第二十一幕 移動商人と護衛
なんとか二十一幕だけ出せました。
「よし、グロールア国での商売はこんくらいにして次に向かいやしょう」
ピンクの髪にターバンを巻いている女性、ウルアは少し変わった商品を売り歩いている商人だが、グロールア国ではウルアが売っている商品を買う者は少なく、ウルアはそうそうに商売を切り上げて別の国に向かおうとしていた。そんな時、運悪くベジバットに遭遇してしまった。ウルアは冒険者ではなく、商人を生業としていて多少は戦うことが出来るが余り強くはない。ましてや、複数で襲ってくる魔物相手は尚更不可能だ。そのためいつもは護衛をつけていたが、少し前にウルアの性格を見て逃げてしまった。ウルアは急いで運転席から積荷のほうに入ったはいいが、どうやって切り抜けようかと悩んでいた。
するとベジバットたちの羽音が遠くなり始め、ウルアは彼らが諦めたと思い、少し馬車の天幕から顔を出したとき目を見開いた。
馬車から少し離れた所に鞭とは違う、杖からでている鎖をその場から動かずに操っている青年が立っていた。ウルアはその人をよく見ようと惹きつけられるように馬車から出て近づくと息を飲んだ。
まず目に入ったのが風になびく、月を思わせる髪だった。次はキラキラと輝くルビーの様な左目と青い空を思わせる右目。そしてボロボロの服から覗く右を覆う刺青と鍛えられたような体の傷跡。最後に今使っている杖のような武器だった。
青年が最後の一匹を倒し終えると武器は消え、ウルアに近づいてきた。ウルアが呆然と座り込んで青年を見ていると、
「・・・い、おい!聞いてんのか?」
ビクリと体が動き、振り返ると宙に浮いている深緑の短髪の男がいた。
「さっきから話しかけてやってんのに、どっかケガしたか?」
ウルアは必死に首を横に振った。
「だ、大丈夫!ケガしてやせんから!」
ウルアは前にいる青年をもう一度見ると手を差し出されていた。
「無事か?」
青年の顔と手を交互に見て、ゆっくりと青年の手を握り、立ち上がる。
「助けて頂きありがとうございやす!あんさん方の、いやあなたさま方のお名前は?」
「普通にしてくれて構わない。俺はヒカゲ・アカツキ。そっちにいるのがフィロス。そしてこの子がティナだ。君は?」
見るとヒカゲの背中からひょっこりと顔を出す蒼い髪の耳にヒレがついた女の子が顔を出していた。
「フィロス様とティナ様は一体・・・」
「言ってもいいのか?」
ヒカゲは二人に聞くと二人は大丈夫だと頷いた。
「フィロスは精霊族で、ティナは人魚だ」
「精霊族と人魚ですか?」
「あぁ、俺の大切な家族だ」
ヒカゲが一瞬幸せそうな顔をしたので、ウルアは余り深く聞かなかった。
「あっしは移動商人のウルアといいやす。さっきは危ないところを助けて頂きやして助かりました」
「たまたま通りかかっだけだ、気にするな」
「しかしそれではあっしの気が晴れやせん。今めぼしいものがありやせんが、ヒカゲ様はこれからどちらに?」
「俺たちは中央国・ケントルメに向かっているところだ」
そう話すとウルアの顔が明るくなり、ヒカゲの両手を掴む。
「ちょうど良かった!あっしもケントルメに向かう途中でした。ケントルメにはあっしの店もありやす!ここで会ったのも何かの縁。ぜひ乗ってください!」
「しかし、」
ヒカゲは別に物を貰おうと助けたわけではない。ウルアはヒカゲの気持ちに気づき、
「でしたら、こうしやしょう。あっしは商人ですから今のように戦うことが出来やせん。だからヒカゲさまたちに護衛を頼みたいんです。見たところヒカゲ様は戦い慣れているご様子。なので護衛の報酬としてあっしの店にある物を差し上げます」
「だが、そんなに簡単にしんじていいのか?」
「酷いお人ならばそもそも助けやせん」
それでもヒカゲが渋っていると、フィロスが助け船をだす。
「いいんじゃねぇか、それで」
「てぃなはぱぱについていくよ?」
ヒカゲは二人の意見を聞いて頷いた。ウルアはニコリと笑い
「契約成立ですね」
と言ってもう一度握手をした。
合間合間て書けて良かった。