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8.クランは何故か、話しかけられる 下

同じ番号が、「」の後ろにあれば、それは同じ人物の発言です。


「クラン様、先日ドラゴンを倒したと拝聴しました。一体どうやって、倒したのか、教えて欲しいです!」1

「あぁ! それ、わたくしも気になってたわ!」2

「私も興味がありますね」3


 今度は男性二人、女性一人ね。想像するに、戦闘能力が強い人達か、とてつもなく弱い人達かの2択な気がするわ。けれど、最後の(かた)は学者肌という感じもするわ。ふふっ、一体どれが正解でしょうね。


「翼を切って、急所を護衛に刺させただけよ?」


 さあ、質問には答えたでしょう? さっさと帰って頂戴?


「翼を切る?」1

「クラン様、一体どういうことですの?」2


 なぜこんなに簡単なことが分からないのかしら? きっと、この人たちはとてつもなく弱いのね。


「だから、風魔術で両翼を切ったのよ。たかがグレードラゴンだったもの」


 分からない人たちね。理解力は大丈夫かしら? あぁいや、弱い方たちだと考えるなら……自分とできることがかけ離れていて、理解ができないのかもしれないわ。うん、それなら納得よ。


「ドラゴンが弱い……」3


 弱いドラゴンは弱いわよね? つまり、この方達は竜を強いと思っていた。イコール弱い。そう考えていいのよね? 予想が当たったわ! 最高ね! 気分がいいわ! 久しぶりに高揚してきたわ!


 あぁ、なんて清々しいんでしょう!


「すまん、私も理解できないのだが……」1

「ドラゴンの攻撃はどうやって止めたんですか?」2


 話を変えてくれるなんて、気の利いた子もちゃんといるのね。今日やっと一瞬とはいえほっとできたわ。全員こうだったらいいのだけど……

 そう思って気づいた。

 そもそもなんでわたくしは話しかけられているのかしら? 話を変えてくれたことに感謝を抱く前に、そちらを糾弾すべきだったわ。


「風魔術を使って相殺させたのよ。分かるでしょう? 分からないほど弱いのなら、さっさと帰って頂戴?」

「魔術で相殺する……つまり、攻撃を事前に読み取って、それと同等の力で防御したということだよな?」3

「そういうことだと思うけど……信じられないな」1


 まったく……

 わたくしが帰って頂戴と言ったのが聞こえなかったのかしら? もしそうとしたら、ただの迷惑な人たちね。

 人と話す際は、相手の心情を気にしなければならないのよ。


「討伐にはどれぐらいかかったんですか?」2


 あら、またこの子が話題を変えてくれたわ。どんどん好印象を持ってしまう……他の者と比べて、だけど、名前を後でこの子だけは確認しておこうかしら? 覚えていたらだけど。

 けど……わたくしの記憶によるとまあまあ地位は高めだった気がするのよ……侯爵かその一個下の伯爵でしょうね。公爵だったらこのようにわたくしを立てるような言い方はしないはずよ。


「両翼を削ぐのは一瞬だったのだけれどね……護衛が30分かけたのよ……」


 お陰で魔術の腕がまた上がったわ。

 というより、なぜわたくしがドラゴンを倒したことを知っているのでしょうか? わたくし普段はあまり実力を見せないようにしていましたのに。今までの努力が水の泡よ。誰かしら? 広めたのは。

 まあドラゴンの討伐に三十分も掛かったと教えてあげたのだから、きっと評価は元通りになるでしょうね。


「30分間も相殺し続けたのか……」1

「授業ではそんなふうに見えなかったのに……」3

「クラン様にはわたくしたちには分からないような崇高な考え方がきっとあるのよ!」2

「かもしれないな」3


 何故か呆れられた気もするのだけど……どうしてでしょう?


「答えてくださってありがとうございました」2

「そう、それは良かったわ」


 少し微笑んだ。別に「約束」に関わらなければ人と話すのは嫌いではないもの。そう思い、だけど少し喋りすぎたわね、と反省する。



「クラン様は、普段、どんなことをしているんですか?」

「見ての通り、あまりなにかしているとは言えないわよ」


「クラン様、今度授業の際にお手合わせを」

「遠慮するわ」


 本気なんぞ出したくもないし、厄介事に巻き込まれる予感しかないわ。いえ……もう巻き込まれているのだけど。



「クラン様って何でもできてすごいのね」


 はぁ? みんなもできることじゃないかしら?


「クラン様はどんなことが好きなんですか?」


 読書……よね? 答えるつもりはないけど。


「クラン様、今度魔法を教えてください」


 嫌よ。


「クラン様、」「クラン様」「クラン様」


 あぁ……もううるさいわね。



 疲れた……。やっと終わったわ。会話って疲れるものだったのね。もう二度とこんなに絡まれたくないわ。


 そう……さっき、何で急に絡まれるようになったか考えていたわよね。


 一体何人の方にに話しかけられたのでしょう? そう思い、「誰に話しかけられたかしら?」と考えながら教室を見渡す。

 あの人、あの人、あの人……あら? 全員かしら? …………あ! 2人絡んでこなかった人がいたわ!あの二人は気が利くわね!

 男女一人ずつ、見覚えのない人がいた。その人達には話しかけられてないということでいいと思う。つまり、それ以外の人はみんな絡んで来たのだ。人数換算すると……30人クラスだから27人?多すぎるわ! これは疲れるはずよ。ふだんは誰とも喋らないのだし……

 そういえばあの二人……何か見覚えがあるような気がするのだけれど……なんだったかしら?


 まあ、多少覚えていなくても許してもらえるでしょう。まだ学園に入ってから半年ほどしか経っていないのだから。


もう半年もたっているのに、今回話しかけられてやっと顔を覚える……

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