第三十七幕 宿
三十七であります!
今回はあの三人組と再開します!
「それでどれにすんだ?」
フィロスはヒカゲから紙を受け取り、パラパラとめくり眺める。
「そうだな、俺としては何でもいいんだがこれとこれがいいと思う」
ヒカゲが指差したのは薬草収集の依頼ともう一つ魔物退治の依頼だった。
「薬草収集はティナと一緒に出来るものだし、魔物退治は報酬が高いな。それに俺たちが屋根の修理なんてものは出来ないしな」
「じゃ、もう日がくれたんだから宿に行って明日にすりゃいい」
「そうだな」
するとくいくいっとティナが服を引っ張る。
「どうした?」
「あのね、てぃなぱぱといっしょにねる!」
「ああ、勿論だ。部屋は二人部屋があればいいんだが」
「申し訳ありません、お客様。こちらはもう満室でして」
「残念ですが、空いている部屋はございません」
といった感じでいった宿は全て満室。もう少し早く宿を探していればと悩んでいると
「兄貴?兄貴じゃないっすか!」
声のする方を見ると何時ぞやの勘違いしたあの亜人族の【狼人】三人組。彼らはヒカゲの方に走ってきた。
「さっきぶりです兄貴!」
「こんな時間って言ってもまだそんなんじゃないんすけど、どうしたんですか?」
「あぁ、実は今宿を探していたのだか、どれも満室でな」
「そうなんすか、だったら俺らが使ってる宿なら空いてるかもしんないですよ」
「あの宿はギルドの隣の路地にあって隠れ宿なんですよ」
「そこなら大丈夫だと思うんですけど」
「確かにやみくもに探すより良いんじゃねえか」
「そうだな、案内頼めるか?」
三人組はその返事に嬉しそうに尻尾を振りながらヒカゲたちを案内した。
その宿は他の宿より小さい宿。看板には“暖かなもう一つの家”と書かれていて、ドアを開けるとそこにはニコニコしている、【兎人《》】老人夫婦が経営を営んでいた。
「ただいまです。おばあちゃん、おじいちゃん」
「あらあらお帰りなさい、そちらの方々は?」
「それが宿を探していたんだが、なかなか見つからなくて。一応大人二人子供一人なんだが」
「そうかい、そうかい、ならこの宿に泊まるといい。今ならまだ二人部屋が空いていたはずだよ」
「本当ですか、ではお願いします」
「それでは少し待っていてくださいね」
そう言っておじいさんはいったん奥に入っていった。
「ここは暖かいな」
ふいにヒカゲは宿の中を見る。
「そうなんすよ。ここに止まると思わず実家を思い出しちゃうんすよ」
「しかもただいまっていうとあの人たちは必ずおかえりって言ってくれるのでなんかむず痒いんですけど嬉しくって」
「だから俺たちはいつもここに泊まっているんですよ」
「そうか」
「嬉しいことを言ってくれてありがとう」
ちょうど夫婦が戻ってきた。
「宿というものはね、来た人のもう一つの家なんだよ。“ただいま”と言えば、“おかえり”と返す。なにか言葉が返ってくることは嬉しいだろう。だから私たちは“おかえり”としっかり返すんだよ。それにその人が家と同じくらい安心して休むことができるようにしたいからね。だから私たちはこの宿を営んでいるんだよ」
夫婦は嬉しそうに話す。ヒカゲたちははなんだか聞いているだけで心が暖かくなってきた。
「さて、長話をしてしまいましたね。部屋は二階に上がって突き当たりですよ」
「ありがとうございます、それではおやすみなさい」
「「はい、おやすみ」」
ヒカゲたちは三人組と二階に上がる。
「あ、俺らも休ませて頂きます。明日、俺たちは早めに出ますので兄貴たちとあわないかもしれませんが」
「そうなのか」
「はい、明日は亜人国・アッフェスティマに行くんで」
「そうか、残念だな」
「また、」
三人組はヒカゲを見る。
「また、何処かで会えますよね」
ヒカゲは少し笑い、手を出した。
「当たり前だろ。お互い旅しているのだから。どこかで会えるさ」
三人は嬉しそうに笑い、握手した。
「それじゃあ、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
夜、ヒカゲとティナはくっついてベットに入り、フィロスももう一つのベットに入った。
三人は疲れていたのか、すぐに眠ってしまった。
しかし三人の寝顔はどこか安心しきったように穏やかだった。
次は依頼を受けに行きます!