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68.クランは楽園で、しばし悩みから解放される

 

「ええっと……。見っけ! 影にいるんじゃない?」


 え? 

 ちょっと待って、あなた、さっきまで探していなかったわよね? なんでその一瞬で正解を当てられるのかしら? 


「あれ? 出てこないなぁ。違うのかな?」

「よく考えて。これは何の遊び?」

「遊びって……鬼ごっこ? ……あ!」


 気付いたみたいね。

 エレナはさっそく影を触りにいっている。


「見つかった……」


 中から心が出てきた。


「やったぁ! ねえ、クラン様、教えてくれるんでしょ?」

「はいはい。実はね、心に頼まれたの」

「心? ああこの子ね。心の神のこと?」

「そうよ」

「あれ? 僕そのことはまだ言っていないと思うんだけど……」

「それくらい考えたら分かるわ」


 恐ろしい子ね。


「それで?」

「え? 頼まれて来ただけよ?」

「そうなの?」

「そうよ」


 完全に正解を言ったというわけではないけど、嘘は言っていないし許してもらいましょう。


「だったらなんで頼まれたの?」

「それは……」


 なんて答えればいいのかしら? まさか心をわたくしが呼んで、そのタイミングが被ったから……なんて言えるわけがないわ。

 この子には常識を持っていてほしいし、変なことを覚えても欲しくないもの。


「心、出番よ」

「え?」

「わたくしの代わりに答えてくれないかしら?」

「嫌だよ」

「わたくしも嫌よ」

「何か変な事情でもあるの?」

「「ない(わ)よ」」

「だったらなんで言いたくないの?」

「それは……」

「もしかして……クラン様って何か特別な役割があって、それがバレないように隠している……とか?」


 すごいわね。

 わたくしが聖女だから、このような事態が起こっているのだけど、それがバレないように隠しているというのは間違っているわけではないわ。


「ねえ心」


 小声で聞く。


「何?」

「心に呼ばれるのは聖女じゃなくてもいいの?」

「そうだよ」


 あらら……関係ないみたいだわ。


「ええっと……そんな認識で構わないわ」


 そうね……一つ言うとしたら……


「わたくしが頼まれた原因には他の神々と話したことがあるからここに呼ばれても驚かないということがあったんじゃないかしら?」

「そうなの、心?」

「そんな感じだよ」

「へぇ〜」

「どうやって知り合ったの?」

「それは秘密よ」

「教えてよ、クラン様ぁ」

「嫌よ。これは何があっても教えないわ」


 だって聖女であることがバレてしまうじゃないの。

 この子が本気になったらバレてしまいそうだけど、隠せるうちは隠すべきよね。


 そんな会話や、


「あ、見て! 綺麗な花があるよ!」

「まあ! 綺麗ね。何の花でしょう?」

「それは地上にはないよ」

「そうなんだ〜」

「そうなのね。持ち帰りたいわ……」

「やめなよ。目立つでしょ」

「それもそうね」

「え? クラン様って目立ちたくないの?」


 何故か驚かれてしまった。


「そうよ?」

「私のところまで噂が来るくらいだからそういうの考えていないのかと思っていた」

「失礼ね。ちゃんと考えているわよ。……上手くいっていないけど」

「やっぱり!」


 こんな会話、


「私ね、家族が好きなんだ」

「わたくしもよ」

「お父様もお母様も優しいし、お姉様も優しい」

「わたくしはお兄様が二人いるわ。どちらも優しいわよ」

「私はお姉様とサジーマ……弟が一人いるんだ」

「何歳差なの?」

「四歳だよ!」


 あんな会話も、


「クラン様は女に生まれて良かったと思う?」

「ええ」


 だからこそお兄様を救うことが出来たもの。


「私はね、男に生まれたかったなーって思ったこともあった」

「どうして?」

「だって男の子に生まれてたら、私の場合、何もなしに跡継ぎになれるじゃない」

「跡継ぎになりたいの?」

「うーん……分かんない。だけどなるのも面白そうだって思ったことは何回もあるんだ」

「女でもなれはするわよ?」

「うん……そうなんだけどさ、」


 まあ分かるわ。女で爵位を継ぐのってハードル高そうよね。しかも弟さんがいるならなおさら。


「爵位は弟さんで、宮廷でのしあがるのはどうかしら?」

「宮廷は……大変そう」

「まあそれはそうよね。やりがいはありそうだけどね」

「そうなんだよなぁ……」


 あら? 

 もあいいたずらに遭っていることがばれたら教会での出世コースとかもあるかもしれないわね。

 いったいどんな道に進むのでしょうね? 


 そんな会話も、した。



「あのさークラン、もうすぐ1日だよ?」


 いけない、心の存在を忘れていたわ。


「じゃあ帰ろうかしら?」

「え! クラン様もう帰るの?」

「そうよ。来年……半年後……多分……学園で会いましょうね」

「うん……」


 そんなに悲しんでもらえるなんて……嬉しいわ。


「じゃあまたね」

「うん、」

「じゃあ帰すよ」

「分かったわ」


「またこんど会おうね。お願いも一つ叶えてあげるんだから」

「もちろん忘れていないわよ」

「じゃあ地上でも頑張ってね」

「え? もちろん頑張るわよ」


 そう言ったあと、心は少し悲しげに笑った。


 ……何かあったかしら?


 しばらく経ったけど、特に何も思い出せなかった。


 そもそも、最近は何があったのかしら? 何のために来たのだっけ?


 思い出せない。



 地上に言った後、考えましょう。


 考えることを放棄することを、決めた。


問題です。テーレン!

さっそくクランは一つ、「約束」をしてしまいました。それは何でしょう?

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