第五十四幕 再会
五十四幕^_−☆
再会します
ヒカゲは風の抵抗を受けながら、真っ逆さまに落ちていく。胸元からは風を気持ちよさそうに受けようと、顔を出しているライオン。
ヒカゲはどうしようかと考えているうちに下町が段々近くなってくる。
すると、右目が何かを感じ取り、石の宿主が近くにいることがわかった。目で探してみると、大きな建物からフィロスとティナとあの依頼人のお爺さんが出てきた。そしてフィロスが上を向いた時、
「来たか」
そう声に出した。
フィロスたちはすぐさま、ヒカゲが飛ばされた魔法陣を探った。すると天界・サンクギオに繋がっていることがわかり、急いで中央国・ケントルメのすべての国に繋がる中央駅・スターンへ行き、天界・サンクギオに向かおうとしたが、行くための転送装置が少しおかしいとか何とかで、足止めを食らっていた。
何とかして、転送装置が直り、ここまで来ることができた。
フィロスはさて探そうとした時、自分の真上から自分の石の存在を感じ取り、上を向いた。すると空から落ちてきたヒカゲと目が合った。
「ヒカゲ!」
ティナも同じように上をみる。すると今までに暗かったティナの顔がみるみるうちに明るくなる。
「ぱぱ!」
「《舞風》!」
フィロスはすぐさま浮かび上がり、魔法を口にした。
下から、力強く風がヒカゲを包み、フワリと身体が風により浮く。
「遅いぞ」
そう呟きながらも、久しぶりに聞いた声に、ヒカゲの口元は少し上がる。
「遅いじゃねぇ!」
不機嫌な顔に乱暴な言葉遣いとともに現れたのは、突然はぐれてしまった自分の家族の一人。
ヒカゲは足がつく場所に降りて、態勢を整えると、ドンッとお腹に小さな衝撃。
「ぱぱ!」
その正体が分かっているヒカゲは、泣きながらも嬉しそうにヒカゲにくっついているティナを抱き上げた。そのとき、ライオンは胸元から下に降りる。
「ぱぱ、ごめ、」
「ティナ」
ティナが言おうとしていることがわかったヒカゲはコツンと額を合わせる。
「心配をかけてすまなかったな、それときてくれてありがとう」
その言葉に、ティナは涙を目にためながらも嬉しそうに笑い、ぎゅうっとヒカゲに抱きついた。
「さてと、そんじゃあ言わして貰おうか」
タイミングを見計らってヒカゲに近づくフィロス。
「テメェは何で会うたびに空から落ちてくんだよ!」
「仕方ない。今回は天界・サンクギオだ。空から人一人落ちてくることもあるさ」
「そんなことあるか!て、そうじゃねえ!」
ヒカゲのボケに突っ込みながら、フィロスはヒカゲの腕を掴む。
「もし、俺が間に合わなかったらどうするつもりだったんだ」
厳しい顔をしてヒカゲを見るフィロス。しかし、ヒカゲはキョトンと不思議そうな顔をする。その顔にフィロスの顔が引きつる。
「テメェ、わかって、」
「問題ない」
「・・・は?」
何言ってんだとぽかんとするフィロス。しかしヒカゲはまっすぐ、フィロスと腕の中にいるティナを見る。
「こうして、来てくれたじゃないか」
ヒカゲはまっすぐ、まっすぐ、前を見ていた。
慢心でもなく、それが当たり前というのも違う。
ヒカゲはただ、二人が来てくれると信じていただけ。
そのことに気づいたフィロスはもっと言いたいことがあったはずなのに、言葉にすることができなかった。
それと同時にこいつを守らなければと、再認識すこととなった。
「で、これは何だ?」
話を変えようと、指差したのは黒い額に宝石が付いているライオン。
「あのタマゴから産まれたんだが、フィロスも知らないのか」
「ああ、見たことねぇが、どっかでこういうのを見たことがある気がする」
しゃがんで、ライオンと目を合わせる。じーと見ていると、ライオンが飛び上がり、
ガリガリ、ガリリ
顔を引っ掻き、スタリと着地。
「っっっ‼︎」
フィロスは顔を押さえ、地面に転がり行ったり来たり。ライオンの方を見ると満足そうに、小馬鹿にするように、フフンと鼻を鳴らした。
「こ、の獣の分際で」
しかし、ライオンは相手にすることなく、そっぽを向く。その様子を見ていたティナの方を見たライオン。すると更にフフンと小馬鹿にしたように鼻を鳴らす。ティナはそんなライオンをキッと睨むが、ライオンはどこか吹く風。
「ほら、やめろ」
ヒカゲの停止の言葉とともに、二人VS一匹はもう一度顔を合わせた後、顔を逸らした。
どうやら仲が良くなれそうにないらしい。
ヒカゲは一旦ティナを下ろして、ライオンの前にしゃがむ。ライオンはヒカゲの方を見る。
「先ほどは忙しくて、余り考えられたかったが、もしかしたらこういったことにお前を巻き込むことになってしまうかもしれない」
二人は見つめ合う。
「俺と行動をすることになるのは大変だ。それでも、俺と家族になるか?」
ヒカゲはライオンに向かって、手を差し出す。
ライオンはそれを見て、立ち上がり、ヒカゲの腕をよじ登り、更に頭の上に乗った。
「いいのか」
「ガウ」
「そうか、迷惑をかけるかもしれないが、よろしくな、ヒスイ」
ヒカゲはライオンの目の色を見て、先ほど思いついたライオンの名前を口にした。ライオン、ヒスイは嬉しそうな声を上げた。