第二十九幕 タマゴ
二十九幕。・゜・(ノД`)・゜・。
一日遅れましたけど明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いしますm(_ _)m
前回、謎の男たちを捕まえたヒカゲたち。どうやらたちは亜人族で、【狼人】であり、冒険者だったらしい。もう少しで中央国・ケントルメで歩いていたら、怪しげな薬を無理やり飲まそうとしていたので悪質な商人と思ったらしい。
「「「本当にすみませんでした」」」
「まぁ、あっしたちもボコボコにしてしまいやしたし、おたがいさまですよ」
しかしそれでは気が治らないのか一人目の男が自分のカバンを漁り始めた。
「お詫びと言ってはなんですが」
そう言って目の前で袋から取り出したのは、大きな両手に抱えるほどの丸い漆黒の岩だった。
「これは?」
「たまたま拾ったものなんですが、何かのタマゴなんですよ」
が持ち上げようとした時、突然タマゴが男に体当たりをして吹き飛ばした。その後、タマゴは飛び跳ねてヒカゲの腕の中にスッポリと収まった。
「どうなってやがる」
フィロスはギロリと男を睨みつけたが、男たちも首を横に振った。
「お、俺たちにもわからねぇんだ」
「動いたのだって今が初めてなんだ!」
どうやら本当に嘘はついていないと感じ、ヒカゲは腕の中にあるタマゴを見た。タマゴは動くことなく、それを見ていたティナはヒカゲのマントを引っ張る。
「どうしたんだ?」
するとティナは両手をヒカゲの方に上げた。ヒカゲはすぐにティナがどうして欲しいか気づき、片手でティナを抱きかかえた。ティナはじっとタマゴを見つめて、そっぽを向いた。
この時点でヒカゲの左手にはタマゴ、右手にはティナ、身体中にはラビットシープがくっついていてなんとも不思議な見た目になっていた。
「おい」
「なんでしょう?」
「あの薬の効果はどれくらいかかんだ?」
「あの薬は一滴で一・二時間持つんで、おそらく三日間くらいかと」
「長えな。ケントルメにつくのは?」
「同じくらいだと思いやす」
「そうか。まぁ、あいつなら大丈夫だと思うが・・・」
フィロスはチラリと男たちを見た。男たちの目はヒカゲに畏敬の眼差しを向けていた。
「あ、あの」
「何だ?」
一人の男がヒカゲに話しかける。
「兄貴って呼んでもいいですか⁈」
「「は?」」
ウルアとフィロスは呆然とした。
「俺らは兄貴のあの強さと冷たい目に心を奪われました。だから兄貴って呼ばせてください!」
「そんなのダメに決まってんだろ」
フィロスがヒカゲの方を見ると、ヒカゲはたじろいでいた。何故なら彼らの耳がピンと立っていて、尻尾は千切れるほど振っていたから。
「今、俺らも中央国に行くんですけど道案内させてください!」
しばらく見つめて、
「・・・俺は別に構わないが」
そう言うとヒカゲは馬車の方に戻っていった。フィロスはため息をつき、男たちを見る。
「とにかく、あいつはお人好しだ。もし、それにつけ込もうとするなら容赦しねぇ」
男たちを震え上がらせたフィロス。そんなフィロスをウルアは見る。
「なんだ?」
「なんだかんだ言ってやっぱ心配してやすね」
フィロスの顔がさっと赤くなる。
「べ、別にあいつが困っても俺は気にしねぇよ。ただ、その後あいつの愚痴を聴かされたら堪ったもんじゃないし、俺に迷惑がかかんだろ!あいつが悲しそうな顔をしたら困るとかそんなんじゃねぇからな!」
フィロスはまくしたてるように言って、直ぐにヒカゲと男たちの間に飛んで行った。
そんなフィロスを見てウルアは呆れ顔で見ていた。
「あれが所謂ツンデレなんですかね。しかも屋根の上じゃなくて、あの場所に座っているのも無意識なのかもしれないですけど、結局心配しているのに変わりやせんね」
ウルアの言葉は誰にも聞かれることなく、風がさらっていった。
だんだんフィロスのキャラがわからなくなってきた。