第四十五幕 ヒカゲ、連れ去られる
再開いたしました!
四十五幕目です!
新しい小説を優先することもあるかと思いますが、ゆっくり書いていきたいです( ´ ▽ ` )ノ
ナーシャがナンシェに会う少し前。
ドアの方にはナーシャと同じ髪と瞳を持った小さな男の子が部屋に入ってきた。
「君は・・・」
「初めまして、僕はルガ・アストゥーク。ナーシャ姉様の弟です」
「ああ、俺はヒカゲ・アカツキだ。ルガと呼ばせてもらってもいいか?」
ルガはこくりと頷き、こちらへ近づき隣に座った。
「それでナーシャに何か用だったか?」
「いえ、ナーシャ姉様が初めてこの屋敷に入れた方なのでどのような方なのかと訪れました」
「そうか」
ルガはヒカゲを見て、少し悩むような素振りを見せて、何か決意したような目でもう一度こちらを向いた。
「ヒカゲさんは冒険者なのですか?」
「そうだ。今はとある依頼を受けていて事故があってしまってここにいるが」
「それでは僕の依頼も聞いてくださいますか?」
ルガの余りの真剣な表情に、ヒカゲは少し考える。
「依頼内容にもよるが、構わないか」
するとルガは嬉しそうな顔をした。
「はい!」
「わかった。それで依頼内容は?」
「僕の依頼は・・・・」
「なるほど、そういうことか」
ヒカゲは顎に手を当てなにやら考えるそぶりを見せる。
「やっぱりダメですか・・・」
ルガはしょんぼりと肩を落とす。
「いや、その依頼受けよう」
「え?」
ガバリと顔を上げてヒカゲを見るルガ。
「ほ、本当ですか⁈」
「あぁ、今更一つ二つ増えてもかまわない。その依頼は必ず遂行しよう。誰だって家族の為に何かしたいと思うのは当たり前のことだ」
ヒカゲはルガの頭を撫でる。
「だからこれからもナーシャのことを信じるんだぞ」
その言葉を聞いたルガは目を見開き、すぐにしっかりと頷いた。
「それではお願いします」
そう言ってもう一度頭を下げて部屋を静かに出て行った。ヒカゲはまた静かになった部屋でナーシャを待っているとまたガチャリとドアが開く。
「どうした、何か忘れ物が?」
振り返るとそこにいたのはフワフワとしたドレスを着て、クマのぬいぐるみを持ったピンク色の少女の天使が立っていた。
「君は確か・・・」
ヒカゲはここに来る前、町でぬいぐるみを拾った。拾ってしまったものは仕方ないとヒカゲはそのぬいぐるみを持って歩こうとした時、近くの路地裏に羽根がついた女の子が下を向きながらキョロキョロ何かを探していた。ヒカゲは持っているぬいぐるみと交互に見て、近づくと少女はこちらに気づきビクリと体を震わせ、後ろの方に走ったが直ぐに小石に躓いたが、すんでのところでヒカゲが女の子の腕を引いてポスリとヒカゲの腕の中に入る。ヒカゲは身体を離し、ぬいぐるみを渡して、頭を撫でるとその場を去った。
「あの時の子か」
コクリと女の子は頷く。
「あれからまた、ぬいぐるみを落とさなかったか?」
女の子はまたコクリと頷き、ヒカゲに近づいてきてくいくいっと服の裾を引っ張った。
「どうした?」
ヒカゲは椅子から立ち上がって、女の子の高さに合わせるようにしゃがみこんだ。すると女の子はヒカゲの耳に口を寄せ、囁いた。
「《眠りを祈る唄》」
唄が体を支配する。
ヒカゲは目を見開き、バッと立ち上がろうとするが、クラリと視界が揺れて膝をつく。
「っ、なぜ、」
ドタリと倒れ、落ちそうなまぶたを必死に開けようとする。すると女の子がしゃがみこみ、ヒカゲの目の上に優しく手をおく。
ヒカゲは暗闇になるのを最後に目を閉じた。
「入ります」
ナーシャが部屋に入ると、風通しがよく、窓が全開になっていた。
「ヒカゲ様⁈」
「どうした、ナーシャ?」
ナンシェが部屋を見ると机の上にはピンク色の羽根だけが残されていた。