始まった異世界生活!
長々と、ダラダラと感じる方も居られるかも知れません。
ゆっくり生かせて頂きます。
あれから十日がたった。
俺は人族語以外に魔人語、獣人語、龍人語、エルフ語、ドワーフ語と殆んどの言葉を覚えた。カエデさんがせっかく覚えるんだからと全部一度に教えてくれたからだ。
他に古代語等色々あるらしいが楓さんも使えないとの事なので諦めるしかない。
十日でこれだけ覚えれたのはゲーム補正なのかカエデさんの教え方がよろしいのかそれは分からないが、カエデさん曰く、あり得ない習得速度らしいからゲーム補正なのだろう。
ちなみにイリスちゃんはまだ勉強中だ、俺は日中全てを言語習得に費やせたがイリスちゃんは昼からだけだった為まだ途中なのだ。と言っておくが流石にイリスちゃんは俺の様な習得速度はないので一年や二年は掛かるだろう。
5日くらいでたどたどしくも会話が出来始めるとイリスちゃんと話すようになった、それまでは言葉が通じない為控えていたらしい、心配りが出来るいい子だ。
言語習得の時にこの世界の事も聞いた。
2つの大陸と2つの大島があり種族毎にある程度の住み分けが成されてるとの事。
先ずこの大陸、アーリア大陸は南北に別れ南部は温暖な気候で主に人族が住んでる。北部は西に鬼人族、その東側が大森林と呼ばれエルフ族が住んでいるらしい、で更に東に巨人族が住んでるとされる大雪原があるらしい。そう伝えられているだけで交流その他はない話だ。
もう一つの大陸、カオス大陸には魔人族が住み大陸中央部の殆どが荒涼な土地との事。
大島の一つ、ドラン大島には龍人族が住んでいて比較的涼やかな気候との事。
もう一つの大島、シーニズ大島は蒸し暑い気候で密林があり、島の火山には火龍が住んでるそうだ。
獣人族は住んでいる地域がないらしい。人族の奴隷だったり何処かの森に隠れ住んでいたりだそうだ。
魚人族に至っては海の何処からしい。
人族は5つの国に別れていて東から東方公国、魔術王国、工業候国、商業伯国、聖王国となっている。
ここはアーリア大陸南部の東側、東方公国の中で魔術王国との玄関口のイーストレイルの街らしい。湖を挟んだ魔術王国側にはウェストレイルという街があるそうだ。
年号は東方暦252年、聖王暦で換算して770年と聞いた時は開いた口がふさがらなかった。
どうやら《ワールドクエスト》の世界から117年前の時代にいる様だ。と思った理由は、ゲームのオープニングで聖王暦887年という言葉を見ていたからだ。
1年は366日で6ヶ月+α、一月60日だそうだ。
金の月から始まり赤、青、緑、黄、銀と続いて無月が6日で366日だ。月の色が毎月変わるから分かるそうだ。
一月10週、一週間は6日で回ってるらしい。
一週間は太陽の日に始まり月の日、火の日、水の日、風の日、土の日の6日だそうだ。
さて、生活を始めて以外と出来てる自分に驚かされるが長期的となると収入源を作らないといけない(現状いつまでここで生活しないといけないのか解らない為)と思ってアルファスさんやルグリスさん等に聞くと
「ハンターギルドに登録して依頼をこなすと報酬が貰えるぜ」
「迷宮で魔石を集めて売るといい稼ぎになるね」
等の意見を貰った。他にも資金が有るなら商いとかもいいんじゃないかと言われたが商売なんて学祭でやったカフェくらいの俺に出来る筈がないと決めつけてこの二択だろうとなった。
他にも、アルファスさんやルグリスさんの下で働くや商業ギルドで働く等もあったが却下である。
早速、ハンターギルドに登録してハンター証なる免許証サイズで緑色の鉄板を受け取りハンターになった。
登録する時の用紙に年齢を記入したがそれを見てみんなが驚いていた。俺が25歳なのがそんなに不思議だろうか?確かにゲーム補正で十代後半の外見なんだが。
