幕間1 目覚めと理由 フィロスside
今回はフィロスサイドの話を書かせて頂きました。
フィロスは精霊族には珍しい全属性を操ることが出来る。精霊族は魔法にかけては他の種族より長けていたが、フィロスの場合余りにも魔力が強過ぎて他の精霊たちはだんだんと近寄らなくなっていった。
フィロスは他の精霊たちが近寄らなくなっても特に気にしなかった。もともとフィロスは一人を好んでいたし、口や見た目も柄が悪かったので好き好んでくる精霊は一人もいなかった。
そんな感じでフィロスはあっちにふらふら、こっちにふらふらと意味のない時間を過ごし、毎日が退屈だった。
それをずっと続けていたある日、あの谷の近くでうっかり人間族に見つかった。本来なら軽くあしらってどっかに行くことができたのにその人間族が持っていた不思議な石に引き寄せられ、一瞬気を緩めてしまった。とっさに人間族はその石を投げ、たまたまその石がフィロスに当たった途端、石は輝きフィロスを吸い込んでしまった。
それを見た人間族はすぐにその石を広いって封印魔法を使い、石を谷底に投げた。
その人間族はそのことで名を上げたかったが、自分もその石の力に怯え捨てたらしい。
フィロスは後にその石の名と能力を知り、自分がこの石に惹かれたのは石が自分を守り手として選んだからだと分かった。
それから無駄に強い封印が解けず、その石から逃げられないとわかるとフィロスは谷底の森で妖精と共に自堕落に時を過ごした。
そして幾年が過ぎ、後一つだけ揃えば封印が解けそうになった時、妖精たちが急いでやってきてフィロスにこう言った。
「ある異世界から来た人間族を助けてほしい。あの子ならあなたの最後の封印を解くことが出来る」
当然フィロスは断ろうとしたが、余りに必死に彼女たちが頼みこんできたので、興味を持った。人間族に干渉しない彼女たちが一生懸命自分に頼み、しかもこの忌まわしい封印を解くことが出来ると言われてフィロスは力の一部を飛ばし、数日間その異世界から来た人間族を観察することにした。
一日目はバカだなって思い、心で笑っていた。
二日目は、そいつの運の無さに同情した。
三日目は何もやり返さないそいつにイラついた。
四日目はそいつを信じない他の異世界の奴らに怒りを感じた。
五日目は死にそうになるそいつの本音を聞きたくなった。
六日目はそいつの死にかけても真っ直ぐな、濁らない目を見て無性に心がざわついた。
最後の日、もう後先考えずに、フィロスは自分が思うままに行動した。自分の行動に戸惑いを感じた。
今まで適当に生きてきたフィロスにとって、これが初めての心の変化だたかもしれない。
しかしまだ、フィロスはその人間族のことをまだまだ知らない。もしかしたら本性は別にあるのではと思い、無茶な断れない要求をした。
(どうせコイツも生きている限り、命の危険を感じたら自分勝手な願いをするんだろ)
しかしフィロスの予想と違い、その人間族は本性を出すどころか、自分が傷つけられながらもフィロスのために、怪しい光の球を守るように手で包み、走った。
その行動になぜかフィロスは胸に暖かさを感じた。
しかしその暖かさは一瞬にして奪われた。
手から出た時はもうそいつは崖から落ちていた。
フィロスは急いで風の力を使い、落下を緩める。だけどいくら封印が弱まったとしても十分に力が出し切れない。
そして聞こえたそいつの心からの暖かく、悲しく、優しい願い。
次の瞬間、フィロスとそいつの間にあの石が現れて光る。すると緑の光の球ではなく、本来の姿に戻った。
フィロスはその事に気づくと直ぐに石を掴み、風で落下を止め、手首を掴みゆっくりと下に下ろしていった。
下に降り、そいつを寝かせると妖精たちが集まってきた。そいつの様子を見て顔色(?)を変える。
「もたもたすんな!俺の力とお前らの力とこの石の力があれば何とかなる!」
フィロスは石を右目のほうに近づけると、石は自ら入っていたように右目の中に消えていった。妖精たちはそいつを囲み、微々たるものだが力を流し、フィロスも彼の頭に手を置いて力を流した。
何時間か続いたが、彼はまた息を吹き返し始めた。
・・・少々、姿が変わってしまったが。
傷も塞がっていたが、彼女たちがどこからか持ってきた包帯を巻き、新しい服に着替えさせた。
傷は残るかもしれないが、それでも彼をなんとか助けたことにみんな安堵した。
その後、無茶で断れない要求を出して無茶なことをさせたことを妖精たちが知り、怒られているフィロスの姿があった。
フィロスは口や顔つきが悪いけど不器用なだけです。
彼は主人公とどんな関係を気づくのでしょうか?