第四十幕 知らない場所に一人
四・十・幕‼︎
ヒカゲの飛ばされた場所は?
「クソ!ダメだ、魔方陣にヒビが入ったから繋がらねぇ!」
フィロスはヒカゲが消えた魔方陣をすぐに調べた。どうやら転移魔法のようだが、ヒカゲが倒れ込んだのと古くなっていたため大きな亀裂が入り、使えなくなってしまっていた。
「てぃなが、てぃながあそこにたったから!」
ティナは自分のせいだと涙を流して泣いていた。
「ぱぱは、どこにいっちゃったの⁈ぱぱになにかあったら、どうしよう⁈」
それを見ていたフィロスはポスッとヒカゲがいつもしているようにティナの頭に手を乗せた。ティナは大粒の涙を目に溜めながらフィロスを見た。
「落ち着け。あいつは大丈夫だし、お前のせいじゃねぇ。あいつは多分何処かの国に飛ばされたんだ。お前もあいつが強いのは知ってるだろ」
「でも・・・」
「大丈夫だ、お前のパパを信じろ」
「・・・うん!」
「んじゃ、まずはさっきの爺さんに話を聴きに行くぞ」
ティナはコクリと頷くとフィロスはティナをおぶさり、今のここの所有者のローハの元に急いだ。
その頃ヒカゲはあの光が消えた後、ドサリと地面に叩きつけられてしまった。
「っ、油断した」
ヒカゲはハッと急いで袋の中にあるタマゴを手に取り、耳を当てた。中からはトクリ、トクリと鼓動が聞こえているため大丈夫だったようだ。ヒカゲはホッとしてタマゴを撫でた。
「すまないな、乱暴な扱いをしてしまって」
ゆっくりと撫でたあと、とりあえずタマゴを再びしまい、辺りを見回した。
周りは木々に覆われていたため森だろうと分かったが、木が葉っぱから幹にかけて全てが白く染まっていた。空からは雪のような、しかし冷たくない白いものが降っており、下に積もっていた。歩いて見るとやはり足は寒くなく、それどころか周りの温度はちょうどいいくらいの温度だった。
「フィロス、ここはどこ、」
振り返ったが、そこにはいつも浮いているフィロスがいない。背中にはいつもくっ付いている小さな温もりが感じない。
あれ以来、ほとんど一緒いて一人になることがなかったヒカゲ。
周りから聞こえる音は口が悪いあの声や幼いながらも明るいあの声が聞こえるわけなく、聞こえるのは風で揺れた葉が擦れる音と自分が歩く音だけ。
「そういえば、一人になるのは初めてだな」
ヒカゲはパンッと両頬を叩く。
「大丈夫、あいつらは無事だった。なら俺がすることはまず森を出て、現状を把握して、どうやって戻るかだ」
少し沈みかけた気持ちを引き締め、ヒカゲはしっかりとした足取りで森の中を歩いていった。
しばらく歩くと開けた場所があり、真ん中には霧が少し立ち込めていたが、湖があった。ガサガサと茂みから出ると近くからバシャバシャと水を弾く音が聞こえた。
「誰かいるのか?」
ヒカゲがゆっくりと湖に近づくと、湖の淵に座って足を水に付けている金髪の女性がこちらを向いた。
新たなる人物。
彼女はいったい?