ハンターカードは個人の魔力に反応する作りになっていて名前、種族、ランクが明記されてる。
ハンターランクは上はSから下はFまでの区別分けがあり最初はFランクからで街のお使い依頼や軽作業くらいだ。魔物退治はEランクから上の依頼だそうだ…
パーティを組むときは〔絆の指輪〕というアクセサリーにメンバーの魔力を流しておくとお互いの距離や方向が解ったり迷宮に一緒に入れたりするらしい。が…
俺も試したら砕けてしまった。
更にルグリスさん等に無許可でパーティ申請してみたら…
〈NPCはパーティーに出来ません〉
とこれも弾かれてしまった。どうやら俺は完璧に一人で行動するしかないらしい。
一方、迷宮は土地に魔素が溜まり魔物化して人等を取り込む様に洞窟みたいになっている場所らしい。迷宮内で他の人と会うことはなく(パーティを組んだメンバーは別)内部構造も毎回変わってしまうらしい。中の魔物は倒しても素材にならず魔晶石が手に入るとの事だ。魔晶石とは、魔素を宿した水晶でいろいろな用途に使われる物らしい。
昔そんなゲームをやったなと思ってしまう、なんて言うゲームだったかな?
さて説明は終わろう。
本日は金の月第4太陽の日、換算すると19日だ。
俺はやる気なくハンターギルドでエールというお酒を飲んでいる。これがまた美味くない、麦の甘さと何かのハーブの風味…なんとも言えない味に顔をしかめそうだ。
日持ちさせる為、香辛料が混ぜてあるらしいがなんとかならない物だろうか。
「元気無いですね、どうしたのです?セイジくん」
カエデさんがテーブルで突っ伏してる俺に声を掛けてくれる。
ちなみに日本の小説なんかでよくある新人に絡んでくる人は居なかった、カエデさんと話してると少し視線が痛いくらいだ。
「いや、なにもしたく無いなぁと思いながら読者説明を少々…」
「?。解らない事言ってないで、街でも散策してきたらどうですか?せっかく言葉を覚えてもそんな調子じゃやっていけないですよ?」
そう街の事が分からない俺はFランクの仕事が儘ならない、仕事が出来ないとランクが上がらない、ランクが上がらないと収入も上がらない。
ちなみにFランクの報酬は大銅貨一枚~二枚程度で本当にお小遣いにしかならない。もちろん王金貨百枚という大金を持ってはいるが…。ちなみに、野菜等の食材が大銅貨一枚~三枚で売られている。
「そうですね…
ところで、鉄製の武器がメインみたいですけど、他は無いんですか?」
「ミスリル製が一点あったと思うけど?」
どの店、と言っても2、3店舗しかないが武器の品揃えは鉄製ばかりだったゲーム性としては今一つという感じで現実的な気持ちになる。防具にしても革製か鉄製くらいだった。
「はい。そのミスリル製はこの前買いました」
「あ~。あれ買ったのセイジくんなんだ‼武器屋のおじさんや防具屋のカルネスさんが久しぶりに飲みに来てたから聞いたら、あれが売れたって喜んでたから」
どうやら俺が購入した武器屋と防具屋の両主人は此処に飲みに来ていたらしい。それを考えると俺の購入額には酒代が上乗せされていたのかもしれないとも思うが、まぁいいだろう。
「そうなんですか。それで鋼とかはないんですか?」
「鋼、ねぇ。鋼ってね、作り方が門外不出になっててドワーフの街ツイルトスタインでしか売って無いのよね。
だからこの街で手に入れるには。
一つ、誰かに買ってきて貰う。
二つ、行商人が運んで来るのを待つ。
三つ、持っている人に譲って貰う。
しかないのよ」
「そうなんですか。みんな知りたいんじゃないですか?」
「まぁねぇ。鉄をミスリルに近い硬さにする技術だから、最初はいろいろあったらしいんだけどね。今じゃ誰も知ろうとしないわよ」
どうやらこの世界でも利権やらなんやらが在るようだ。ドワーフの街には行ってみたいと思う。
