75.クランは、森で暴れる
さて、今日したいことは特に残っていないから、さっそく光を呼びに行きましょう。
場所は……とりあえず何回も言っていることだし慣れの森からかしら?
あ、そう。着替えもしないといけないわね。
大変大変。
「あら?」
いつもの服装に戻って、慣れの森に到着したのはいいのだけれど……
3人くらいで組んでいる冒険者の方に話しかけられた。
「おや? どうしたんだ? ここは最近強い魔物が出ているからあぶないぞ?」
「久しぶりに狩りでもしようと思ったのだけれど……」
ここってあまり人がこない所よね?
なのに……人がたくさんいらっしゃるように見受けられるのだけれど……
何かあるのかしら?
分からないわね。
「狩りか? だが今ここは人が多すぎて全然できねえぞ? まずは一の森にでも行ったらどうだ?」
「心配いらないわ。何回も初心者殺しに入っているもの」
「あの初心者殺しの森に、かい? 本当だったらすげえなぁ」
ん? どうやら信じられていないようね。
……ってまたわたくしは! なぜこうも会話をしちゃうのでしょうね。
気を付けないと、本当にあとから後悔するだけなのに……
早く会話を切り上げましょう。王都にある強くて人がいなさそうな森は……
「ここじゃ人も多いし……猛者の森にでも向かってみましょう」
「ちょっ、猛者の森? ふざけてんじゃねえのか?」
何か言っているようだけど、目的はこれからの行動を伝えることで話に区切れを作ることなのだし、無視してもいいわよね?
「いったいどんな魔物がいるのかしらね」
ふふっ、楽しみ♪
「なあ、今猛者の森だって言っていたぞ?」
「冗談だろ? 今この王都にいる冒険者で猛者の森に入れるのって言ったら……しかも一人となると、5人くらいだよな?」
「ええ、それくらいよ」
「俺ら、ぎりぎり入れるかどうかだよな?」
「そうだぞ?」
「あら、あの子の行方が気になるの? じゃああたしたちも行ってみる?」
「……いいのか?」
「いいよ! それに猛者の森に行かれて失敗されたら後味が悪いからね」
「そうよ、心配だし、行ってみましょう?」
「ああ、ありがとな」
「「どういたしまして」」
その、三人の冒険者はそんな話をしていた、らしい。
「ここよね、猛者の森は」
わたくしは、さっそく猛者の森へとやってきた。
初めてだわ。
せっかくだし、まずは狩りでもして遊ぼうかしら? 昨日今日で帰っていないのだし、その代わりとでも思えばいいわよね?
奥に、奥に進んでいく。
あら? ヌクガッドかしら? 推定討伐人数90人だし、わたくしにとってはまだまだね。けれど、土属性なのよね……これは剣でたおそうかしら?
ちゃんと剣の手入れをしていてよかったわ。こういうときに使えることは重要よ。
ヌクガッドに関しては重要な部位とかはないし、どこを狙ってもいのだけど……まずは重要なのは首かしらね。
わたくしとヌクガッドは相対する。
相手が襲い掛かってこようとしたその一瞬の隙を狙って、わたくしは首を切った……切ろうとした……
流石は土属性なだけはあるわね。硬くて全部切ることは出来なかったわ。もっといい剣を用意しなくてはならないようね。気を付けないと。
ただ、首の一部は切ることが出来たので、無効果だったとは言えない。
おかげでヌクガッドの動きは弱まってくれ、簡単に討伐することができたわ。
そして次にやってきたのはタラテニア。
これは推定討伐人数150人の、まあまあな魔物。水属性なのだけれど、一つ厄介な点があって、毒をかけてくるのよね。
もちろん、毒を使う魔物はたくさんいるのだけれど、この毒はちょっと刺激的すぎるわ。
もちろん、盾を使って防げばいいから、わたくしにとって倒すのははちょちょいのちょいよ。
そして、タラテニアを倒し終わったころかしら?
視線を感じて、みたら、先ほどの慣れの森で見かけた冒険者がいるではないの!
「どうしました?」
「勝手に見てしまってすまんな」
「いえ、気にすることはないわ。隠そうとしなかったわたくしが悪いのだもの」
「そうか、ありがとう」
「それで、何か用でもあるのかしら?」
「いや、特にない。おせっかいだったのだが……心配だからと少し後を付けさせてもらっていた。追いついたのはつい先ほどだが」
「心配してくれたの?」
「そうだ」
あら? 何か心配させるようなことをしたかしら? していないわよね?
良く分からないわ。
けれど……
「心配なんていらないわよ。たかが猛者の森だもの。安心して」
「たかが……」
ええ、たかが猛者の森、よね? 実際ゼノイド様よりはどれもはるかに弱いわよ?
「心配させたことは申し訳ないとおもうわ。時間を使わせちゃったことだしね。だけど、もう帰ったらどう?」
早く光を呼び出したいのだけれど。
「ああ、分かった。帰らせてもらう」
「ええ、それがいいと思うわ」
今回は、わたくし、一個も約束をしていないわよね?
大丈夫よね?
……大丈夫だと信じましょう。身が持たないもの。




