チュートリアルかな?
三話目です。ありがとうございます。
草原に佇む俺は腕を組んで暫く悩むと、 結論が出た。
「よし!!
一旦、ログアウトしてロアさんに聞いたり、問い詰めたり、文句言うか」
ロアさんは某有名魔物を狩るゲームで昔から仲が良かった人でこのゲームのスタッフをしている人、俺にこのゲームを薦めてくれた人でもある。
そう思ってログアウトと念じてみる…
…と、
《ブー、
ログアウトはキャンセルされました、
VRマシ ンに重大なエラーを検知しました、
暫くお待ちください 》
と、アナウンスが流れる。
「は?、なにそれ?」
状況に理解が及ばず首をかしげる。
ログアウト出来ないって、なにそれ?
それって俺の身体はどうなるの?
もしかして、身体もゲームの中に?
そんな事ある訳無いよな…
「いやいや、無いわぁ…
なんとかなるって、ねぇ?
なるよね…」
・
・
・
「なるよねぇぇ~~~~~~~~~~!! 」
状況に思考が追い付かないのか叫んでみる。
暫く待つが何も変わらないし、返事も無い。
なんかすんげぇマズイ気ぃしてきた…
どうしよう、俺はなんか出来る?
とりあえず、俺に出来る事を…
ようやく思考が追い付いたのか、自分で出来る事を探し初める。
「なんもねぇ…」
結果、自分に出来る事が何も無い事が解り地面に手を付いて項垂れてしまう。
どうしよう、俺このまま死ぬのかな…
イヤ!!まだそう決まった訳じゃないな。
「そうだよ!!
まだ死ぬと決まった訳じゃないんだよ!!
…ん?」
あれ?、これって帰らなくてもいい?
もしかして、身体の心配しないって事はこのままゲームの中で生活出来る?
俺が求めてた事ができる?
「よぉぉぉっっっしぃゃぁぁぁぁぁ!!」
俺は立ち上がると拳を天に突き上げ叫んだ。
「いやぁ、新たな第一歩とでも言えばいいのかな?
うん!身体はどうにかなるよね。
俺はこのままゲームしよう!! 」
先ほどまで落ち込んでた事等無かったかのような笑顔を満面に浮かべて状況を認識する。
「とりあえず、確認は大事だよね」
ステータスを表示して能力を確認して職業をファイターに変更する。
ポーチに手を入れるとアイテム欄が表示される、アイテム欄は7×7の49マスのようだ。
「初期アイテムは
〔初心者用ポーション×10〕と
〔ロングソード〕
〔革の鎧〕
〔革の盾〕
〔革の靴〕か。
職業アイテムとして
〔錬金術セット入門編〕
〔錬金術の書入門編〕
〔調合セット入門編〕
〔薬学の書入門編〕があるのか。
んで、〔特別アイテム〕と
〔マネーカード〕これが特典アイテムか、RPGなんだから装備はしとかないとな」
ポーチから初期装備を取り出してごそごそと着けていく。
「ん!パーカーとジーンズでよかった、
普段着のジャージとかだったら似合わなかったな、
これもこれでなんかな?って感じが否めないけどね…」
自分の格好に愚痴りながら特典アイテムを取り出して説明を見る。
〈特典アイテムです。
開封時、アイテム欄に5つの空欄が必要になります。
空欄が無い状態で開封しますとアイテムが破棄されます〉
「こういうのは真っ先に開けた方がいいよな…」
特別アイテムを開封するとアイテム欄に
〈特別武器セット〉
〈ポーチ開放キー×2〉
〈スキル忘却カード×4〉
〈野営布団(W)〉
〈和装セット〉
が追加される。
「また、セットアイテムが二つもあるのか、メンドクサ…
とりあえず置いといて、このポーチ開放キーってのはこれだろ」
腰にあるポーチは全部で3つあるがうち二つは南京錠が付いている、
鍵を差し込むと輝いて消え失せアイテム欄のページが二つ増える。
「全部で49×3の147マスか、
最初からこれだけ持てるのは嬉しいな。
スキル忘却カードは、冒険者に入れたスキルを消す事が出来るヤツだからまだ必要ないか…
野営布団は、休息用のアイテムみたいだな。
んじゃ、セットアイテムを見るか」
特別武器セットを開封すると
〈特別ファルシオン〉
〈特別トライデント〉
〈特別カイザーアクス〉
〈特別コンジットボウ〉
〈特別ウィザードロッド〉
が追加される。
「お~!すげぇ。
全部アタック500の武器かよ、これだけで結構後半まで行けるんじゃ?