「取り敢えず、散策して来ます。イリスちゃんには勉強が終わる頃にって伝えて下さい」
「わかったわ。行ってらっしゃい」
ということで、街の西側を散策する事にした。
街の西側には巨大な湖があり最初は対岸が見えなかったから海と間違えてしまった。魚が北を向いてる形をしてるらしい、全体が見えないから本当か?と思ったくらいだ。
湖を越えた西側が魔術王国だ。
街の西側を細い路地裏も含めウロウロしながら港までやって来た、漁船や軍船が並んでる。この世界の船は帆船とガレー船だ。たぶんガレー船のこぎ手なんかはきっと奴隷等がするんだろう。
港の近くにある市場?店?を見ると鮭や鱒等に似た魚があると同時に深海魚か?と思う程グロテスクな魚もある様だ。
trottという鱒を買って宿に戻り厨房を借りて俺は遅い昼食の準備を始めた。鱒は試しに塩で焼いてみたところ、味も間違いなく鱒だ。
ついでにミルさん夫婦も交えて三人で頂いた後、イリスちゃんを迎えにハンターギルドにやって来た。
「セイジさん、遅いです!!」
「ゴメン、ゴメン。早めの夕食を食べてたから」
実際はまだ日は暮れてない、ステータスの時計でもまだ17時台でイリスちゃんの勉強も終わってないのだが…
「はい。それじゃあ今日は終わりましょう」
「わかりました♪セイジさん、何か奢って下さいね」
「OK、OK」
ちょうどいいとばかりに切り上げた楓さんに銀貨を1枚渡して三人分の飲み物を注文しホールに戻った。
もちろん、俺とイリスちゃんと楓さんの分だ。
「それでセイジさん、ランクは上がりました?」
「いんや、今日は仕事してないから」
「セイジさん!!いくら大き…『わ~イリスちゃん!』ムグムグ…」
俺は慌ててイリスちゃんの口を両手で塞いだ。
俺のポーチの中には王金貨99枚が入っている、ハンターギルドで預かって貰えなかったので試しに商業ギルドで聞いてみたら預かる事は出来るが何か商売をしなければいけないと言われ諦めて持ち歩く事になったからだ。
「いくら…ゴニョゴニョでも、仕事をしないのは良くないです!ちゃんと朝仕事に出て夜帰って来るようにしてください。
でないと…ゴニョゴニョ…」
街中でもスリや強盗が居るとの事でこの事は内緒だ。
普段使う分だけ硬貨袋に入れて腰に下げている、これはダミーで盗まれてもいいように銀貨三枚だけ入れている。
「?、最後が聞こえないよ?」
「さ、最後の所はいいのです」
「そう?まぁ俺も仕事はする予定なんだけど…こればっかりは地道にやっていくしか出来ないから」
「それなら試験を受けてみますか?」
楓さんが飲み物をテーブルに置きながら聞いてきた事に面食らってしまった。
「試験…ですか?
そんな制度があったんですか?」
「はい。本当はFランクでキチンと街の事を知ってから受けたりするんです。街の雑務もハンターの大事な仕事ですから、セイジくんにも街の事をもっと知ってからがよかったんですけどね」
話を聞いたイリスちゃんは何故か満面の笑みをして言ってきた。
「いいじゃないですか!セイジさん、ランクが上がるんですよ」
「イリスちゃん、なんか嬉しそうだね」
「せ、セイジさんが仕事をしてくれるのが嬉しいんです」
なんかイリスちゃんの雰囲気が怪しいんだが、どもってるし。
「まぁ、いいか…そうですね。じゃあその試験を受けさせて下さい」
「はい。それじゃあ明日のお昼前には此処に来て下さい」
「わかりました」
その後、ガレー船の件で気になった奴隷についてイリスちゃんに聞いてみたら普通の事らしく領主館でも三人の奴隷が働いてるらしい。
奴隷を連れて迷宮に入れるか聞いたら絆の指輪無しで入る事があり得ない為、解らないとの事だった。
ありがとうございます。
読んで頂けた事に感謝です。