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主人公が居ない処で?


「そうか。現れたか…」


 砦の様な石造りの建物のなか、執務室で一人の男は手に持った粗い造りの紙を机に置くと呟いた。

 端整な顔立ちに翡翠色の瞳、切れ長の眼が印象的な緑色の髪をもつ若い男は窓の外に目を向けて夜の暗闇の中、明かりの灯る一軒の宿屋を見詰めると思い出した様に部屋の中に向き直る。


「なにかお礼をしないといけないな」


「金でいいんじゃないか?」


 男の言葉に返したのは部屋のソファーに座っている短い茶髪に琥珀色の瞳、左頬に大きな傷が特徴的な大柄な男だ。

 茶髪の男は昼間に出会った黒髪の少年の事を考えながら不思議と親しみを感じるのだった。


「金か、せっかくだからアレを上げてもいいかな」

「アレって、それは渡しすぎだろう。精々金貨くらいが無難じゃないか?」

「いやいや、ここで恩を売っておけば他にやらないですむからね」


「アルの言う事も解るんだがな」

「ルグの言う事も解るよ」


 二人はそう言うと苦笑しあった。


「とりあえず、明日にでも会いたいから連れて来てくれると嬉しいね」


「わかった、朝と昼どっちなら大丈夫なんだ?」


「う~ん、ランジェルが居てくれたら解るんだけどな」


 アルと呼ばれた男はそう言うと後頭部を掻く。


「おまえはいい加減自分の予定くらい把握すべきだな」


 ルグと呼ばれた男は肩を竦めてそう言う。


「それより、例の件は?」


 アルは表情を変え真剣に問いかけると


「無理だった、今は大公閣下がいない事を理由に断られた。すまん」


 そう言うとルグは頭を下げる。


「いや、いいよ。ある意味解ってた事だし、街の守りを残してどのくらい出せるかな?」


「そうだな、最低限残して…三百。いや二百ちょっとってところか」

「厳しいな。森でその数は被害を考えればハンターギルドにも対応して貰わないと」


「そうだな、カイネルドに送った二千が居てくれたら悩む必要なかったんだけどな」


「向こうはオークが三万、こっちはゴブリンが五百…しょうがないさ」


「まあな、去年から魔物共が行動的になっているのは邪神と関係あるのか?」

「それこそ解らないさ、邪神共の行動は僕ら人間観の外側なんだから」


 アルは首を振りながらそう答える。

 二人はお互いを見詰めると同時にため息をついてしまい二人は吹き出してしまう。


「「プッ、アハハハハハ」」


「とりあえず、明日の朝にでも例の少年を連れて来てくれ、それでもまだ魔物の棲家は見つかってないだろう」


「わかった、じゃあ俺は帰るぜ」


「ああ、お疲れさま。態々報告ありがとう」


「俺は衛士隊長で、おまえは領主だからな」


「ハッハッハ、じゃあ騎士団長辺りに昇格しようか?」


「やめてくれ、柄じゃないしなによりまだシルストのじいさんが現役なんだ」


「シルスト様ももうすぐキークルの街に呼ばれる、その後にと話を貰っているんだよ」


「それならシルストのじいさんが俺に話すだろう、それからでいい」


「そうか、わかった。では、明日の朝待っているよ」


「了解しました。失礼します」


 ルグリスは立ち上がり礼をすると執務室を後にする。

 一人残ったアルは椅子の背凭れに体を預けると


「さて、彼は我々の希望なのか絶望なのか。

 イリスの事を思うと遣る瀬ないな」


 彼は朝には顔を会わせるだろう少年の事を考えながら夕刻に笑顔で帰って来ていきなり少年の事を話始めた妹の事が気になったところで部屋にノックが響く。


「アルファス様、ランジェルです」

「どうぞ」


 執務室の扉が開いてランジェルと名乗った一人の女性が入ってくる。

 その女性は青い髪に整った顔立ちで濃紺のメイド服を纏った美しい女性だった。


「アルファス様、そろそろお休みになって下さい」

「あ~、ちょうどよかった。明日の朝は時間あるかな?」

「朝ですか?そうですね、早朝なら僅かばかり取れると思いますが」

「ありがとう。では早朝にルグリスが来るから段取りを頼むよ」

「畏まりました。では尚更早くお休みになって下さい」

「わかった、わかった。何時もありがとう、部屋に行くよ」

「はい、お疲れさまです」


 ランジェルは執務室を出ていくアルファスに礼をするとため息をついてしまう

 そして、夜はふけていく…


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