第五十幕 誤解の元を
五十幕目^o^
新たな聖天使はいったい?
「大丈夫?《節制》」
黄緑の天使はカーヌに近づく。カーヌは再度レイピアを構える。
「迷惑をかけて申し訳ありません、《勇気》」
二人は前にいるヒカゲを見る。
「気をつけてください。あの武器は今までに見たことがありません。それに不思議な動きを
します」
「わかった。彼の魔法の特徴は?」
「まだ使っていません」
《ステータスカード》
サロン・フォルド
Level : 80 体 : B 魔: 黄緑 防 : B 速 : B
属性 : 自然、雷、光
職業 : 聖天使
種族 : 天族
能力 : ⁇⁇⁇
異名 : 雷鳴の研究者、轟きの天使、捕まえる天才、勇気を与える者、諦めない心、⁇⁇⁇
「へぇ、君が異世界人の勇者なんだ。確かに今までに感じたことがない雰囲気を感じるね。ほんとは傷つけずに捕まえたいんだけど、大人しくつかまってはくれないよね」
サロンはニコニコしながら、ヒカゲに話しかける。しかし、手には大きな筒状の物体。ヒカゲがそれに目を向けているのに気づいたのか、それを肩に乗せて、持ち上げる。
「ああ、これは僕の武器だよ。《魔砲》といってね、僕の力を二倍にして放ってくれる優れものさ」
ヒカゲは新たな聖天使に警戒しながら下がると、ズボリと何かが足にまとわりついて抜けなくなった。下を見ると廊下の足を置いた部分が沈没して、見る見るうちに沼のような色に変わっていった。
「これは、」
ヒカゲは少し足を引っ張るが、バネのように伸びて、すぐに戻ってしまう。
「さっき、ちょっと細工しといてね。それは《沼地獄》と《絡むバネ蔦》。この魔法なら知ってるだろ?そして僕はこの二つを合わせたんだ。だから簡単に抜けないよ」
「そうなのか?」
「え?」
見るとヒカゲはブチリブチリと蔦を引きちぎり、沼から抜け出していた。
「ど、どうして・・・。だって二つとも二倍の魔法になってるし、魔力に反応して離れることはないのに、」
サロンは信じられないというような呟きをこぼした。
なるほど、とヒカゲは冷静にこの状況を考えていた。ヒカゲはその二つの魔法のことを知らない。だが、言葉から考えれば、沼の中にバネのような植物が足を絡めている。二倍にしているからこそ、魔力がある者ならば、絶対取れない者らしい。
「やはり、貴方はプラチナの魔力を持つ勇者。これ式では上手くいかないようですね」
「だから何故そうなる。俺が魔法を持っていないからだと思わないのか?」
確かに、黄緑の魔力の二倍にの威力になるということは、ピンクの魔力以上なのだという可能性が出てくるが、ヒカゲはまだ一度も魔法を使っていない。カーヌの攻撃は“銀月鎖”と身体能力でカバーしただけ。身体能力は魔法による者だと考えるのもわかる。しかし、今の、、の攻撃は明らかに自分に魔力がある前提で、攻撃されたもの。先程から自分がこういった攻撃を避けたり、素手で勝負したりするのを見て、魔力がないと少しも考えないのかが疑問だった。
「何を言ってるのですか。この世界に魔法が使えない者などいるはずがありません。しかも異世界人は魔法の素質があるものが、呼び出されるのです」
「そ、だから魔法が使えないなんてことはありえない。それに月の髪に、右眼には契約精霊と契約した跡、今まで感じたことがない雰囲気。僕たちが、というよりも、全能神様の言葉は絶対。だから、始末させてもらうよ」
二人は何を言っているんだというような顔をして、ヒカゲを見る。
(何を言っても魔法が使えると思っている彼らの考えは、全能神の言葉から来ている。ならば、まずは全能神の所へ行き、誤解を解かなければならない。)
そうと決まれば、ヒカゲはクルッと二人に背を向けて、走り出した。
二人はまさか自分たちに背を向けて逃げるとは思っておらず、身体と思考が反応しなかったが、ヒカゲがものすごい速さで小さくなっていくのを見て、慌てた。
「急がなければ逃げられますよ」
「大丈夫。ここに来るまでに色々罠を仕掛け、」
前を見ると、何故か罠があるところだけ、避けながら走っているヒカゲの姿。
「ど、どうして罠があるところがわかるんだ」
とにかく追わなければと、二人が追いかけようとしたとき、ヒカゲの足が止まった。
二人がヒカゲの前を見ると、そこには《愛》の聖天使、アモル・クシアがそこにいた。