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74.クランは仕事を上手に回し始める

 

 次の日。


 今日の仕事先は、貴族の家。それも侯爵家。

 侯爵家でもこんな出来事に巻き込まれているのね。大変そう。


 今回の治癒の対象となっているその令嬢は、まだ学園に通えない年齢らしい。だけど、深刻な病気のために、その年齢になっても学園に入れるかは怪しいと言われている令嬢よ。次の入学式で学園に入学するらしい。

 あと、三か月くらいよ? 本当ギリギリね。


 まあ、きっとわたくしが聖女の力を解放すれば……


「治癒」


 今日も、相手に聞こえない声でつぶやく。

 これに対するいい方法とかも考えたいけれど、難しいわよね。


 さあて、彼女はどれくらいで治るかしらね。

 結果が出ないと報酬が支払われないのよ。……お金だけど。お金なんてわたくしの家にはかなり、あるのだけれど。

 それでも、自分で貯めたかそうでないかは大きいわよね。


「聖女様!! この度は依頼を引き受けていただき誠にありがとうございました……!!」


 あらら……貴族なのだからそういう行為は慎んだ方がいいと思うわよ?

 それだけこの子が愛されているということだから、悪い気はしないのだけれどね。


 軽く頭を下げる。


「実は、一年前から依頼しておいたのですが……うぅ……ようやく治してくださる方が来てくださった……」


 あらら、涙まで出てきているわよ。


 それにしても、一年も手付かずだったの?

 確かに聖女は少ないとは聞くけど、そんなに聖女事情は切羽詰まっているのかしら?


 確か、聖女を作っている神は、光よね?


 ……そういえば、光と今度お話したいと言って、了承ももらっていたのでした。


 今日はまだまだ時間があるみたいだし、光でも呼んでみようかしら?

 ふふ、意外といい案かもしれないわ。


 ただ、その前に、一度、神殿で事情を聴いてみることにしましょう。

 見当違いなことを伝えたら神々に笑われるだけだわ。それは嫌だもの。



 少し歩いて、神殿についた。

 ……うーん、何故か、ちらちら見られているような気がするのよね?

 わたくし、変なことでもしているかしら?

 まったく心当たりがないわ。


『質問があります』


 紙に書いて見せる。


「はい、何でしょうか?」


 受付にいた、巫女さんが答えてくれた。


『今日受けた依頼が、一年も残っていた理由を教えて』


「その依頼が残っていたのは、聖女がほとんどこの国に在住しないうえに、十分な実力を持つ聖女様が今までいらっしゃらなかったからです」


 思わず首をかしげる。

 力が足りない? わたくし、今日はたいして力を使っていないのだけれど。


「現在は我が国には二人の聖女様がおられます。しかし、クレア様を含めますと、世界には10名しか聖女様はおられません」


 そういえば……そんなことをクレマラ様が言っていたかもしれないわ。


「そして、そのメリーナ様も最近までは皇国におりました。ただ、その依頼はメリーナ様でも厳しいかもしれませんね」


 え?


「まあそういうわけで、恥ずかしながら、その依頼は一年も残っていたというわけです」


 実力、ね。

 わたくしの場合、魔力がたくさんあるから、聖女としてもたくさん力を使えているのかしら? そこらへんも光に聞いてみたいわね。


 まあ聖女に関する事情も分かったし、さっさと明日の依頼でも探して、光とおしゃべりすることにしましょう!


『ありがとうございます』

「どういたしまして」


 先に明日の依頼の手続きまでしようかしら?


 うーん、面白いものはないかしら?

 一番下に、一つ、面白いものを見つけたわ。


『依頼内容:治癒(対象一人)

  報酬:金貨40枚』


 見たら分かると思うけれど、おかしいところがあるの。

 この前の治療院は50人ほどで金貨40枚。これは破格の値段らしく、だからこそ不人気でわたくしにそれをしてもらいたがっていたらしいけれど……それでも、一人に対して金貨40枚というのは破格すぎるわよね?


『この依頼には何かわけがあるのですか?』


 そう書いて神官の方に見せる。


「あぁ。その依頼は依頼主が少々特殊でして……」


 いったいどういうことかしら?


「聖女の治癒というのは、基本的に実態の伴う病気、怪我に使わます」


 そうよね。


「ですがその依頼主は、精神的な病、傷だと一般的に言われているものの治癒まで望んでいまして…」


 それは……無理な話じゃないかしら?

 わたくしの疑問にももちろん気付いているようで、神官は言葉を続けた。


「無理なんですよね。しかし、そういうことを望まれているからこそのその報奨なのです。」


 なるほど。


『具体的にはどんな状況に?』

「それは私共も聞いておらず。申し訳ありません」


 別にそんなことを気にする必要はないわ。

 手を振って、気にしないで、と伝える。


「他に何も無いようでしたら……また何か疑問に思うことがありましたら聞いて下さい」


 ぺこり。頭を下げた。


 さて、この依頼、どうしましょうか?

 面白そうなのよね。それに一番下にあったことからも、かなり古いし、不人気な依頼なはずよ。

 わたくしがやる意味、みたいなものはある気がするのだけれど……


『またこの依頼の話だけど、話を聞きに行くのはいいの?』

「聞きに行くのは別に構いません」


 それなら明日くらいに聞きに行ってもいいかもしれないわね。


『明日、都合がよければ聞きに行きたいのだけれど、いいの?』

「では、あちらがたに伝ておきましょう。その家に行ったら、返答が教えられるようにします」

『ありがとう』


 まあそれを実行するにしても、あと一つくらいは依頼を受けておこうかしら?

 とりあえずついでの依頼なので、普通のもの。そして今日のことがあったから、若い人の治癒の依頼を受けることに決めたわ。



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