…ん?」
特別武器を見て悦びをみせるが説明を見て落胆する。
特別武器はあくまで特別だったのである、装備制限がレベル30までだ。
「レベル制限30かよ、まぁ序盤はかなり楽になるか…」
続けて和装セットを開封すると
〈銘刀鬼斬り〉
〈脇差し小鬼斬り〉
〈鉢金〉
〈手甲〉
〈下駄〉
〈羽織袴〉
が追加される。
「あ~、ワカッテタヨ…
装備すると侍の格好なんだろ?…
銘刀鬼斬りが両手武器で脇差し小鬼斬りが片手武器なのか」
アイテムを一通り確認してからチュートリアルを始める。
律儀に最初から一つ一つ説明を聞いていくとアイテム名を言えばポーチに手を入れる必要が無い事、取り出さないでポーチから直接装備出来る事等も解った。
「なるほど、セット登録して置けばセット名を言うだけで装備変更出来るんだ…
和装!!
お~!
あれ?鬼斬りが装備出来ね…
あ~!装備制限LV20以上って、つかえねぇ…
なら武器だけファルシオンにしとくか。
初期装備!!
OK!!」
続いて戦闘のチュートリアルを始める、周囲100Mくらいの地面が蠢くと草が根っ子から抜け出し徘徊しだした。
根っ子は先が手足の様に別れた白いヤツと赤いヤツ、ジャガイモの様な根っ子から蔓が伸びたヤツがいる。
《武器を使って攻撃してみましょう》
とアナウンスが流れる。
「あ~、これってモンスターなんだ」
ロングソードを抜いて大根と言っていい様な白い根っ子を刺してみるとそれだけで動かなくなる。
「へ~、HPが無いからダメージも無いんだ」
他の根っ子に目を向けると、白い根っ子の上に名前が見える、〈白プラント〉どうやらモンスターを倒すとその名前が解る様になってるようだ。
と認識すると直ぐに赤い根っ子とジャガイモの様な根っ子に切りつける。
それにより赤い根っ子は〈赤プラント〉ジャガイモの様な根っ子は〈ポテトプラント〉という名前だと解る様になった。
「つまり、一匹も倒した事が無いモンスターは名前がわからない状態なのか。
よし!!次」
次に進めると森の方から奇声とともに小さなモンスターが走って来る。
緑色の肌に布切れを纏って棒を持った二足歩行のモンスターだ。
《中には積極的に攻撃して来るモンスターもいます。
攻撃を避けたり、防いだりして攻撃しましょう》
と、アナウンスが流れる。
(防御の練習ね…
感覚を掴むのに丁度いいかな)
モンスターが攻撃して来るが俺は反撃せず盾で反らしたり避けたりし続けた。
暫くして感覚を掴むと、俺は間隙を縫って剣を振る。
剣はモンスターの右手を切り落としたが、モンスターはそれでも俺に向かって来た。
チッと舌打ちするとモンスターの跳び蹴りを盾で弾くと叩き落とす様に縦切りで止めをさす。
視界の隅に〈ファイターLVアップ〉の表示が流れる。
「HPが無いってザコ相手だとメンドクサイな…
普通のゲームならオーバーキルの場合でも狙って首切ったり急所突いたりしなきゃならない様な気がする。
ま、次」
次に進むと
《モンスターを倒したら剥ぎ取りナイフを挿す事で素材を入手する事が出来ます。
また、倒したモンスターはポーチに入れる事でそのまま手に入れる事も出来ます》
と、アナウンスが流れる。
「へ~」
緑のモンスター〈ポットマン〉の死体を持ち上げポーチに入れてみる。
視界の隅に〈アイテム入手〉と、表示されアイテム欄を見ると〈ポットマンの死体〉というアイテムがある。
続いて先程倒した白プラント等に腰のナイフを挿してみるとモンスターが消えてアイテム欄に〈白プラントの根〉〈赤プラントの葉〉〈ポテトプラントの蔓〉の3つが追加されたのを確認して次に進む。
《SPを消費して繰り出すスキルと、
MPを消費して繰り出す魔術があります。
スキルには使用後クールタイムがあり、
魔術には詠唱タイムがあります。
クールタイムとは再使用までの冷却時間で詠唱タイムとは発動までの時間を指します。
では、実際にスキルや魔術を使ってみましょう》
と、アナウンスが流れ視界に使用可能スキルと魔術が表示される。
「え~っと、スキルは〈ソードウェイブ〉で魔法は〈属性魔術〉の初級か。
スキルからいくか」
剣を正眼に構えると
「ソードウェイブ!!」
と、発すると頭の中でモーションが流れる。
「あ~、なるほどね。
モーションと音声のセットで発動なのか。
目標を狙って…
下から切り上げる様に…
《ソードウェイブ!!》」
掛け声と共に剣先から衝撃波が発生して目標に向かって地面を滑って行く。
…と、途中に歩いて来た白プラントにぶつかり弾ける。
「ありゃ…射程も知りたかったんだけどな。
まぁ、速度はそんなでもないか、速球くらいかな?
