こえ、ヒカゲは後ろを振り向くとそこにいたのは
「あんたは、一人か?」
「はい。」
影は近づき、ヒカゲの前にくる。
「やはりあなたはあの部屋を見つけました」
ヒカゲは影の闇を宿す目を見て、後ろに下がる。
「あなたがあのままあそこで朽ちてくれていれば、こんな手荒なことをしなくてもよかったのに」
影がすっと手を挙げると、ガンッとヒカゲの頭に衝撃が走り、崩れ落ちる。
「な、に・・・」
「敵の言葉には耳を貸してはいけません」
影はしゃがみこみ、ヒカゲが落としたそれを拾い上げた。
「あなたがこれの中身を見た以上、役に立ってもらいます」
影はもう一人の影にそれを渡し、もう一人の影はそれに手をかざし
「」
それは火を出して燃え、床に落ちる。ヒカゲはグラグラする意識を必死に繋げる。
「な・・ぜ・・・」
「こんなものがあってはいつ勇者が気づくかわかりません。なので、燃やしました」
「俺を、どうする・・・気だ」
ヒカゲは動くことができず、もう一人が手をあげるのを見るだけだった。
「勇者が使い物にならないのは困ります。なので一芝居を。あ、大丈夫です」
「あなたにはただ、この舞台から降りて頂くだけですから。勇者にはこれからも勇者でいてもらいます。」
「しかし、あなたがいることだけはいただけません。あなたのために勇者が力をつけ、守ろうとする意識をあなたではなく、我々人間族に向けて頂かなくてはなりません」
「怨むなら自分の無力さと運の無さを」
ヒカゲはそれだけ聞くと、もう一度頭に衝撃が走り、ヒカゲは意識を飛ばした。
ヒカゲが目をさますとそこは図書室の天井だった。
「どうして、生きて・・・夢か?」
上半身を起こそうと手をつくと、手に何か握っていた。あぁ、日記だと思い、立ち上がって手を見るとそこにはべったりと血が付いた剣を握っていた。
「え、」
バンッと後ろのドアが開いた。
「どうしたんだ!いったい何が・・・」
振り返るヒカゲ。そこにはマサシ、ユウカ、シンヤ、ユメが目を見開いて立っている。
「マサシ、」
ヒカゲがマサシに近づこうとする。しかし、
「来るな‼︎」
ぴたっと足を止める。
「な、何で、」
「何でだと!この状況はどういうことよ!」
ヒカゲはもう一度、周りを見る。
血が付いている剣。それを握り、体に真っ赤な返り血を浴びている自分。その近くには真っ赤になった三人の騎士達。そして幼なじみが自分をみる恐怖と憤怒の目。
『あなたにはただ、この舞台を降りていただくだけですから』
ヒカゲはようやく二人の影、パルノ・グロールアとクスィパス・グロールアがいっていたことを理解し、遅かったことに気付いた。
あの、自分が早く主人公のことを書きたいばかりにプロローグから三幕までおざなりになってしまったので、落ち着いたら書き直すかも知れません。
本当にすみませんm(_ _)m