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73.クランは初仕事を無事成し遂げる


 当日になった。


「あ、クレア様。今日はよろしく~」


 さっそくメリーナ様はクレアという名前を使ってくれた。

 ペコリと頭を下げる。


「メリーナ様、わたくし、声を出したくないのです」


 小声でメリーナ様に言う。


「あぁ、身バレするかもしれないからね。分かった。気を付ける」


 そんなわたくしの今日の格好は、黒のローブに黒のとんがり帽子。それを深くかぶって顔をみえないようにしている。そして、普段のクロッカス色の髪は、銀色の髪へとなっている。

 とんがり帽子なんて奇抜な恰好、をよく、サリアは選んだわね。そこまで見た目も悪くないし……サリアに任せてよかったわ。黒であることは、少し疑問ではあるけど。


「院長様、彼女が今回の依頼を引き受けてくれた聖女様、クレアです」

「そうか、君が引き受けてくれたのか。ありがとう」


 ペコリと頭を下げた。


「彼女は話せません。筆談は可能ですので、聞きたいことがあれば筆談で行なってください」

「分かりました。それでは、案内しますので、私が指示する患者を治してくださいね」


 頷く。


 そして、聖女としての初めての仕事が始まった。


「では、この患者さんをお願いします。病状を言いますと……。分かりましたか?」


 すべての患者において、病状を説明される。

 それに対して、わたくしは、


「治癒」


 そう小さく呟くだけで仕事が終わる。正直この説明いらないのよね……。何の意味があるんでしょう? 過去にこれが意味を持つようになったから、今行われているのでしょうけど……


「君は本当に能力が長けているのだな」


 何人目の患者だろうか? 説明を受けているおかげで思ったより時間がかかっている。

 ありがとうございます、という思いを込めて頭を下げる。


「次へ行こうか」


 頷いた。


「この患者はね……」



「次が最後だ」


 え? もう? 早いわね。

 50人くらいかしら? 診療所なんだから、もっとたくさん患者がいるのかと思っていたわ。


「今日はありがとう。1日で終わるとは思っていなかったから驚いたよ。クレア聖女様ね。覚えておくよ」


 認められたわ。嬉しいものね。これからも頑張りましょう。

 頭を下げて、寮に向かう。



「クレア様」


 寮に入ってすぐの入り口のところで、メリーナ様に話しかけられたわ。


「何かしら?」

「今日の仕事はどうでしたか?」

「普通ね、無事に終わったわよ」

「えー……やっぱり終わったんだ……」

「何かしら? 問題ある?」

「あるよ……」


 え? あるの?

 普通、こういうときは問題があっても「ない」というものよね? 


「それは何かしら?」

「今日だけで終わらせちゃったことだよ! 普通の聖女はあんな人数を1日で終わらせられないよ!」

「そうなの?」

「そうだよ! しかも診療所が頼んでくる患者って治らないと思われていた患者で、そのうちお金持ちの患者だけなんだよ」

「あ、だから少なかったのね」

「そういうこと」

「それでも、何が問題なのか分からないわ」

「端的に言うとね、目立っちゃうんだよ」


 え? そうなの? それは困るわね。


「神殿としてはあの依頼を引き受けてくれるとうれしいから、きっと一番上に置いたんだろうねぇ」


 それは……あり得る話かもしれないわね。


「無事に終わったんだし、いいんじゃないかしら?」

「そうと言われたらそうなるねー。難しいなぁ」


 何がかしら? 

 メリーナ様は自分の世界に入り込んでいる様子だ。


 わたくしは今日の行動を振り返ってみる。


 確かに、しゃべらない 、この方法はうまくいったわ。

 だけど……今、こんなふうに喋るのを楽しむ自分がいる。


 それは真実。だからそれはそれでちゃんと受け入れなくてはならないわ。


 だけど……こんなことだから……学園にはまだ行くことはできなさそう。

 また、無駄な「約束」をして、人をきっと巻き込んでしまう。

 だから、わたくしは学園には行かないほうがいい。そう、行かないほうがいいわ。


 今日はこのことに気づけただけでも満足かしらね。

 聖女の仕事自体はうまくいきそうなのだから、これは続けるとしましょう。一つ気になるのは、メリーナ様と会話をする場面が必ず生まれてしまうこと。

 これはわたくしが早く仕事を覚えることで達成できるでしょう。


 今日の任務は失敗していない。内容は、問題なかった。あとは……あの患者の容体を説明するという無駄な時間を無くすことができれば……。そしたらより良くなるでしょう。


「メリーナ様、わたくし、できるだけ仕事の受注も自分でやりたいのですが……」

「分かった。今から教えるね」


 あら? そんな簡単に教えてもらっていいのかしら? 


「じゃあ神殿に行こう!」


 あ、神殿に行く必要があるのね。

 せっかく寮まで帰ってきたのに、また出かけることになったわ。しかも、学園の人たちにバレるわけにもいかないから、聖女用の服からいったん着替えたのよ? ローブだから大した手間ではないものの、見つからない場所を探すのって意外と大変なのよね。はぁ……


 そして、受注の方法を教わった。これからはもう一人でできる。ついでに聖女の認定証ももらった。これで大丈夫だ。


 明日の分の受注を済ませた。これで、明日も暇にならないはず、よね。


魔女の服装……

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