んじゃ次は魔法かな、
フレイムアロー!!」
剣を納して手を前に構えて発すると頭の中に文言が流れる。
「魔法はモーションじゃなく詠唱が必要だからか、
どんな格好で発動しても大丈夫なんだろうか?」
試しに正面に手を構える格好で使ってみる事にする、
「我が、内に、眠りし、炎よ、猛る、火炎となり、敵を、射て、《火炎弾!!》(ルーンフレイム)」
丁度、構えた手の前に炎の塊が出現するとモンスターに向かって飛んで行く。
狙った赤プラントにぶつかり燃え出す、炎が消えると丸焦げの赤プラントが残った。
「お~、こうなるのか。
魔法いいなぁ、想像した感じに使用出来るのがいいなぁ、効果まではムリみたいだけど…
詠唱がなんか不自然になってしまうのは短縮能力が低いからかな?」
上機嫌で他の魔術も試していく。
ちなみに、星児は魔法、魔法と連呼しているが実際には魔術である。
「いやぁ、堪能した。
早く〈魔術使〉取って使える様にしたいな。
んじゃ、次」
暫くして、満足した星児は次に進める。
《今までの事を踏まえてモンスターを倒してみましょう。
スキルと、魔術はチュートリアルが終了するまで使えます。
では、頑張って下さい》
と、アナウンスが流れ緑色のモンスターが前回より太い棒を持って向かって来る。
「またポットマン?…
じゃねぇな、名前がわからない。
ちょっと強いヤツで腕試し…てか?」
剣を構えて先制のスキルを発動する
「《ソードウェイブ》!!」
掛け声と共に剣先から衝撃波がモンスターに向かって行く。
俺に真っ直ぐ向かって来るモンスターは避ける事なくクリーンヒットしてのけ反るが再び向かって来た。
「くっ、
我が、内に、眠りし、心の、風うわっ!!」
続けて魔術を使おうとしたがモンスターの攻撃の方が早く襲って来た。
間に合わなかった俺は詠唱を中断して間一髪で避ける。
「この!!」
攻撃を避けて剣で切りつけるがモンスターに剣が当たる寸前で剣が止まる。
「え?、がはっ」
剣が止まった事に驚き動きが止まった俺の右脇腹にモンスターの一撃がヒットしたため横に転がる様に倒れる、がすぐに体制を立て直して剣を構える。
何で攻撃が効かなかったのか不思議に思いながらも効かないのであれば防ぐ事しか出来ない俺はモンスターの攻撃を防ぎながらヘルプを確認すると
【攻撃が効かない敵と出会った時】
の項目を見つけて開く。
〔攻撃が効かない場合は敵の〈守力〉が高い、〈精神力〉が高い、〈結界〉があるといった事が考えられます。
守力が高い時にはキャラの筋力を上げる、今の武器より強い武器で攻撃する、クリティカルを狙う等によって倒す事が出来ます。
精神力が高い時にはキャラの魔力を上げる、今の魔術より強い魔術で攻撃する、クリティカルを狙う事によって倒す事が出来ます。
結界がある時にはその結界を解除する事で攻撃が効く様になります。〕
今回の場合はモンスターの守力が高い為攻撃が効かないという事が解りすぐに装備の変更をする。
「和装!!」
ファルシオンを抜くとモンスターに袈裟斬りに剣を振る。
モンスターの肩から腰にかけて剣の閃が通るとモンスターの身体が血飛沫を上げて崩れ落ちる様に倒れる。
視界の隅に〈ベースレベルアップ〉
〈ファイターLVアップ〉と、表示される。
「はぁ~、チュートリアルでこれはツラくね?
チュートでデッドエンドしました。
なんて他の人の笑い者だろ?
…どうせ俺以外居ないんだけど」
《チュートリアルが終了しました。お疲れさまでした。》
アナウンスが流れると〈アイテム入手〉と表示される。
アイテム欄を見ると〈初心者用ポーション〉が20個になっている。
「これでポーション10個かぁ…
割り合わねぇ…」
ポーションを一つ取り出して口に含みながら草むらに寝そべると一人で愚痴る。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ステータス
キャラ名〈セイジ〉
ベースレベル LV3
職業 〈冒険者〉 LV1
〇〈ファイター〉LV5
サブ職業〈錬金術師〉
〔職業補正〕
能力値〈筋力〉 13 +2
〈知性〉 13 -1
〈体力〉 11
〈守力〉 12
〈瞬発力〉 9
〈器用さ〉12
〈精神力〉 9
ボーナスポイント10
自由スキル〈危険探知〉〈索敵〉〈識別〉
〈鍛冶〉〈採掘〉〈投擲〉
装備 〔性能〕
武器〈ファルシオン〉500
頭〈鉢金〉 80
体〈無し〉
腕〈手甲〉 80
脚〈下駄〉 50
衣服〈羽織袴〉 10
アクセサリー〈無し〉
〈無し〉
読んで頂きありがとうございます。